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じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


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アルネシア整備区画





 ベルンガルド整備区画。


 市場の喧騒とは別世界だった。


 巨大な飛空艇が何隻も並び、


 整備用足場が空中へ幾重にも組まれている。


 蒸気。


 金属音。


 風魔導炉の低い駆動音。


 さらに。


 飛竜達の鳴き声まで響いていた。


「おぉぉぉぉ……!!」


 タマが完全に少年の顔になっている。


 フィルニアも目を輝かせていた。


「デカい!!」


「近くで見ると迫力すげぇな!!」


 ナギが腕を組む。


「ここは大型整備場だからな」


「軍用級も普通に入る」


 その瞬間。


 フィルニアが反応した。


「軍用!?」


「見たい!!」


「食いつくと思った」


 ナギが笑う。


 その横で。


 グランヴェルが周囲を見回していた。


「アルネシアの技術力は相変わらずだな」


「ヴォルグラードほど火力特化じゃないけどね」


 ナギが答える。


「代わりに長距離安定性はこっちが上」


 アークも頷いた。


「風脈制御技術はアルネシア随一ですから」


 その時だった。


 整備場奥から怒鳴り声が響く。


「だから違うって言ってんだろ!!」


「推進翼の角度だ!!」


「いや炉圧だ!!」


 かなり揉めていた。


 ナギが肩を竦める。


「また始まった」


「日常茶飯事なのか?」


 セレスが聞く。


「整備馬鹿同士だからな」


 ナギが苦笑する。


 奥では整備士達が図面を囲んで言い争っていた。


 しかも。


 全員かなり本気だ。


 タマがぽつりと呟く。


「職人って怖ぇな……」


「分かる」


 フィルニアも頷く。


 すると。


 ナギが一行を手招きした。


「ほら、こっち」


「今日は特別に見せてやる」


 案内された先。


 そこには。


 巨大飛空艇が停泊していた。


 黒銀色の船体。


 細長い形状。


 大型推進翼。


 しかも。


 装甲が普通より分厚い。


「おぉ……」


 タマが見上げる。


「かっけぇ……」


 フィルニアも感動していた。


 ナギが得意げに笑う。


高速輸送艦アルバトロス


「ベルンガルド最速級だ」


「速そう」


 ミーコが素直に呟く。


 その時。


 タマが船体側面を見て首を傾げた。


「これ傷か?」


 ナギの表情が少し変わる。


「あぁ」


「昨日帰ってきた便だ」


「……何かあったの?」


 ユキが小さく聞く。


 ナギは少し黙った。


「最近、風脈がおかしいんだよ」


「昨日も輸送路で乱流が急変した」


 アークが眉をひそめる。


「ここでもか」


「そっちも何かあったのか?」


 ナギが聞く。


 シェルファが静かに答えた。


「多少」


「多少で済む顔じゃないぞ」


 ナギが真顔になる。


 その空気を切り替えるように。


 フィルニアが船へ駆け寄った。


「これ乗れるのか!?」


「勝手に触んな!!」


 ナギが慌てる。


 遅かった。


 フィルニアが整備用ロープを掴んだ瞬間、


 足場がぐらりと揺れた。


「おっ」


 フィルニアが空中で身体を捻る。


 そのまま軽やかに着地した。


 ド ン


「危なかった!!」


「いや絶対余裕あっただろ今」


 タマが呆れる。


 フィルニアはケロッとしていた。


「竜人族だからな!!」


「便利な言葉だなおい」


 その時だった。


 整備場上空で警笛が鳴る。


『大型搬入入ります!!』


 巨大貨物艇がゆっくり接近してきた。


 かなりデカい。


 下部には巨大資材が吊られている。


 タマが見上げた。


「うわぁ……」


「落ちてきたらヤバそう」


 ナギが頷く。


「だから整備員は常に気を張る」


 すると。


 トシオが資材を見る。


「重そうだのぉ」


「鉄骨資材だからな」


「何百人分だアレ?」


「考えたくない」


 アークが遠い目になった。


 その時だった。


 ミツコが小さく声を漏らす。


「あら?」


 視線の先。


 整備区画端。


 小さな鳥人族の子供達がこちらを見ていた。


 しかも。


 タマとフィルニアをじっと見ている。


「なんだ?」


 タマが気付く。


 すると。


 子供達が小声で話し始めた。


「あれ昨日の……」


「ほんとだ……」


「飛んでた人達だ……」


 完全に覚えられていた。


 フィルニアが首を傾げる。


「飛んでた?」


「風帆競技だろ」


 タマが答える。


 子供達が目を輝かせた。


「すごかった!!」


「ぐるぐる回ってた!!」


 数秒沈黙。


 フィルニアが吹き出す。


「ははははは!!」


 タマが叫ぶ。


「そこ褒められてねぇだろ!!」


 子供達は楽しそうだった。


 その時。


 一人の小さな鳥人族の少年がトシオを見上げる。


「あの」


「ん?」


「おじさん強いの?」


 周囲が少し静かになった。


 タマがニヤニヤする。


「強いぞー?」


「めちゃくちゃ強い」


 フィルニアも頷く。


「山投げそう」


「そこまではせん」


 トシオが普通に否定した。


 だが。


 否定になってない。


 子供達は目を輝かせていた。


「すげぇ……」


 その横で。


 ミツコが買い物籠をごそごそ漁る。


「はいどーぞ」


 飴だった。


 丸い果実飴。


 子供達が目を丸くする。


「えっ」


「食べてええよぉ」


 子供達の顔が一気に明るくなった。


「ありがとう!!」


「甘っ!!」


 タマが笑う。


「ばーちゃんの飯うまいぞー?」


「アンタはなんで毎回食べ物基準なのよ」


 ミーコが苦笑する。


 すると。


 ナギが少し驚いた顔になる。


「アンタ達ってさ」


「変な奴らだよな」


「褒めてる?」


 ミーコが聞く。


 ナギは笑った。


「もちろん」


「普通、異邦人ってもっと警戒されるんだよ」


「でもアンタ達、変に馴染む」


 その時。


 トシオが空を見上げる。


 高い。


 青い。


 風が流れている。


「アルネシアも賑やかやのぉ」


 ナギが頷いた。


「退屈はしないぞ」


 その横で。


 フィルニアがまた整備ロープを掴んでいた。


「俺様ちょっと上見てくる!!」


「だから勝手に登るなぁぁぁ!!」


 ナギの叫びが整備区画へ響く。


 タマはもう笑い転げていた。

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