↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/62

第三十三話 農民は世界を耕す

「まずは畑を耕すぞ」


 レインは本気で帰りたかった。


「世界が滅びそうなんだけど」


「うむ」


「管理者来てるんだけど」


「うむ」


「741回失敗してるんだけど」


「うむ」


 初代農民は頷く。


「だから耕す」


 意味が分からない。


「説明しろ!」


「説明すると長い」


「しろ!」


◇


 一時間後。


 全員畑仕事をしていた。


 説明はまだだった。


「なんでだよ!」


 レインが叫ぶ。


 フィオは野菜の苗を植えている。


 リゼは日陰で寝ている。


 ゼルは雑草に向かって超長文詠唱を始めた。


「――天地開闢の理より生じし草木の根源たる」


 初代農民。


「抜け」


 ゼル。


「はい」


 手で抜いた。


 一秒だった。


◇


 夕方。


 ようやく説明が始まった。


 初代農民は畑を見ながら話す。


「勇者の道は力を得る」


「魔王の道も力を得る」


「農民の道は違う」


 レインは腕を組む。


「何を得る」


 初代農民は鍬を地面へ刺した。


 ドン。


 その瞬間。


 世界が揺れた。


 ゴゴゴゴゴ……


 地平線の彼方まで。


 畑全体が光る。


 フィオ達が驚く。


「なに!?」


 初代農民は静かに言った。


「世界を育てる力じゃ」


 沈黙。


「……は?」


 今日何回目か分からない。


◇


 初代農民は空を見上げる。


「世界ちゃんを見たじゃろ」


 レインは頷く。


「うん」


「世界そのものだった」


「うん」


「つまり世界は生き物なんじゃ」


 全員が黙る。


「生き物だから育つ」


「生き物だから病気になる」


「生き物だから死ぬ」


 レインの顔色が変わる。


「管理者は」


「病気になった世界を切り捨てている」


 風が吹く。


 畑が揺れる。


「741回」


「世界は救えなかった」


「だから管理者は諦めた」


 初代農民は鍬を握る。


「だがワシは諦めんかった」


 その目は真剣だった。


「畑も同じだからな」


「同じか?」


「同じじゃ」


 初代農民は断言した。


「枯れた畑を捨てるのは簡単じゃ」


「育て直す方が難しい」


「じゃが」


 少し笑う。


「農民はそっちを選ぶ」


 レインは黙った。


 なぜか。


 その言葉は分かった。


◇


 その夜。


 全員で夕食を食べていた。


 野菜スープ。


 パン。


 焼き野菜。


 地味だった。


 だが美味しい。


 その時だった。


 終端の鍵が光る。


 短剣が。


 机の上で。


 勝手に浮いた。


「おい」


 レインが立ち上がる。


 短剣はゆっくり回転する。


 そして。


 パキッ。


 刃が割れた。


「壊れた!?」


 フィオが叫ぶ。


 だが違った。


 中から。


 さらに細い刃が現れる。


 銀色。


 文字が刻まれている。


 誰も読めない。


 ただ一人を除いて。


 ソレアだった。


 顔色が変わる。


『嘘だろ……』


「何て書いてある」


 ソレアは震える声で答えた。


『第二の鍵』


 沈黙。


 全員が固まる。


『終端の鍵は一本じゃない』


『全部で七本ある』


 レイン。


「増えたな」


「増えたね」


 フィオ。


「増えましたね」


 ゼル。


「嫌な予感しかしない」


 全員一致だった。


 その時。


 空が赤く染まる。


 夜なのに。


 昼みたいに。


 赤い。


 初代農民が立ち上がる。


 表情が消えていた。


「来たか」


「何が」


 レインが聞く。


 初代農民は空を見る。


 そして。


 ゆっくり答えた。


「収穫の時間じゃ」


 地平線の向こうで。


 巨大な何かが立ち上がった。


 山より大きい影だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。