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じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


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46/139

『閉じる世界』


静寂『じじばばにゃんこと異世界奇譚』


第一部『レヴァナスタシア』





静寂だった。


星見の王が座る玉座の間は、

音そのものが薄い。


呼吸。


衣擦れ。


灯火の揺れ。


全部が遠い。


まるで。


空間そのものが、

現実から半歩ズレているみたいだった。


巨大な観測窓の向こうには、

星海が広がっている。


無数の世界。


無数の光。


その中央で。


王だけが、

静かにこちらを見ていた。


銀色の瞳。


底が見えない。


フィルニアが、

露骨に顔をしかめる。


「圧すげぇな……」


タマも、

自然と肩へ力が入っていた。


この男。


強いとか、

そういう感覚じゃない。


もっと別。


“世界側の存在”に近い。


ミーコが、

静かに聞く。


「閉じるって、

どういう意味?」


星見の王は、

しばらく答えなかった。


やがて。


観測窓の向こうを見ながら、

低い声で言う。


「星には寿命がある」


「世界も同じだ」


その瞬間。


巨大な星図が、

空中へ浮かび上がる。


無数の光点。


だが。


いくつかは、

既に黒ずんでいた。


王が、

指先で一つを示す。


すると。


その世界が映像化される。


海。


山。


街。


笑っている人々。


普通の世界だった。


だが。


空が揺らぐ。


景色がぼやける。


人々が、

突然立ち止まる。


次の瞬間。


街そのものが、

砂みたいに崩れ始めた。


誰も叫ばない。


崩れている事すら、

理解出来ていない。


そして。


世界が消えた。


音も無く。


フィルニアが、

珍しく笑わなかった。


「……なんだよ今の」


「観測終了だ」


王の声は静かだった。


「侵食は、

破壊だ」


「だが、

観測外領域は違う」


「存在定義そのものを消す」


ユキが、

小さく震える。


「存在……定義?」


セレスが、

静かに補足する。


「例えば、

“人”という概念が消えれば」


「人族そのものが、

最初から存在しなかった事になります」


タマが、

顔を引きつらせる。


「いや、

意味わかんねぇ……」


「理解出来なくていい」


王が言った。


「本来、

世界内生命が触れてはいけない領域だ」


その時。


ミーコが、

銀眼を見つめる。


「あなた、

見えてるの?」


王は頷いた。


「常に」


その瞬間。


彼の銀眼へ、

無数の星が映り込む。


そして。


一瞬だけ。


ミーコは見てしまった。


星海の外側。


巨大な暗闇。


そこに。


無数の銀眼が浮かんでいる。


ぞわりと、

全身へ寒気が走る。


ミーコの猫耳が、

ぴたりと伏せられた。


王が、

静かに目を閉じる。


映像が消えた。


「見すぎるな」


「精神が持たん」


ミツコが、

静かに聞く。


「王さんは、

ずっと見続けとるん?」


王は、

少しだけ笑った。


疲れた笑みだった。


「もう千年以上になる」


全員が黙る。


千年。


どれだけの終わりを、

見続けてきたのか。


その時。


トシオが、

ぽつりと言った。


「休めんのか」


セレスが、

わずかに目を伏せる。


王は、

静かに窓の外を見る。


「休めば、

観測が止まる」


「観測が止まれば、

アストラも終わる」


その声には。


諦めが混ざっていた。



玉座の間を出た後。


セレスは、

塔上層へ案内した。


そこは、

観測区画だった。


巨大な水晶球。


浮遊する星図。


無数の記録端末。


星晶族達が、

静かに作業している。


誰も大声を出さない。


緊張が、

空気へ染み付いていた。


ユキが、

小さく聞く。


「みんな、

寝てないの?」


セレスは、

少し困ったように笑う。


「最近は、

ほとんど」


「観測不能領域の拡大が、

急激なんです」


その時。


一人の観測士が、

慌てて駆け寄って来る。


「第一観測官!」


「第七層星域、

反応減衰しています!」


セレスの表情が変わる。


即座に、

巨大水晶球へ手を触れる。


星図が展開。


その一角だけ、

光が不安定だった。


点滅している。


消えそうだ。


ミーコが、

静かに呟く。


「近い……」


セレスは、

唇を噛む。


「もう中心域まで来てる……」


タマが、

水晶球を見ながら聞く。


「助けられねぇの?」


沈黙。


観測士達の手が止まる。


やがて。


セレスが、

静かに首を振った。


「行けません」


「観測外領域へ入った瞬間、

存在情報が削られます」


「帰還例はありません」


フィルニアが、

腕を組む。


「じゃあ見てるだけか」


責めた声ではない。


だが。


セレスは、

苦しそうだった。


「……はい」


その時だった。


水晶球の中で。


一つの光点が、

ふっと消える。


静寂。


誰も喋らない。


観測士達が、

黙って頭を下げた。


まるで。


葬式だった。


ユキが、

ミツコの袖を掴く。


「……嫌だ」


ミツコは、

静かに頭を撫でた。


「怖いねぇ」


その時。


トシオが、

窓の外を見ていた。


星海。


その奥。


何かが動いている。


巨大だった。


輪郭すら分からない。


だが。


近付いている。


低く言う。


「来とるな」


ミーコも、

すぐ気付いた。


「……速い」


その瞬間。


塔全体へ、

警鐘が鳴り響く。


ガァァァン!!


