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第二十七話 最後のレイン

塔が震える。


 ゴゴゴゴゴ……


 白い壁が軋み、天井の見えない闇から光が漏れ始めた。


 だが誰も塔を見ていなかった。


 全員の視線は一人に集まっている。


 第一位階のレイン。


 歴代レインの中で最も強く。


 最も古く。


 そして最も疲れた顔をした男。


「最後ってどういう意味だ」


 七回目のレインが聞く。


 第一位階のレインは少し黙った。


 そして。


 静かに答える。


「七回目のお前が失敗したら」


 嫌な予感。


「次はない」


 空気が凍る。


 フィオの耳が震えた。


 リゼも笑わない。


 ゼルですら冗談を言わない。


「待て」


 レインが前へ出る。


「俺は七回目だぞ」


「知ってる」


「なら八回目があるだろ」


 第一位階のレインは笑わなかった。


「もう残ってない」


 沈黙。


「何が」


「魂が」


 レインの心臓が跳ねる。


「転生は無限じゃない」


 第一位階のレインは石壁に触れる。


「死ぬたびに削れる」


「少しずつ」


「少しずつ」


「少しずつ」


 その声には実感があった。


「お前は七回目」


「そして最後の欠片だ」


 ソレアが歯を食いしばる。


『だから六回目までのお前は消えたのか』


 第一位階は頷いた。


「俺たちは残骸だ」


 歴代レインたちを見る。


「記録」


「残響」


「亡霊」


「本物じゃない」


 だが。


 その目はどこか寂しかった。


 農民レインがぽつりと言う。


「畑は元気か?」


 レインが思わず答える。


「まあまあだ」


 農民レインは満足そうに笑った。


「よかった」


 その瞬間。


 レインは気づく。


 この人たちは。


 全部自分だ。


 間違った選択をした自分。


 失敗した自分。


 死んだ自分。


 そして。


 誰も自分を責めていない。


 その時だった。


 塔全体に鐘の音が響く。


 ゴォォォォン


 ゴォォォォン


 ゴォォォォン


 歴代レインたちの顔色が変わる。


「始まった」


「もう来る」


「予想より早い」


 第一位階のレインがレインの肩を掴む。


「聞け」


 その目は真剣だった。


「二階へ行け」


 レインは驚く。


「剣にもそう書いてあった」


「右の扉へ入れ」


「理由は」


「話してる時間がない」


 その時。


 広間の奥。


 巨大な扉が開いた。


 ゆっくり。


 ギギギギ……


 そして。


 中から現れた。


 真っ白な鎧。


 顔のない騎士。


 十体。


 二十体。


 三十体。


 数が増える。


 その全員の胸には。


 『Ⅰ』


 第一位階の刻印。


 フィオが青ざめる。


「なに……あれ」


 第一位階のレインが苦い顔をした。


「失敗作だ」


「昔の転生者たち」


 空気が凍る。


「塔に負けた奴らの成れの果て」


 騎士たちが一斉に剣を抜く。


 ジャキン。


 その音だけで空気が震えた。


 第一位階のレインは背を向ける。


「行け」


 歴代レインたちも前へ出る。


 剣士レイン。


 魔法使いレイン。


 老人レイン。


 農民レイン。


 全員が武器を構えた。


「お前を先へ行かせる」


「今回は辿り着け」


「今度こそ」


 レインは言葉を失う。


 すると農民レインが笑った。


「あとで畑の話聞かせろ」


 その瞬間。


 顔無し騎士の軍勢が突撃した。


 そして第一位階のレインが叫ぶ。


「走れぇぇぇぇ!!」


 レインたちは二階への階段へ向かって駆け出した。

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