第143話 魔法世界の住民が決断な件
今回はシリアス気味です。てか帰るor残るって話題をギャグで扱ったら、これまでのはなんだったんだよ案件になりますからね……。
「ちょっ、ちょっと待って!」
「ふむ。どうかしたのかね、勇子くん」
ガク先輩の言葉に勇子は混乱しながら待ったを掛ける。
それもそうだろう。自分達の日常を守れてハッピーエンドだ~と思ったら、突然魔法世界に帰るか、この世界に残るかの二択を選ぶ話になったのだから。正直、俺だって混乱している。
「マホちゃんやライヨウ達が帰るのは納得するよ。元々そういう話はしてたんだし……でも、また此方の世界に遊びに来れば」
「それが出来るなら私は何も言わないさ」
「どういうことよ。今まで此方の世界とあっちの世界に何度行き来してたじゃない!」
「み、緑ちゃん落ち着こうよ」
何故どちらかの世界を選ぶ必要があるのか。勇子が今言ったように、また遊びに来ることは出来ないのか。
その理由を一向に話さず、ただ質問された事しか返さないガク先輩の態度に業を煮やしたのか、ガク先輩に掴み掛かろうとするのを緑を咲黄が前に立って止めさせる。
「世界が元に戻る。そう願ったのが少し問題でね」
「問題って……俺はその願いがベストだと思ったんだが、もしかして駄目だったか?」
「いや、その願い自体に問題は無いさ。実際、その願いこそがペンヨウくん達のハッピーエンドに必要不可欠だからね」
「じゃあ何が問題なんだよ」
魔法世界の事を考えて、俺はペンヨウに「邪神によって目茶苦茶にされた世界が元に戻りますように」と願うようアドバイスした。
その願いによって魔法世界やこの世界は元に戻り、邪神に目茶苦茶にされた世界の住民もその対象になっているようで、ワタカラやリュウの傷もその願いによって回復した。
この願いが間違った選択とは思わないし、ガク先輩もハッピーエンドに必要不可欠と言っている所から考えるに、その願い自体は良かったのだろう。なら何が問題なんだ?
「実は世界を行き来出来る空間が閉じ掛けていてね」
「空間が? ってうわ、本当だ!?」
俺は魔法世界から帰ってきた空間を見てみると、外側からジワジワと空間が崩れて始めていた。
今はまだ形を保ててはいるが、このまま時間が経てば空間は閉じて魔法世界に行けなくなるだろう。
「私が目覚めた時には空間が不安定になっていてね。君達が帰ってくるまでは維持出来るよう努力していたのだが……」
「そろそろ限界って事か」
伝承から推測───その伝承自体、邪神の手が加わって改編されている部分があるから、あくまで参考程度にだが───するに、邪神を倒す為に過去の妖精達はこの世界に来て魔法少女を探した。
その時に微かながら世界が繋がったままだったのだろう。その繋がりをマホとペンヨウが広げ、此方の世界にやってきた。そしてその繋がりが広がった原因は元を辿れば、魔法少女を倒そうとした邪神である。
その邪神が消滅し、俺達は元気パワーに邪神によって荒らされた世界を元に戻すよう願った。
きっとその願いの範疇には、繋がった世界を元に戻す。つまりは俺達が通ってきた空間を塞いで、繋がりを広がった状態から微かな状態に戻すのも含まれているのだろう。
「空間が閉じ掛けてるなら、もう一度繋げれば良いじゃない」
「それが出来たらこの話はしないさ」
きっと空間をもう一度繋げられないのは、繋がりがあまりにも微か過ぎて捕捉出来ないからだろう。
これは推測になるが、過去の妖精達が俺達の世界に来れたのは、空界が複数の世界を渡り歩いている時に、世界と世界に繋がりが出来たからだろう。
マホ達が此方の世界に来れたのも、魔法世界に帰れたのもその繋がりがまだ生きていたから。だが、その繋がりが今……元に戻ろうとしている。
ガク先輩の事だから、研究と称してまた魔法世界に行けるように気を遣ってくれるだろう。尤も、世界を行き来出来るようになるまで何十年掛かるか分かった話じゃないが。
「マホくん、ペンヨウくん。君達は」
「「…………」」
「ふむ、そうか。ならば後で聞くとしよう」
魔法世界に帰って一生勇子達と会えなくなるか。
この世界に残って一生家族や知り合いと会えなくなるか。
もしかしたら本人の中ではどちらを選ぶか決まっているかもしれないが、それを口には一切出さず黙りである。
どちらを選ぶにせよ、その決断を口にするのは辛いのだろう。ガク先輩もそれを察してか、マホとペンヨウの答えは後回しにした。
「ワタカラくんとリュウくんはどうするかね。此方の世界に残るかい?」
「スリュウ」
「僕は義姉さんの判断に任せまス。義姉さんを守ると誓った以上、僕は何処までも義姉さんと一緒ですからネ」
「そうか」
リュウは元々、幹部時代もワタカラの為に行動していたのもあってか、この世界に残るか魔法世界に帰るかはワタカラの判断に任せるらしい。
「私とスリュウは魔法世界に帰って、旅をしようと思う。二度と私のような人間を生み出さない為に、そして私自身も罪滅ぼしも兼ねてな」
「そういう事なのデ、僕も魔法世界に行きまス」
「ならこの学校の生徒として、君に会うのも今日が最後のようだね」
…………そうか。寂しくなるな。
ここでふざけて「定期テスト近いのに逃げるのかぁ~」と茶化すのは簡単だ。ただ今はそれをするような雰囲気ではないので、俺は口を閉ざしてジッとする。
「ライヨウくん、フクヨウくん、クラヨウくんも魔法世界に戻るかい?」
「元々そのつもりライ」
「帰ったら国の復興フク。建物修理、国民を纏める、緊急時の対応変更、また同じ事が起こらないよう今回の出来事を周知……うぅ、帰りたくないフク」
大変だなフクヨウ。
ワニヨウが不在の間、王様としての仕事を代理でこなしていたフクヨウは妖精国に帰ってからやる事が溜まっているようだ。
まぁその大半は心配要らないだろうけど、妖精国の妖精に関する話は流石に知らない。取り敢えずアレだ、頑張れ!