今までの鐘と違う。


鋭い。


緊急音だった。


観測士達が、

一斉に動き出す。


セレスが、

即座に指示を飛ばす。


「全観測層封鎖!」


「外周結界起動!」


空気が変わる。


フィルニアが、

逆に笑った。


「なんか始まるな」


「バトル禁止」


タマが即座に突っ込む。


「誰に言ってんだよ」


その時。


塔の外側へ、

巨大な影が現れた。


星海より黒い。


空間が歪む。


そして。


無数の銀眼が、

ゆっくり開く。


都市全体が、

静まり返った。


誰も叫ばない。


叫べなかった。


本能で理解した。


“見られた”。


その瞬間。


街の灯火が、

一斉に消える。


星都アストラから、

光が消えた。


完全な暗闇。


その中で。


銀眼だけが、

空に浮かんでいる。


ユキが、

小さく震える。


「……あれ、

何」


星見の王が、

いつの間にか後ろへ立っていた。


静かに空を見上げながら、

低く呟く。


「観測者だ」


そして。


続ける。


「世界の終わりを、

確認しに来た」だった。


星見の王が座る玉座の間は、

音そのものが薄い。


呼吸。


衣擦れ。


灯火の揺れ。


全部が遠い。


まるで。


空間そのものが、

現実から半歩ズレているみたいだった。


巨大な観測窓の向こうには、

星海が広がっている。


無数の世界。


無数の光。


その中央で。


王だけが、

静かにこちらを見ていた。


銀色の瞳。


底が見えない。


フィルニアが、

露骨に顔をしかめる。


「圧すげぇな……」


タマも、

自然と肩へ力が入っていた。


この男。


強いとか、

そういう感覚じゃない。


もっと別。


“世界側の存在”に近い。


ミーコが、

静かに聞く。


「閉じるって、

どういう意味?」


星見の王は、

しばらく答えなかった。


やがて。


観測窓の向こうを見ながら、

低い声で言う。


「星には寿命がある」


「世界も同じだ」


その瞬間。


巨大な星図が、

空中へ浮かび上がる。


無数の光点。


だが。


いくつかは、

既に黒ずんでいた。


王が、

指先で一つを示す。


すると。


その世界が映像化される。


海。


山。


街。


笑っている人々。


普通の世界だった。


だが。


空が揺らぐ。


景色がぼやける。


人々が、

突然立ち止まる。


次の瞬間。


街そのものが、

砂みたいに崩れ始めた。


誰も叫ばない。


崩れている事すら、

理解出来ていない。


そして。


世界が消えた。


音も無く。


フィルニアが、

珍しく笑わなかった。


「……なんだよ今の」


「観測終了だ」


王の声は静かだった。


「侵食は、

破壊だ」


「だが、

観測外領域は違う」


「存在定義そのものを消す」


ユキが、

小さく震える。


「存在……定義?」


セレスが、

静かに補足する。


「例えば、

“人”という概念が消えれば」


「人族そのものが、

最初から存在しなかった事になります」


タマが、

顔を引きつらせる。


「いや、

意味わかんねぇ……」


「理解出来なくていい」


王が言った。


「本来、

世界内生命が触れてはいけない領域だ」


その時。


ミーコが、

銀眼を見つめる。


「あなた、

見えてるの?」


王は頷いた。


「常に」


その瞬間。


彼の銀眼へ、

無数の星が映り込む。


そして。


一瞬だけ。


ミーコは見てしまった。


星海の外側。


巨大な暗闇。


そこに。


無数の銀眼が浮かんでいる。


ぞわりと、

全身へ寒気が走る。


ミーコの猫耳が、

ぴたりと伏せられた。


王が、

静かに目を閉じる。


映像が消えた。


「見すぎるな」


「精神が持たん」


ミツコが、

静かに聞く。


