蒼天の世界
第1部
## 第一部『レヴァナスタシア』
──暖かい。
最初に感じたのは、
陽の光だった。
まぶたの裏を、
優しい熱が照らしている。
雪の寒さじゃない。
囲炉裏の火でもない。
もっと広く、
果てしない温もり。
トシオはゆっくり目を開けた。
青空。
どこまでも、
どこまでも続く蒼。
「……なんじゃここは」
起き上がった瞬間。
バキッ。
足元の岩が砕けた。
「……は?」
自分の声が若い。
いや、
それだけじゃない。
腕。
肩。
胸。
着物が張るほど、
筋肉が盛り上がっている。
トシオは自分の手を見た。
シワがない。
白髪もない。
日に焼けた、
若い頃の腕だった。
「……夢か?」
その時。
「トシオさん」
聞き慣れた声。
振り向いた瞬間、
トシオの目が止まる。
そこにいたのは、
黒髪の少女だった。
透き通るような肌。
柔らかな目元。
見覚えのある笑顔。
「……ミツコ?」
少女は困ったように笑う。
「みたいやねぇ」
二人はしばらく、
何も言えなかった。
目の前の相手が、
ちゃんと“あの人”だと分かるのに、
姿だけが違う。
トシオは頭を掻く。
「若返っとる……」
「びっくりやねぇ」
ミツコは、
まるで他人事みたいに笑った。
その時だった。
草むらが揺れる。
白銀の影が飛び出した。
「ミツコおおおぉぉ!!」
ドンッ!!
勢いよく胸へ飛び込んできたのは、
猫耳の少女だった。
水色がかった銀髪。
ふわふわの尻尾。
蒼と金のオッドアイ。
涙でぐしゃぐしゃの顔。
「あぁ……よかった……!」
その後ろから、
さらに二人。
「ばーちゃぁぁぁん!!」
銀毛の少年獣人。
ぴょこんと跳ねた二本のアホ毛。
元気そうな顔をしているのに、
今は涙でいっぱいだった。
そして、
その隣には銀白の少女。
長いふわふわの髪。
儚げな瞳。
今にも泣き崩れそうに、
ミツコを見つめている。
「おばあちゃん……っ」
ミツコは目を丸くした。
「……ミーコ?」
少女は何度も頷く。
「タマもユキも……」
トシオは、
しばらく三人を見つめた後、
ふっと笑った。
「でかくなったのぉ」
「そこなんですか!?」
タマが涙目で叫ぶ。
その声に、
ミツコが吹き出した。
「ほんとタマやねぇ」
そして、
三人まとめて抱き締める。
「大丈夫よぉ」
その瞬間。
世界が震えた。
ゴォォォォ──!!
遠く。
山脈の向こう。
巨大な黒煙が空へ昇る。
風が変わる。
そして。
空に浮かぶ、
ありえないほど巨大な影。
竜。
いや。
“城”。
無数の砲門を備えた、
空飛ぶ巨大要塞。
トシオは目を細めた。
「……なんじゃありゃ」
ミーコの顔から、
血の気が引く。
「……空中要塞ヴァルグレイド」
震える声。
「レイシス王国軍です」
静寂。
風が草原を揺らす。
そしてミーコは、
泣きそうな顔のまま呟いた。
「……戦争が始まってしまう




