第144話 俺達の友達が離れていても一緒な件
サブタイで地味に好きな所
「俺のクラスメイト→俺の友達→俺達の友達」と、同級生から一人の友達。一人友達から複数の友達と、少しずつ変わってるところ。
「さて……改めて質問しよう。マホくん、ペンヨウくん。君達はどうする?」
後回しにしていたマホとペンヨウに再度、この世界に残るか魔法世界に帰るかの二択を迫るガク先輩。
俺は、声を掛けるべきだろうか。何か言葉を掛けてマホとペンヨウを……いや、違うな。これは自分自身で決める事だ。
ここで俺がどうこう行って選択を誘導するような事があれば、きっとマホとペンヨウは「あの時こうすれば良かったかも」と後悔するだろう。
助けになりたい。支えてやりたい。けどこの決断は本人が決めなければいけないものだ。だから耐えろ、例えマホとペンヨウが別々の道を選ぼうともそれを祝福するんだ。
「ペンヨウは……魔法世界に帰るセイ」
「おや、思ったよりあっさり決めるね。悩んでいたから、もっと渋ったりごねると思っていたが」
俺は自分自身の口が開くのを堪えていると、ペンヨウが声を震えさせながら、恐る恐る魔法世界に帰ると口を開いた。
しかしその一方で決断は固いらしく、視線は真っ直ぐ前を向いている。
「勇子達と会えなくなるのは寂しいセイが、ペンヨウの帰るべき故郷は妖精国セイ。例え国が滅ぼうとも、それは決して変わらないセイ」
…………あぁ、そうだな。帰る場所があるなら、そこに帰るべきだ。俺のように故郷が無くなったのなら兎も角、ペンヨウにはまだ残っている。
だから、これで良いんだ。あぁ……そうだ。これで良い、帰る場所があるから帰る。遊び終わった子どもが家に帰るように、ペンヨウは本来の居るべき場所へ帰るだけなんだ。
「力男。悪いセイが遊ぶ約束、守れそうに無いセイ」
「気にすんな。それより、故郷に帰ったら一日一日を大切にしろよ? 人生、何が起こるか分からないんだからな」
「分かってるセイ」
かつて俺はペンヨウに言った。笑顔で見送れないと一生後悔すると。
これ以上口を開くと泣いてしまう。別れが辛いと考えれば涙が出てしまう。だから俺は何も語らない。別れを考えない。
ただひたすらにペンヨウへ笑顔を向ける。後悔が残らないように。ペンヨウがその選択が正解だったのか迷わないように。またいつか、生きていれば会えると信じて。
「私も…………帰るべき、なんでしょうね。この世界に残りたいって我儘を言い続けるような事は出来ないでしょうから」
そしてペンヨウに続いてマホも帰る事を選択する。
しかしその目にはまだ迷いがある。帰るべき場所がある。帰りを待っている人物が居る。それは理解している。理解はしているが、この世界に残りたい気持ちが納得を拒んでいるのだろう。
「でも……私は、みんなと別れたくないです。まだ一緒に居たいです」
そういうとマホは顔を伏せた。
これは我儘だ。友達と別れたくないと言う、どちらも選べないと言う子どもらしい我儘。本来ならその我儘が通るように動きたくはあるのだが……その我儘だけは、通す事は出来ないのだ。
「……ねぇガク先輩。やっぱり私達がもう一度魔法世界に行ったり、マホちゃん達が此方の世界に遊びに来るのは難しいの?」
「難しいね。元気パワーが扱えない限りは世界と世界を繋ぐのは難しいし、仮に出来たとしても私達が生きている間に可能かどうか……」
ライヨウ達妖精は元気パワーを司るが自由に使える訳ではなく、マホや勇子達は|魔法少女に変身しなければ《妖精が居なければ》元気パワーを扱えない。
マホとペンヨウ、ペンヨウとワニヨウの組み合わせなら魔法少女に変身出来るが、それを言わない辺り何か理由があるのだろう。
逆に此方から魔法世界に接触する方法はガク先輩しか持っていない。
なんで一般人が持ってんだよと言われそうだが、ガク先輩は魔法世界とこの世界を行き来出来る空間を作り出した実績がある。
その方法ならば……と思ったが、世界との繋がりが薄くなる為、空間が繋ぎにくくなるのだろう。一応、出来なくは無いがあくまで理論上の話のようだ。
「マホ達が遊びに来るのが難しいのは何故かしら。一度は来れたのよね?」
「それはあくまで一方通行の話だからね。帰り道は私達の方で用意する必要があるのさ」
そうえばと、思い返してみればマホ達はガク先輩が空間を繋げるまで一度も魔法世界に帰っていなかった。ホームシックになった時もあったので、ガク先輩の協力が無ければ帰るのは不可能だったのだろう。
マホ達がもう一度、此方の世界に来れば世界との繋がりが深くなって、また行き来出来るようになる可能性はあるが……もし、繋がりが深くなるような事が起きなければ、マホ達の帰還は不可能に近い状態となり一生この世界で暮らす。つまりは一生家族や知り合いと会えなくなるだろう。