「そんなに帰りたくないならフクヨウは此方に残るライ?」
「さすがにそれは駄目フク。上に立つ者としてちゃんと帰って国を復興させる必要があるフク」
「真面目ライね……クラヨウはどうするライ?」
「最初から帰るつもりクラ。緑の料理の腕がもっと成長する所を見届けたい気持ちはあるクラ。でもクラヨウ自身の店を放ってまで誰かを優先してたら、それはクラヨウの料理を楽しみにしてるお客さんに失礼クラ」
クラヨウも魔法世界に帰るのか。
今回のような───世界が滅びるような───場合は流石に解決するまで我慢するようだが、それが終わったならば、いくら弟子が居ようとも店を放置するような事は出来ないのは、料理人としてプライドなのだろう。
「ワニヨウくんはどうするかね。妖精国の王とは言えど、国を荒らしてしまっただろう。罪悪感で逃げたい気持ちはあるのだろうけれど、それでも帰るつもりはあるのかい?」
「最初から妖精国に帰るつもりワニ。ただそれは王としてではなく、国を荒らした罪人としてワニ」
「おい待てワニヨウ。それはお前のせいじゃないだろ? 元を辿れば全て邪神が」
「力男」
全て邪神が仕組んだ結果だ。だからお前は悪くない。
そう言葉を掛けようとしたが、言い切る前にワニヨウに続きを話そうとするのを静止される。
「これはワニャア自身が決めた決断ワニ。例え力男でもこれには口出しさせないワニ」
「でも……」
「これは妖精国の問題ワニ。二度も同じ事を言わせないでほしいワニ」
「…………分かったよ」
俺はバツの悪そうな顔をしてワニヨウの決断に渋々納得する。
ワニヨウ自身、あまり表には出してこなかったが王として自身の統治する国を荒らしたのを気に病んでいたのだろう。
なんとか説得したい気持ちはあるが、それを決めるのは被害を受けた妖精国だと言われたら俺はもう何も言えない。
ここで俺がどう説得しようが、庇おうが、ワニヨウの言う通り処遇を決めるのは、妖精国の妖精達だ。俺が横から口出し出来るようなスペースは無い。
「また遊べる機会があったら遊ぼうワニ。ワニャアのゲームスキルを見せてあげるワニ」
「お前と俺とじゃ、やり込み度に差が出て相手になんねーよ」
そんな俺の様子を見て、また会えたら遊ぼうと気を遣って約束を結んでくるワニヨウに俺は愛想笑いしか出来ないのであった。
マホは第63話で「もう少し(ワルインダー討伐までの間)だけ勇子達と一緒に居る」と宣言済みですが、実際に「じゃあ全て解決したから、魔法世界帰ろう」とは中々踏ん切りが付かない状態になってます。そもそもそんなサッパリと割り切れるような性格でもないですし。
【だいたいこんな感じの本編】
・空界が凄い世界を行き来してたから、世界と世界に繋がりが出来る
・邪神が魔法世界を襲いに来た。過去の妖精達が元気パワーに願い、世界とこ繋がりが広がり別世界から魔法少女の素質を持った人間を連れてくる。邪神封印。
・現代。繋がりが殆ど閉じた頃にマホとペンヨウが、ワルインダーの魔の手から助かるよう元気パワーに祈る。世界との繋がりが広がり勇子達の世界に来る。
・邪神消滅。元気パワーに元に戻るよう頼んだ結果、広がった繋がりも閉じる結果に。閉じたら魔法世界に行けない。
・繋がり出来たのは空界が原因だから、一応繋がりは生きてるけど世界を移動する程繋がりが深い訳じゃないから、もう魔法世界に行くのは難しいかなぁ……




