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じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


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空の市場





 カルド砦中央広場。


 そこは完全に祭り状態になっていた。


 空王国大型輸送艦グランドカーゴの到着。


 その影響は凄まじい。


 普段は山岳交易中心の砦だが、今日は別世界みたいだった。


 香辛料。


 空果実。


 魔導織布。


 浮遊鉱石。


 鳥人族特有の軽量装飾具。


 見た事もない品が並んでいる。


「すっげぇぇぇ!!」


 タマが子供みたいに目を輝かせた。


「これ全部空王国のか!?」


「そうみたいやねぇ」


 ミツコも楽しそうだった。


 市場の空気は嫌いじゃない。


 人の活気。


 料理の匂い。


 賑やかな声。


 それだけで少し元気になる。


 一方。


 ミーコは既に疲れていた。


「待って」


「人多すぎ」


「アンタ達はしゃぎすぎ」


 原因は明確だった。


 タマ。


 フィルニア。


 この二人。


 完全に祭りテンションである。


「あっち行くぞ!!」


 フィルニアが駆け出そうとした瞬間。


 グランヴェルが首根っこを掴んだ。


「お前は少し落ち着け」


「ぐえっ」


 その横で。


 タマまで前へ身を乗り出している。


「見ろフィルニア!!」


 タマが指差した先。


 そこには巨大串焼き屋台。


 しかも。


 鳥人族向けサイズなのか異常にデカい。


「でっっっっか!!」


「肉だ!!」


 完全に同じ反応だった。


 ミーコが頭を抱える。


「なんで真っ先に食べ物なのよ……」


「市場と言えば食い歩きだろ」


「分かる」


「フィルニアまで乗らないで!!」


 ユキが苦笑している。


 その横で。


 セレスが静かに呟いた。


「……平和ですね」


 レオネも少し肩の力を抜いていた。


「ええ」


 空間異常。


 侵食。


 各国の不穏。


 問題は山積みだ。


 だが今だけは。


 こういう時間も悪くない。


 その時だった。


「おっちゃん!! これ何肉!?」


 タマが屋台主へ聞く。


 鳥人族の店主が胸を張った。


「高山岩羊の炭火焼きだ!!」


「岩羊!?」


「うまそう!!」


 フィルニアが即反応する。


 店主は豪快に笑った。


「空王国名物だぞ!!」


「食う!!」


「俺も!!」


 完全一致だった。


 数分後。


「うっっっっっま!!」


「なんだこれぇぇぇ!!」


 二人揃って叫んでいた。


 肉汁。


 香辛料。


 炭火焼き。


 かなり美味いらしい。


 フィルニアが串肉へ齧り付きながら言う。


「これ帝国でも売れそうだぞ!!」


「分かる!!」


 ミーコが遠い目をする。


「アンタ達ほんと似てきたわね……」


 その時。


 トシオが別屋台で足を止めていた。


「ん?」


 視線の先。


 並んでいたのは漁具だった。


 釣り針。


 網。


 浮き。


 しかも海霊族式らしい。


 独特な形状をしている。


 店主は海霊族の男だった。


「お、兄さん見る目あるな」


「海の道具か」


「おう。ネレイディア連邦製だ」


 トシオの目が少し変わる。


 ネレイディア。


 海霊族国家。


 最近、妙に縁を感じる名前だった。


 店主がニヤリと笑う。


「兄さん漁師か?」


「まぁそんなもんだ」


「分かるぜ。手見りゃな」


 ゴツい。


 傷だらけ。


 完全に現場の手。


 店主が笑う。


「兄さんならこれだな」


 差し出されたのは一本の銛。


 蒼い紋様入り。


 普通じゃない。


 トシオが握った瞬間――。


 ビリッ。


 微かな蒼雷が走った。


 周囲が止まる。


「……お?」


 店主が目を見開く。


 銛の紋様が淡く発光していた。


 トシオも眉をひそめる。


「なんだこれ」


「いや待て兄さん」


 店主が急に真顔になる。


「それ海霊族でも反応する奴ほぼ居ねぇぞ?」


「知らん」


「知らんで済むか!?」


 タマ達まで集まってきた。


「なんだなんだ?」


「じーちゃんまたなんかやった?」


「俺何もしてねぇ」


 だが。


 銛の光は消えない。


 店主が困惑していた。


「海神系統適性……?」


「なんだそれ」


「いや俺も伝承でしか知らねぇよ!?」


 フィルニアがニヤニヤしている。


「やっぱトシオ普通じゃねぇな」


「今更だろ」


 ミーコが真顔で言う。


 全員頷いた。


 もう慣れてきている。


 すると。


 店主が銛を差し出した。


「兄さん持ってけ」


「ん?」


「反応した奴が使うべきだ」


「金ねぇぞ?」


「いらん」


 店主が豪快に笑った。


「むしろ見れただけ得したわ!!」


 トシオは少し困った顔をする。


 すると。


 ミツコが買い物籠から干物を取り出した。


「代わりにこれどうかねぇ」


「ん?」


「うちの特製やよ」


 店主が一口食べる。


 数秒停止。


「……うっっっま」


 目が見開かれた。


「なんだこれ!?」


「ばーちゃん飯だ」


 タマが誇らしげだった。


「反則級だぞ」


「売れる!! 絶対売れる!!」


 店主が叫ぶ。


 ミツコは困ったように笑っていた。


 その時だった。


 市場奥から歓声が上がる。


「始まるぞー!!」


「飛行演舞だ!!」


 空王国名物らしい。


 人々が空を見上げる。


 すると。


 上空から複数の鳥人族が飛び出した。


 風を纏い。


 空を旋回する。


「うおぉぉぉ!!」


 タマが叫ぶ。


「すげぇ!!」


 フィルニアまで興奮していた。


「生身で飛んでるぞ!!」


 鳥人族達は空中で槍を回し、風魔法を重ねながら演舞を続ける。


 美しい。


 そして速い。


 観客達から拍手が起きる。


 ユキが目を輝かせていた。


「綺麗……」


 ミーコも見入っている。


 そんな中。


 一人だけ違う反応をしていた。


 トシオ。


「……」


 空を見ながら、僅かに目を細めている。


 ミツコが気付いた。


「あなた?」


「いや」


 トシオが低く呟く。


「風の流れがおかしい」


 その瞬間だった。


 上空。


 飛行演舞中の一人が急にバランスを崩した。


「きゃっ――!?」


 悲鳴。


 空気が変わる。


 鳥人族の少女が墜落しかけていた。

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