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第二十二話 塔へ集う者たち

白い塔は、近くで見ると異様だった。


 巨大。


 それだけではない。


 継ぎ目がない。


 窓もない。


 どこから作ったのかも分からない。


 まるで一本の白い柱を、そのまま天へ突き刺したような建造物だった。


 レインたちは塔の麓へ近づく。


 すると、人影が見えてきた。


 十数人。


 男。


 女。


 老人。


 子供。


 共通しているのは一つだけ。


 全員の首元に刻印がある。


 位階保持者。


 そして。


 全員どこか普通ではなかった。


 最初に目についたのは老人だった。


 見た目は七十代。


 だが目だけが異様に若い。


 いや。


 若いというより。


 疲れ果てている。


 老人はレインを見るなり笑った。


「七回目か」


 レインの足が止まる。


「……分かるのか」


「なんとなくな」


 老人は空を見上げた。


「わしは十一回目だ」


 沈黙。


 フィオが息を呑む。


 ゼルですら固まった。


 十一回。


 常識外れだった。


 老人は肩をすくめる。


「驚くな若いの」


「……人間なのか」


 老人は苦笑した。


「半分くらいは」


 次に話しかけてきたのは小柄な少年だった。


 十歳くらい。


 だが目が異常に冷静。


「初参加?」


 レインが眉をひそめる。


「参加?」


「塔」


 少年は当然のように言った。


「俺三回目」


「三回目?」


「塔に入るの」


 全員が固まる。


 ソレアが小さく呟いた。


『まさか……』


 少年は笑った。


「毎回死にかけるよ」


 さらに。


 腕が鱗に覆われた男。


 片目が完全に獣になった女。


 体の半分が結晶化した青年。


 皆どこか壊れていた。


 転生。


 位階。


 その果て。


 レインは初めて知る。


 自分だけではなかった。


 同じように。


 世界から零れ落ちた者たちが。


 ここへ集められている。


 その時だった。


 塔の前にいた全員が静かになった。


 誰かが来た。


 足音。


 ゆっくり。


 一定の速度。


 白い法衣。


 銀髪。


 そして。


 首元に刻まれた数字。


『Ⅰ』


 空気が凍る。


 第一位階。


 レインの背筋を冷たい汗が流れた。


 今まで見た誰とも違う。


 強い。


 そんな言葉では足りない。


 そこに立っているだけで空気が変わる。


 男とも女ともつかない中性的な人物は、静かに全員を見渡した。


 そして。


 小さく微笑んだ。


「ようこそ」


 優しい声。


 だが誰も安心しない。


「塔へ」


 第一位階は続けた。


「今夜、門が開く」


 満月が雲の間から顔を出す。


 白い塔が淡く輝き始める。


 地面が震えた。


 巨人が動く。


 門番のように塔の前へ立つ。


 そして。


 塔の表面に。


 ゆっくりと巨大な扉が現れた。


 誰も喋らない。


 第一位階だけが笑っている。


「生きて帰れたら」


 その目が細くなる。


「知りたいことが分かるかもしれないよ」


 レインは拳を握った。


 転生。


 記憶。


 獣化。


 魂喰い。


 失われた過去。


 全ての答えが。


 あの塔の中にある。


 扉が完全に開いた。


 中は真っ暗だった。


 まるで。


 何か巨大な生き物の口のように。


 そして第一位階は、最後にこう言った。


「では」


「今回の生存率を発表します」


 全員が顔を上げる。


 第一位階は笑顔のまま告げた。


「予測生存率――三・二%です」

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