「王さんは、

ずっと見続けとるん?」


王は、

少しだけ笑った。


疲れた笑みだった。


「もう千年以上になる」


全員が黙る。


千年。


どれだけの終わりを、

見続けてきたのか。


その時。


トシオが、

ぽつりと言った。


「休めんのか」


セレスが、

わずかに目を伏せる。


王は、

静かに窓の外を見る。


「休めば、

観測が止まる」


「観測が止まれば、

アストラも終わる」


その声には。


諦めが混ざっていた。



玉座の間を出た後。


セレスは、

塔上層へ案内した。


そこは、

観測区画だった。


巨大な水晶球。


浮遊する星図。


無数の記録端末。


星晶族達が、

静かに作業している。


誰も大声を出さない。


緊張が、

空気へ染み付いていた。


ユキが、

小さく聞く。


「みんな、

寝てないの?」


セレスは、

少し困ったように笑う。


「最近は、

ほとんど」


「観測不能領域の拡大が、

急激なんです」


その時。


一人の観測士が、

慌てて駆け寄って来る。


「第一観測官!」


「第七層星域、

反応減衰しています!」


セレスの表情が変わる。


即座に、

巨大水晶球へ手を触れる。


星図が展開。


その一角だけ、

光が不安定だった。


点滅している。


消えそうだ。


ミーコが、

静かに呟く。


「近い……」


セレスは、

唇を噛む。


「もう中心域まで来てる……」


タマが、

水晶球を見ながら聞く。


「助けられねぇの?」


沈黙。


観測士達の手が止まる。


やがて。


セレスが、

静かに首を振った。


「行けません」


「観測外領域へ入った瞬間、

存在情報が削られます」


「帰還例はありません」


フィルニアが、

腕を組む。


「じゃあ見てるだけか」


責めた声ではない。


だが。


セレスは、

苦しそうだった。


「……はい」


その時だった。


水晶球の中で。


一つの光点が、

ふっと消える。


静寂。


誰も喋らない。


観測士達が、

黙って頭を下げた。


まるで。


葬式だった。


ユキが、

ミツコの袖を掴く。


「……嫌だ」


ミツコは、

静かに頭を撫でた。


「怖いねぇ」


その時。


トシオが、

窓の外を見ていた。


星海。


その奥。


何かが動いている。


巨大だった。


輪郭すら分からない。


だが。


近付いている。


低く言う。


「来とるな」


ミーコも、

すぐ気付いた。


「……速い」


その瞬間。


塔全体へ、

警鐘が鳴り響く。


ガァァァン!!


今までの鐘と違う。


鋭い。


緊急音だった。


観測士達が、

一斉に動き出す。


セレスが、

即座に指示を飛ばす。


「全観測層封鎖!」


「外周結界起動!」


空気が変わる。


フィルニアが、

逆に笑った。


「なんか始まるな」


「バトル禁止」


タマが即座に突っ込む。


「誰に言ってんだよ」


その時。


塔の外側へ、

巨大な影が現れた。


星海より黒い。


空間が歪む。


そして。


無数の銀眼が、

ゆっくり開く。


都市全体が、

静まり返った。


誰も叫ばない。


叫べなかった。


本能で理解した。


“見られた”。


その瞬間。


街の灯火が、

一斉に消える。


星都アストラから、

光が消えた。


完全な暗闇。


その中で。


銀眼だけが、

空に浮かんでいる。


ユキが、

小さく震える。


「……あれ、

何」


星見の王が、

いつの間にか後ろへ立っていた。


静かに空を見上げながら、

低く呟く。


「観測者だ」


そして。


続ける。


「世界の終わりを、

確認しに来た」

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