空飛ぶ城…
# 第一部『レヴァナスタシア』
ゴォォォォォ──!!
空気が震える。
巨大要塞ヴァルグレイド。
その黒い巨影が、
草原の空を覆っていた。
近づくほど分かる。
大きい。
あまりにも大きい。
まるで山そのものが、
空を飛んでいるみたいだった。
側面には、
無数の砲門。
腹部には、
巨大な魔導結晶。
そして城壁には、
レイシス王国の紋章。
獅子と波を重ねた王家の証。
ミーコ――
アクアリア=ヴァル=レイシスの顔が曇る。
「……第一王子派」
カリヴァが低く呟いた。
「間違いないな」
竜人兵たちにも緊張が走る。
空中要塞は、
本来なら国家戦争級兵器。
それがこんな辺境まで来る時点で、
異常だった。
「ミーコを探しとるんか?」
トシオが聞く。
ミーコは小さく頷いた。
「私が生きていると知られれば、
争いはもっと酷くなります」
その声には、
王女としての責任が滲んでいた。
だが。
「ふぅん」
トシオは空を見上げる。
「でかい船じゃのぉ」
「船……?」
カリヴァが固まる。
「空を飛んでおるだけで、
あれは船じゃろ」
タマが吹き出した。
「じーちゃん、
その発想好き」
だが次の瞬間。
ヴァルグレイドの側面が、
赤く光る。
カリヴァの顔色が変わった。
「全員伏せろ!!」
轟音。
空が裂けた。
極太の光線が、
草原を薙ぎ払う。
ドォォォォォン!!
爆炎。
地面が抉れる。
草原が吹き飛ぶ。
タマがミーコを庇う。
ユキが悲鳴を上げた。
ミツコの髪が爆風に揺れる。
そして。
その中心で。
トシオだけが、
動かなかった。
黒煙の中。
仁王立ち。
片腕を前へ出した姿勢のまま。
カリヴァの瞳が揺れる。
「……防いだ?」
トシオの足元。
大地が深く抉れている。
だが。
それだけだった。
トシオは、
少し痺れた腕をぶらぶら振る。
「熱いのぉ」
沈黙。
竜人兵たちの顔から、
完全に血の気が引いた。
ヴァルグレイドですら、
止まったように見える。
タマが口を開ける。
「……じーちゃん今、
王国砲止めた?」
「なんか飛んできた」
「なんかじゃない!!」
ユキは震えながら、
ミツコへしがみつく。
ミツコは困ったように笑った。
「トシオさん、
怪我しとらん?」
「腹減った」
「後でおにぎり作るねぇ」
その瞬間。
カリヴァ=ドラグニルは、
確信していた。
この二人は、
ただの人族ではない。
神話そのものだと。
その時だった。
ヴァルグレイド上空。
巨大な魔法陣が展開される。
空が赤く染まる。
カリヴァが叫んだ。
「まずい!!
第二射が来るぞ!!」
だが。
トシオは空を見上げたまま、
ぼそりと呟く。
「……あの船、
落としたら駄目か?」




