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じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


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空港市場の一日





 ベルンガルド中央市場。


 朝だというのに、とんでもない賑わいだった。


 空魚。


 乾燥香草。


 浮遊果実。


 巨大肉串。


 飛空艇部品。


 風魔導具。


 ありとあらゆる物が並んでいる。


「おぉぉぉ……」


 タマが窓へ張り付く。


「すっげぇ……」


 フィルニアもキョロキョロしている。


「ほんと空の国なんだな」


 シェルファが静かに説明する。


「ベルンガルドは西部最大級の交易拠点です」


「各国の品が集まりますので」


 ミーコが市場を見回す。


 鳥人族だけじゃない。


 獣人族。


 竜人族。


 森精族。


 かなり多種族が入り混じっていた。


「思ったより色んな人いるのね」


「交易都市ですから」


 アークが答える。


 その横で。


 ナギが笑った。


「ここじゃ珍しい種族の方が人気出るぞ?」


「どういう意味だ?」


 タマが首を傾げる。


「観光客扱い」


「なるほど」


 フィルニアが頷く。


 すると。


 近くの屋台から香ばしい匂いが流れてきた。


 肉。


 焼き魚。


 甘い蜜菓子。


 タマの耳がぴくっと動く。


 フィルニアまで反応していた。


「……腹減ったな」


「分かる」


 二人とも完全に同じ顔である。


 ミーコが小さく吹き出した。


「アンタ達ほんと分かりやすいわね」


 その時。


 ぐぅぅぅ……


 静かな音。


 タマがニヤニヤする。


「フィルニア、朝から全開だな」


 フィルニアが胸を張った。


「当たり前だ!!」


「昨日あんだけ暴れたんだぞ!?」


「肉十人前は食える!!」


 ミーコが笑う。


「それはちょっと食べすぎじゃない?」


 すると。


 ナギが親指で市場奥を指差した。


「ベルンガルド名物食うか?」


「空魚串おすすめだぞ」


「魚!!」


 タマが即反応した。


「行く!!」


「俺様もだ!!」


 フィルニアまで同時に動く。


「だーかーらー! 勝手にはしりまわないのーー!!」


 ミーコの声が市場へ響いた。


 だが。


 もう遅い。


 二人は既に屋台へ突撃していた。


 屋台の店主が豪快に笑う。


「元気だな兄ちゃん達!!」


「これなんだ!?」


 タマが串を指差す。


 青白い肉。


 少し透き通っている。


「空クラゲだ」


「クラゲ!?」


 フィルニアが目を丸くした。


「食えるのか?」


「揚げると美味いぞ」


 店主が得意げに答える。


 数秒後。


 タマが串を齧る。


 フィルニアも続いた。


 そして。


 二人同時に目を見開く。


「うまっ!?」


「なんだこれ!!」


 店主が笑う。


「独特だろ?」


「食感すげぇな!!」


 フィルニアが驚いていた。


 ミツコも興味深そうに覗き込む。


「へぇ……」


「油との相性良さそうやねぇ」


 ナギが察した顔になる。


「あ、今レシピ考えたな?」


「ちょっと試してみたくなってねぇ」


 その横で。


 トシオが焼き魚を見ていた。


 炭火。


 塩。


 香り。


 完全に気になっている。


 タマが気付く。


「じーちゃんも食う?」


「……うまそうだのぉ」


「食うんじゃねぇか」


 ミーコが笑った。


 市場通りを進むと、今度は妙な音が聞こえてきた。


 笛。


 太鼓。


 歓声。


 かなり騒がしい。


「なんだ?」


 タマが背伸びする。


 ナギが笑った。


「風帆競技やってんな」


「ベルンガルド名物だ」


 広場中央。


 巨大な布を使った競技が行われていた。


 風を受けながら空中輪を通過していくらしい。


 かなり速い。


「面白そう!!」


 フィルニアの目が輝く。


 タマも完全に同じ顔だった。


 嫌な予感しかしない。


 ミーコがじーっと二人を見る。


「……やる気?」


「「やる」」


 即答だった。


 数分後。


「なんでこうなるのよ……」


 ミーコが遠い目になっていた。


 広場中央。


 タマとフィルニアが並んでいる。


 完全にやる気満々だった。


 ナギが腹を抱えて笑っている。


「最高だなお前ら!!」


「負けんぞタマ!!」


「望むところだ!!」


 セレスが静かに呟く。


「不安しかありません」


 レオネも頷いた。


「同感です」


 そして。


 競技開始。


「スタート!!」


 タマとフィルニアが同時に飛び出した。


 速い。


 観客がざわつく。


 だが。


 フィルニアの風帆が急旋回する。


「おっ!?」


 そのまま勢い余って回転。


 ド ォ ン!!


 壁へ突っ込んだ。


 広場が爆笑する。


 タマが腹抱えて笑った。


「ぶははははは!!」


「お前めちゃくちゃじゃねーか!!」


「うるさい!!」


 フィルニアが叫ぶ。


 その直後。


 タマの風帆へ突風が直撃した。


「うおぉぉぉぉぉ!?」


 今度はタマが回転する。


 布へぐるぐる巻きにされ、そのまま地面を転がっていった。


「あははははは!!」


 フィルニアが指差して笑っている。


「お前も大概だろ!!」


 広場中が大笑いだった。


 ユキも肩を震わせている。


「ふふっ……」


 グランヴェルまで口元を押さえていた。


 アークが呆然としている。


「こんな騒がしい参加者、初めて見たな……」


 その頃。


 トシオは屋台席へ座っていた。


 ミツコが買い物籠から湯呑みを取り出す。


「はいどーぞ」


「おぉ」


 さらに。


 焼き菓子まで出てきた。


 ナギが真顔になる。


「……その籠、本当に何なんだ?」


「便利やよぉ」


「便利で済ませる気か……」


 その横へ。


 ぐるぐる巻きのタマが転がってきた。


「た、助けろぉ……」


 フィルニアがまた笑い転げる。


「ははははは!!」


「笑ってねぇで外せ!!」


 市場中へ賑やかな声が響いていた。


 空の港町。


 旅の途中。


 こういう時間も悪くない。


 ミーコは少しだけ笑いながら、騒がしい仲間達を眺めていた。

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