カレーと中華と消された記憶
人間蒸発事件の犯人は昆虫型宇宙人のクールス星人だった!
偶然にもクールス星人の宇宙船に乗り込んだ"望月みきお"は、そこで会いたがっていた宇宙人に遂に接近遭遇。
しかし地球人を虫ケラ扱いするクールス星人に失望と怒りを覚える。
怯むことなく「オマエの方がよっぽど虫ケラみたいだ!」という彼の所に牧野真希奈が現れる、
実は彼女の正体は宇宙人!それも宇宙の犯罪者を狩るGAPの
トップクラスのエージェントだった。
クールス星人を倒し、攫われていた人々は解放されたが、みきおは宇宙船の中でエマの手により
眠らされてしまうのだった。
クールス星人の宇宙船の中でエマによって眠らされたみきお君、彼が再び目覚めたのは自分の部屋のベッドだった。
みきお「…あれ?…寝てたんだ…なんか嫌な夢を見た気がするんだけど…覚えてないや…」
宇宙人の記憶もヴァネッサの記憶も、カレンの記憶も消えてしまっていた。
みきお「うーん…なんか出かけたと思っていたけど…あのまま寝落ちしてたんだ?…僕って何処でも寝てしまうからなぁ…!」
窓の外を見ると、すでに日が傾いてオレンジ色に街を染めていた。
みきお「日曜日だってのに…なんか時間を無駄にしてしまったな?」彼の記憶はエマにスマホの使い方を教えた事と、エマの胸の谷間の印象だけだった…
みきお「エマさん…はっ!いけない何を思い出してるんだよ?」などと一人で顔を赤らめるのだった。
その頃、屋敷の大浴場では…エマとルナがお風呂に入っていた。
エマ「それじゃカレンさんも…」
向かい合って入っているルナが答える。
ルナ「はい!無事に家まで送り届けました。」
エマ「記憶を消すのは申し訳ないけど…私達の正体を知られる訳にはいかないものね…?」
ルナ「はい!それに真希奈さんがGAPのエージェントだという事も…」
エマ「そうね?彼女は特に…何せアレは非公認の組織だもの。」
ルナ「地球のように銀河連邦に所属していない未開の惑星は連邦の法律が適用されませんから…」
エマ「それをいい事に、勝手な事をする無法者が後を絶たないわ…平和に地球人と共存している人々もいるのにね?」
ルナ「…だからこそGAPのエージェントであるヴァネッサが派遣されたのですね?」
エマ「そう!地球人よりも遥かに優れた科学力を持っていても…あくまで私達は一般人、そんな無法者とやり合ったりは出来ないわ!」
ルナ「いざとなれは出来ない事でも無いのでは?」
エマ「そうね…でもあの力は使いたく無いの!私が…魔女って呼ばれる事になったのは…あの…」
ルナ「承知しております!出来る限りそのような事態にならないように努めますので…!」
エマ「ふぅ〜!…そろそろ上がりましょう、みきお君も目を覚ます頃だわ。」
ルナ「はい!」
そう言って二人は大浴場を後にするのだった。
エマ達がお風呂から上がってバスローブ姿で廊下を歩いていると、みきおが階段を降りてきた。
みきお「え、エマさん…ルナさんも、なんですその格好?」
エマ「あら?お風呂入ってきただけよ、みきお君には刺激が強すぎたかしら?」
蠱惑的な笑みを浮かべるエマ、ルナは表情を変える事なく…
ルナ「今はお風呂は空いておりますので、みきお様もどうぞ!」
みきお「いや、今は良いです…ちょっと出かけて来ます。」
エマ「あら?もうすぐ晩御飯よ、今夜はみづきちゃんがカレーを作ってくれたのよ!」
みきお「へぇー?みづきちゃんのカレーは美味しいんですよ!わかりました、すぐに帰りますんで。」
それを聞いたエマの眉毛がピクっと動いたのを彼は気がつかないでいた。
玄関に向かうみきおの後ろ姿を見送りながら…
エマ「今度…私の手料理も食べてもらおうかしら?」などと呟くのだった。
屋敷の庭で、みきおはカレンと電話で話していた。
みきお「うん、今日はなんだか眠くて寝てしまったみたいなんだ…!」
カレン(…そう?私は…やっぱりあの占い師が気になって…でも会えなかったの…)
みきお「そうなんだ?なんだよ、用があるとか言っていたのに…結局調査に行ったんだ?」
カレン(あのさ…変な事聞くけど…今日アタシと会った?)
みきお「何?そんな訳無いじゃん!僕は寝てしまったし…なんで?」
カレン(う、ううん別に…なんか紅華町で会ったような気がするから…!)
