↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/62

第二十三話 生存率三・二%

 沈黙。


 誰も声を出さなかった。


 生存率三・二%。


 つまり。


 三十人いれば一人生き残るかどうか。


 そんな数字だった。


 フィオの耳が震える。


「……低すぎる」


 ゼルも青い顔をしていた。


「いや待て。低いとかいうレベルじゃないぞ」


 老人が笑う。


「今回は高い方じゃな」


 全員が振り返る。


「高い?」


「前回は一・一%じゃった」


 空気がさらに重くなった。


 レインは思わず聞く。


「なんでそんな場所に来る」


 老人は少しだけ黙った。


 そして首元の刻印に触れる。


『Ⅺ』


「ここしかないからじゃ」


 その一言で十分だった。


 全員、同じだ。


 獣化を止めたい。


 記憶を取り戻したい。


 世界の真実を知りたい。


 だから来た。


 死ぬと分かっていても。


 第一位階の案内人は静かに扉の前へ立つ。


「ルールは簡単です」


 簡単という顔ではない。


「塔の最上階を目指してください」


「途中離脱は?」


 誰かが聞く。


 案内人は笑顔だった。


「できません」


 嫌な予感しかしない。


「死んだ場合は?」


「死にます」


 当たり前だった。


 だが誰も笑わない。


 その時だった。


 塔の入口近く。


 地面に文字が浮かび上がる。


 白い光。


 古代文字。


 ソレアの顔色が変わった。


『おい』


「なんだ」


『まずい』


 レインは初めて聞く声だった。


 本気で焦っている。


『これは試練じゃない』


「何?」


 ソレアは塔を見る。


『選別だ』


 その言葉に寒気が走る。


 満月。


 鐘の音。


 どこからともなく響く。


 ゴォォォン。


 塔全体が光り始めた。


 扉の奥の闇が揺れる。


 そして。


 第一位階が両手を広げた。


「それでは始めましょう」


 笑顔。


 完璧な笑顔。


「第七百四十二回」


 全員が凍りつく。


「転生者選別試験を」


 レインの目が見開かれる。


 七百四十二回。


 つまり。


 初めてではない。


 何百回も。


 何百年も。


 何千年も。


 繰り返されてきた。


 その時。


 塔の入口から悲鳴が聞こえた。


 誰かが勝手に入ったらしい。


 直後。


 赤い光。


 悲鳴。


 沈黙。


 そして。


 何かが入口から転がってくる。


 首だった。


 全員が固まる。


 さっきまで喋っていた男。


 その首。


 第一位階は表情一つ変えない。


「フライングは失格です」


 淡々と言う。


 まるで試験監督だった。


 フィオがレインの服を掴む。


 震えている。


「……帰ろう」


 小さな声。


 レインも同じことを思った。


 帰りたい。


 普通なら。


 だが。


 ここまで来てしまった。


 塔の奥から、何かが呼んでいる。


 記憶。


 過去。


 忘れている何か。


 その時だった。


 レインの腰の剣が突然震える。


 ソレアではない。


 剣そのものが。


 ガタガタと。


 まるで恐怖しているように。


「……?」


 そして。


 剣の刀身に、一瞬だけ文字が浮かんだ。


 古い文字。


 だが読めた。


 なぜか読めた。


 『逃げろ』


 レインの顔色が変わる。


 ソレアも息を呑んでいた。


『……ありえない』


「何がだ」


 ソレアは震える声で答えた。


『その警告』


『昔のお前が残したものだ』


 満月が、真上に昇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。