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第二十八話 二階の右扉

 走る。


 全力で。


 後ろでは剣戟の音。


 爆発音。


 そして。


 歴代レインたちの叫び声。


「行け!!」


 振り返りたくなる。


 だが。


 振り返ったら足が止まる気がした。


 レインたちは階段を駆け上がる。


 一段。


 二段。


 三段。


 塔の内部なのに。


 階段は異様に長い。


 まるで永遠に続くみたいだった。


 フィオが息を切らす。


「まだ……!?」


 ゼルは半泣きだった。


「二階ってこんな遠いのか!?」


 ソレアが叫ぶ。


『黙って走れ!!』


 そして。


 二階へ到着した。


 そこは奇妙な場所だった。


 広い廊下。


 左右に無数の扉。


 百はある。


 いやもっとだ。


 どの扉も同じ。


 見分けがつかない。


 リゼが顔をしかめる。


「右ってどれ?」


 確かに。


 右側だけでも五十以上ある。


 その時。


 剣が震えた。


 カタカタ。


 刀身に文字が浮かぶ。


 『右から七番目』


 レインは即座に数える。


 一。


 二。


 三。


 七。


 古びた扉。


 他より少しだけ傷が多い。


 レインは迷わず開けた。


 ガチャ。


 部屋の中は真っ暗だった。


「入るぞ」


 全員が飛び込む。


 直後。


 背後の廊下に何かが現れた。


 顔無し騎士。


 第一位階の軍勢。


 階段を登ってきた。


 あと数秒遅ければ終わっていた。


 レインは扉を閉める。


 ドン!!


 外から衝撃。


 ドン!!


 ドン!!


 だが開かない。


 騎士たちは入れないらしい。


 静寂。


 全員がその場に座り込んだ。


「助かった……」


 フィオが胸を撫で下ろす。


 ゼルは床に倒れた。


「もう帰りたい……」


「まだ二階だぞ」


「絶望しかない」


 その時だった。


 部屋の中央に光が灯る。


 白い光。


 そして。


 人影。


 誰かが立っていた。


 若い男。


 黒髪。


 農民みたいな服。


 レインにそっくり。


 だが。


 少し違う。


 目が生き生きしている。


 笑顔だった。


「お」


 男が手を振る。


「来たな七回目」


 レインは固まる。


「また俺か」


「また俺だ」


 男は笑った。


「俺は二回目のレイン」


 全員が沈黙する。


 もう驚くのに疲れていた。


「安心しろ」


 二回目レインは椅子に座る。


「ここは安全地帯だ」


 リゼが怪しそうな顔をする。


「本当に?」


「三十分だけな」


「短っ!?」


 ゼルが叫んだ。


 二回目レインは苦笑する。


「塔はそんなに優しくない」


 そして。


 机の上に何かを置いた。


 それは。


 ボロボロの短剣だった。


 レインが目を見開く。


 見覚えがある。


 昔。


 畑の近くで見つけて。


 弱そうだから捨てた。


 あの。


 へなちょこ武器。


「なんでこれがここに」


 二回目レインは笑顔で答えた。


「それな」


「世界で一番重要な武器だから」


 沈黙。


 レインの顔が引きつる。


「嘘だろ」


「本当だ」


 二回目レインは真顔だった。


「そしてその事実を知った時」


 少しだけ笑う。


「俺は死んだ」


 部屋の空気が凍った。

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