御堂カレンの記憶も、エマによって消されていたが…恐ろしい記憶なんかは消えた方が良いだろう。
しかし記憶は消されても、感情に刻まれた出来事は完全には消せないでいたのだろう…カレンは自分では分からないが、みきおに対して特別な感情を抱き始めていたのだ。
カレン(なんかね…怖い夢を見た気がするの…覚えてないけど…)
みきお「あるある!でも夢なんだから…それに覚えてないなら見た事にすらならないよ。」
カレン(そうね?…ありがとう、話しを聞いてくれて。)
みきお「別にいいよ、それじゃ…そろそろ晩御飯だから、今夜はみづきちゃんの作ってくれたカレーなんだ、楽しみ〜!」
そう言って通話を切るみきお。
しかし電話の向こうのカレンは…
カレン「はぁ?みづきちゃん?カレー?何よそれ?また新しい女がみきおのそばに現れたの?」
スマホに向かってそう叫ぶカレンの事をみきおは知らないでいた。
一方、クールス星人を倒したヒーローであるヴァネッサこと牧野真希奈は…
星影通りの一角にある中華料理店"龍翔飯店"に来ていた。
店内の一番奥にある団体用の個室に彼女は一人で座って麻婆豆腐丼と餃子を食べていたのだ。
真希奈「仕事の後はやっぱりココだね!安くて美味しい龍翔飯店!さま様だよ〜!」
豪快に食べる真希奈の所に銀色のチャイナドレスを着た女性がやって来た、龍翔飯店の看板娘"銀嶺"である、銀色に輝く美しい髪と銀色のドレスが店内に華を添えているのだ。
銀嶺「なかなか正体を現さない相手だったけど…お疲れ様です。」
真希奈「あぁ…今回はみきおのおかげでシッポを掴めたのさ…あの子の巻き込まれ体質は恐ろしいな…?」
銀嶺「…その子…確かエマさんの所に居候している子よね?」
真希奈「知っていたのか?さすがはサーチャーだな?」
銀嶺「しっー!アタシがGAPのエージェントなのは秘密なんだから…」
真希奈「大丈夫だろ?この店は盗聴もハッキングも泥棒だって受け付けない作りになってるからな!」
実は銀嶺も宇宙人でGAPのエージェントなのだ、階級はS情報収集と戦闘部隊のフォローが主な任務である。
銀嶺「あの子はエマさんの屋敷に行く前は毎週ここに来ていた常連さんだったのに…」
真希奈「ハハッ!あそこには腕の良いメイドが二人もいるからな!外食の必要なんて無いのさ。」
銀嶺「あぁ、みづきちゃんもあの屋敷で住み込みで働いて居るのよね?」
真希奈「そういう事!…まぁみづきの手料理が食えないのは残念だが…一般人を巻き込む訳にはいかないからなぁ…」彼女は少し寂しそうに話す。
銀嶺「ウチでサービス料金で食べさせてあげてるんだから…贅沢言わないの!」
真希奈「はいはい…今夜のメシも美味かったよ!」
銀嶺「しかし…犯人はクールス星人だったなんてね?」
真希奈「うん…攫われた地球人は、全員圧縮冷凍されていたからな…無事に解凍してみんな解放されたよ!」
銀嶺「クールス星人は寄生蜂みたいな連中で卵を獲物に産み付けて幼虫の餌にするのよね?」
真希奈「買い手がつかなかったらそうするとか言っていたから…奴隷なんかで売り飛ばすつもりだったんだろうな?」
銀嶺「宇宙船の記録からは…顧客リストとかは見つからないみたい…それに…」
真希奈「それに?なんだ?」
銀嶺「それに…クールス星は地球からかなり離れているわ、同じく辺境地帯にある星だから…こんな所まで来るなんて…誰か情報を売った人がいるはずよ!」
真希奈「確かにな?もっと近くの星系でも良かったはずだ…」
銀嶺「そこら辺も含めて、引き続き調査するわね?」
真希奈「ああ頼むよ!」
みきお君が思ってる以上に、宇宙人は身近に存在しているのだ!
そしてその頃、みきお君はエマ邸の食堂でみづきちゃんの手作りカレーを食べていた。
みきお「うーん!やっぱりみづきちゃんのカレーは美味いなぁ…最高だよ!」
寝ていた割には何故かお腹がめちゃくちゃ減っていた彼はものすごい食欲だった。
みづき「カレーは沢山作ったからどんどんお代わりして大丈夫ですよ!」
みきお「うん、ありがとう!…そう言えば寝てしまったからお昼ご飯食べてなかったんだよな?お代わり!」そう言って、お皿を差し出すみきお。
みづき「ハーイ!」みづきも嬉しそうに返事をする。
それを見ていたエマは…
エマ「何かしら…?なんだかちょっとイライラするわね…?」とか呟く。
それを観察しているルナは、生暖かい目でエマを見守るのだった。
人間蒸発事件はこの日を境に発生しなくなり、行方不明になっていた人々も無事に帰って来てこの事件は"現代の神隠し"と後に呼ばれる事になるのだった。
クールス星人編[完]
クールス星人は倒され、街に束の間の平穏が訪れました。
しかし対照的に、エマ邸の方は更に賑やかに…
そして新キャラ銀嶺の登場で遂に役者が揃いました!
更に地球の情報を売ってる人物とは何者なのか?新たな謎も浮上して来ました…
御堂カレンの記憶は消されても、彼女の心には新たな感情が芽生えてるようですね?
そしてエマさんやみづきちゃんの心にも…果たしてこれからどうなるのでしょうか?
見守っていきたいと思います。




