表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/139

『霧鐘の港』

『じじばばにゃんこと異世界奇譚』


第一部『レヴァナスタシア』






朝。


灯台の窓は、

完全に白く染まっていた。


霧だった。


もう。


海も。


空も。


航路灯すら見えない。


灯台そのものが、

白霧へ沈んでいるみたいだった。


カヤが、

上層観測窓を睨む。


「ここまで来たか……」


灯台守も、

表情が重い。


「早過ぎる」


ユキは、

窓から離れられなかった。


昨夜見た街。


あれが、

まだ外に居る。


そんな感覚が消えない。


ミツコが、

静かに肩へ手を置いた。


「大丈夫」


だが。


その言葉の直後。


鐘が鳴った。


ゴォォォォォン――――


灯台全体が震える。


近い。


今までで一番近い。


フィルニアが、

即座に立ち上がった。


「来るぞ」



白霧の中。


街が現れた。


完全な姿で。


北方港湾都市イルゼア。


巨大港。


氷海船着場。


石造街路。


観測塔。


全部、

霧の向こうに存在している。


しかも。


近い。


もう灯台のすぐ下だった。


ユキが、

息を呑む。


「ほんとに……街……」


だが。


おかしい。


静か過ぎる。


人影はある。


港夫。


船員。


子供。


歩いている。


だが。


音が無い。


足音も。


声も。


全部消えている。


鐘だけが響く。


ゴォォォォォン――――


その瞬間。


街中の人影が、

一斉にこちらを向いた。


ユキが、

小さく震える。


ぼやけている。


顔が曖昧。


氷と霧で出来た人間みたいだった。


タマが、

低く呟く。


「やべぇなこれ……」



灯台守が、

静かに口を開いた。


「イルゼアは、

百二十年前に消えた」


「だが、

霧は消した物を返す事がある」


フィルニアが、

眉をひそめる。


「返してねぇだろこれ」


その通りだった。


街はある。


だが。


生きている感じがしない。


“残ってしまった”

みたいな空気だった。


その時。


霧街側から、

港歌が聞こえ始める。


低い。


ゆっくり。


沈むような旋律。


ユキが、

耳を押さえた。


「頭へ入ってくる……」


ミーコの瞳が、

細くなる。


「歌じゃない」


「呼んでる」



その瞬間。


灯台外壁へ、

何かがぶつかった。


ドン!!


全員振り向く。


窓の外。


そこに。


人が張り付いていた。


氷を纏った船員。


顔が崩れている。


だが。


笑っていた。


ユキが、

息を呑む。


次の瞬間。


外壁全面へ、

大量の手が張り付く。


ドン!!


ドン!!


ドン!!


霧街の人影達だった。


無数。


灯台を見上げている。


そして。


全員同時に、

口を開く。


声は無い。


だが。


確かに分かった。


“開けろ”


フィルニアが、

拳を鳴らす。


「うわ気持ち悪っ」


タマも、

剣へ手を掛けた。


「来るぞ」



鐘。


爆音。


ゴォォォォォォォン――――!!!


その瞬間。


灯台下層の扉が吹き飛んだ。


氷霧が雪崩れ込む。


同時に。


霧人達が侵入する。


動きは遅い。


だが。


異様だった。


足音が無い。


氷を纏っている。


しかも。


斬っても、

崩れない。


フィルニアが、

真正面から踏み込んだ。


爆炎噴出。


竜拳炸裂。


ド ォ ォ ォ ン !!!!


霧人が、

氷壁ごと吹き飛ぶ。


だが。


崩れた霧が、

また人型へ戻っていく。


タマが、

舌打ちする。


「キリねぇ!!」


フィルニアが、

真顔でタマを見つめた。


「……」


タマが、

少し視線を逸らす。


「なんかゴメン」


その時。


灯台全体が揺れた。


ゴゴゴ……


外。


白霧の奥で、

巨大な何かが動いていた。


ユキが、

窓を見る。


そして。


息を止める。


港中央。


霧街の中心。


そこに。


巨大な鐘楼が立っていた。


今まで無かった。


霧の中から、

ゆっくり現れている。


巨大。


異様。


氷と霧で出来た鐘楼。


その内部で、

何かが脈打っていた。


ミーコが、

低く呟く。


「……あれが核」



次の瞬間。


鐘楼が鳴る。


ゴォォォォォォォォン――――!!!!


音圧。


衝撃。


灯台硝子が砕ける。


ユキが、

頭を押さえた。


「痛っ……!」


その瞬間。


霧人達が、

一斉に動き出す。


速い。


今までと違う。


爆発的加速。


フィルニアが、

即座に迎撃した。


炎尾旋回。


空中蹴撃。


ド ガ ァ ァ ァ ン !!!!


霧人が吹き飛ぶ。


だが。


次々来る。


階段。


壁。


天井。


全部から現れる。


タマが、

高速で斬り払う。


銀閃連撃。


ギ ギ ギ ギ ィ ン !!


氷霧切断。


だが。


霧そのものが、

また形を作っていく。


「うおマジかよ!!」


その時。


灯台外壁が、

巨大な音を立てた。


バ ゴ ォ ォ ォ ォ ン !!!!


白い巨腕が、

外壁を突き破る。


ユキが、

目を見開く。


「なに……!?」


霧巨人だった。


人型。


だが。


灯台よりデカい。


顔が無い。


全身が、

氷霧で出来ている。


そして。


鐘楼から、

無数の霧糸が伸びていた。


操られている。


ミーコが、

即座に叫ぶ。


「鐘楼を壊す!」


「じゃねぇと終わらない!」



次の瞬間。


トシオが動いた。


踏み込み。


灯台床が沈む。


轟音。


超重量級の肉体が、

真正面から外壁を突き破った。


白霧へ飛び出す。


霧巨人の腕が振り下ろされる。


だが。


遅い。


トシオの拳が、

真正面から叩き込まれた。


ゴ バ ァ ァ ァ ァ ン !!!!!!


霧腕粉砕。


白霧爆散。


衝撃で、

港全体が揺れる。


フィルニアが、

笑う。


「派手だなァ!!」


赤光噴出。


竜力解放。


次の瞬間。


フィルニアも、

白霧へ飛び出した。


空中加速。


炎尾。


霧巨人の頭部へ、

竜拳炸裂。


ド ォ ォ ォ ォ ン !!!!


氷霧崩壊。


だが。


再生。


鐘楼が鳴る度、

霧が戻る。


ミーコが、

鐘楼を睨む。


「……邪魔」


青白い光陣展開。


空間震動。


次の瞬間。


蒼光の爪が、

霧街を裂いた。


ギャァァァァァン!!!!


街路崩壊。


霧人消滅。


だが。


鐘楼だけが残る。


中心で、

脈打っている。


ユキが、

その光景を見ていた。


怖い。


でも。


分かった。


あれは、

“死んだ街の残骸”だ。


帰れなかった人達。


消えた港。


全部が、

鐘へ縛られている。


その時。


鐘楼最上部で、

巨大な目が開いた。


白い。


空洞の目。


霧そのものが、

こちらを見ていた。


鐘が鳴る。


今までで最大。


ゴォォォォォォォォォン――――!!!!


世界が揺れた。


同時に。


霧街全体が、

灯台へ押し寄せる。


無数の霧人。


巨腕。


氷波。


全部まとめて来た。


タマが、

顔を引き攣らせる。


「うおい待て待て待て!!」


トシオが、

笑った。


豪快に。


「面白ぇ!!」


次の瞬間。


超重量級の拳が、

白霧そのものへ叩き込まれた。


ド ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ン !!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