表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/139

別れと始まりの…

その夜。


吹雪だった。


窓を叩く風が、

まるで誰かの叫び声みたいに響いている。


ミツコは布団の中で、

静かに呼吸していた。


浅い。


弱い。


トシオは、

その手を握っている。


もう何も言わなかった。


言葉にした瞬間、

終わってしまいそうだったから。


囲炉裏の前では、

タマとユキが寄り添っている。


そしてミーコだけが、

外を見ていた。


蒼い瞳。


その奥に映るのは、

雪山ではない。


“門”。


異世界へ続く、

巨大な光の裂け目。


ついに境界が崩れ始めていた。


ミーコは理解していた。


この家が、

この世界との“楔”だった。


そして。


ミツコの命こそが、

門を安定させていたのだと。


「……嫌」


小さな声。


王女ではない。


ただの幼い少女の声だった。


「嫌です……」


その時。


ミツコの瞼が、

ゆっくり開く。


「ミーコ……?」


「……っ」


ミーコは慌てて駆け寄る。


ミツコは、

弱々しく笑った。


「泣かんでよぉ」


その手が、

ミーコの頭を撫でる。


優しい。


あまりにも優しい。


ミーコは、

初めて知ってしまった。


“母”の温もりを。


「……おばあちゃん」


ぽろりと涙が落ちる。


ミツコは、

少し驚いたように目を丸くした。


そして、

嬉しそうに笑った。


「うん」


その瞬間。


世界が揺れた。


ゴォォォォ──!!


家の外。


山の奥で、

巨大な蒼い光が空を裂く。


門が開く。


吹雪が逆巻く。


家が軋む。


タマが叫ぶ。


ユキが震える。


ミーコのオッドアイが、

強く輝き始める。


そして。


ミツコは最後に、

トシオを見る。


「……ありがとうねぇ」


トシオは、

何も言えなかった。



ただ、

強く手を握る。


そして。


ミツコの手から、

力が抜けた。


静寂。


その瞬間。


門が完全に開いた。


蒼い光が、

家ごと飲み込む。


タマの身体が光る。


ユキの毛並みが舞う。


ミーコの姿が、

人の形へ変わり始める。


そしてトシオは、

ミツコを抱き締めたまま、

光の中へ落ちていく。


──暖かい。


最後に、

そう思った。


気づけば。


そこには、

青空が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