「で、でも可能性としてあるなら!」
「諦めないのは美徳だと私は思う。けれど同時にそれ相応の現実も視野に入れるべきだと思うのだがね」
諦めきれずに詰め寄る咲黄だが、その行動を全く意に介さず、ガク先輩は淡々と現実を突き付ける。
現実を見るのは大事だ。理想を追い続けた結果、現実を直視出来ずに大切なモノを落としたりしてしまうのは良く聞く話なのだから。
「なぁガク先輩。流石に言い過ぎじゃねぇか?」
言いたい内容は分かる。それでもここまで厳しい言葉を掛ける必要はあるのだろうか。
俺は多少の怒りを胸に抱きながらガク先輩に口答えする。
「ここで「また会えるから」となぁなぁの別れ方した結果、後であれを伝えれば良かった。これを話せば良かったと後悔し続けて一生会えなくなるよりはマシだろう?」
「それは、そうだが……」
「厳しい言葉を掛けてる自覚はあるさ。ただ、ここで楽観的な考えをして一生別れるのと、辛い現実を受け止めながら一生別れるのとでは、どちらを選ぶべきだと思う?」
当然選ぶのは後者だ。
実際に俺は「すぐ空界に会えるだろ」って楽観的な考えをしていた結果、邪神に出会い世界が滅んだ。
流石にまた同じような事が起こるとは思えないが、俺は実際に前者を経験してしまっている。
だから選ぶべき選択肢が分かってしまう。また会えるからと楽観的に考えた結果、俺は空界に会う機会を一生失ってしまったのだから。
「…………ありがとうございます、ガク先輩。わざわざ気を遣ってくれて」
「現実を見ろと、厳しい言葉を掛けた私は礼を言われる筋合いは無いのだが?」
「私達を気遣ってくれたのでしょう? 分かっていますよ」
「…………」
「みなさん。私……決めました」
マホは顔を上げる。
その目にはもう迷いは無かった。クヨクヨして帰るか、キッパリ別れを言って帰るか。その二択を選べと言われたマホは覚悟を決めていた。
「私は魔法世界に帰ります。家族が、村のみんなで私の帰りを待っていますからね」
「ふむ……そうか。なら早く空間へ入りたまえ。あまり持たなくなってきているさ」
ガク先輩の言葉を釣られて俺は空間を見る。
すると先程よりも崩壊が進んでおり、大きさも小さくなっていた。残り数分もあれば完全に空間は閉じ、もうマホ達とは会えなくなるだろう。
「色々と、世話になったな」
「みなさン、さようなラ」
「勇子。ちゃんと早寝早起きするライ」
「咲黄。少しは兄離れするフク」
「緑。クラヨウよりも料理の腕を上げれるように頑張るクラ」
「……別れって言うのは、やっぱり寂しいセイね」
「同意見ワニ」
ワタカラ、リュウ、ライヨウ、フクヨウ、クラヨウ、ペンヨウ、ワニヨウの順で空間へと入っていき、1人ずつ魔法世界へ帰還していく。
そしてとうとうマホの番となった。
マホは無言で空間へと入っていく。しかし何かを思い出したかのように、突如として俺達の方へと振り返る。
「また会いましょう!」
「「「ッ!」」」
「うん!」
「また会おうね!」
「約束破るんじゃないわよ!」
俺達が見たマホの表情は笑顔であった。
しかし目尻に涙が貯まっており、誰がどう見ても無理をしているのが分かる。それでもそれを指摘せず、また会えると約束を固く結ぶ。
そしてマホは空間へ飛び込む。
この約束が守れるかは俺達次第だ。俺達が諦めなければ、もっと方法を模索し続ければきっと約束は守れる。空界との約束も、ペンヨウとの約束も俺は破ってしまった。だから今度こそ……この約束は果たしたい。それが今の俺の、超能 力男の目標だ。
「…………ところでガク先輩、さっきから何してんだ?」
マホが帰還し、静寂に包まれた部室で1人、何故か世話しなく動く人物が居た。ガク先輩である。
ガク先輩は読めない文字で書かれた本や書物をポンポンと空間内、つまりは魔法世界へと投げ込んでいく。
俺はその行動の意味が理解出来ず、感動の別れも忘れて思わずガク先輩に聞いてみた。
「いやなに。妖精国から借りたモノを返そうと思ってね」
「まだ返してなかったのかよ!?」
感動返せよ!?
つーか前も言ったと思うけど、それ借りたじゃなくて盗んだの間違えだろうが! 返す暇が無かったのは分かるけど、そんなポンポン投げ込むんじゃねぇよ!
きっと魔法世界でマホとかペンヨウ、別れが悲しくて凄い泣いてるから! シリアスめっちゃしてる所に盗んだモノ投げ込んで雰囲気壊すんじゃねぇよ!
最終回に向けて構想練ってたら、ガク先輩が妖精国から色々と借りパク状態だった思い出したので、最後に無理矢理返却イベントをぶち込みました。
理想と同時に現実も直視しているガク先輩は、今回のように誰かが現実を教えてマホ達からあえてヘイトを買う展開にする時に便利すぎる。なんやかんやでちゃんと先輩してるんだよなぁ……なお、普段の奇行でその株は落ちる。




