洗礼・後編
ゾルタンは面白そうに僕たちを眺めていた。
(みんなどうして毎回、こんな過酷な日々を乗り越えられるんだろう?)
壁の外の世界がこれほど過酷だなんて、僕には理解できなかった。
正午ごろ、ゾルタンが笛を吹き、休憩を知らせた。
広場の柵に、皆が崩れ落ちるようにもたれかかっていく。
僕たちは全員限界だった。
それとも、限界だったのは僕だけだったのかもしれない。
隊長が兵舎へ向かうと、少しして建物の横にある小さな木小屋から一人の女性が出てきた。
訓練後ずっと無口だったテオが、急に元気を取り戻した。
「見ろよ、ルス……」小屋を指差しながら、テオが囁く。
僕はその方向を振り向いた。
女性は湯気の立つ大きな袋を肩に担いで出てきた。
ローストポテトによく似た匂いが空気に広がり始めた。
美味しそうだった。
お腹が鳴るのを感じた。
「天使だ。誓ってもいい、いつかあの人と結婚して、一生楽させてやるんだ」 テオは彼女を見つめながら言った。
「プッ!」
思わず吹き出してしまった。
正直なところ、せめてもう少し腹にたまるものを食べられると思っていた。
(もしかして、本当にしっかり味付けされたローストポテトなのかな……?)
すでに口の中は唾液でいっぱいだった。
(でも、じゃあどうしてあの女性は、湯気がもうもうと出ている袋を持っているんだ?)
(味付けされたローストポテトはどこ!?)
女性は広場の反対側から順に、袋の中身を配り始めた。
彼女が近づいてきた時、僕の目は信じられないものを見た。
袋から取り出されていたのは、湯気を立てる赤くて細長いジャガイモだった。おまけに、皮さえ剥かれていなかった。
僕の番が来た時、僕は歯を食いしばった。
女性は微かに微笑み、僕にジャガイモを差し出した。
数秒間それを見つめた。
その匂いに惹きつけられ続けていたとはいえ、僕が期待していたものとは全く違った。
他の奴らを見回すと、皆、その瞬間だけは幸せそうに見えた。
僕は熱いジャガイモを胸に抱きしめた。
この凍えるような一日の中で、その温もりだけが唯一生きていると感じられるものであり、午前中のあの過酷な肉体疲労の後では、僕にとって単なる食べ物以上のものだった。
目を閉じた。
それは僕の努力の象徴であり、午前中を生き延びた証だった。
気づけば、頬を温かい涙が伝っていた。
テオが笑いながら、僕の肩を勢いよく叩いた。
「他の奴らにそんな姿は見せない方がいいと思うよ」
「ご、ごめん、ただ嬉しくて」
腕で顔をこすり、涙を拭った。
顔を上げると、顔の真ん中に巨大な傷跡がある少年が僕をじっと見つめているのに気づいた。
彼は柵の向こう側、僕の目の前にいた。
視線が交差した。
もしかしたら、僕に気づいたのはこれが初めてだったのかもしれない。
僕は何も考えず、思わず中途半端に手を挙げて挨拶をしてしまった。
彼がゆっくりと立ち上がり、鼻息を荒くし始めるのが見えた。
(ここの子供たちは本当に変だ)
(こっちに来るのかな? いや、気のせいかもしれない……せめて友好的であってほしいけど……)
僕はすぐに目を逸らした。わけも分からず相手を見つめて待っているような、気味の悪い奴だと思われたくなかったからだ。
もし彼が挨拶に来たのなら、せめていい印象を与えたかった。
僕は座り直し、ようやく何かが食べられると、まさにそのご褒美にかじりつこうとした瞬間、誰かが近づいてくるのに気づいた。
そして、一つの影が僕を完全に覆い隠した。
「それ、よこせよ。『お姫様』」と、僕への嫌味な呼び名を強調するように、地を這うような声で吐き捨てた。
「え?」
顔を上げた。
信じられなかった。
視線が交差した。
彼は本当に僕のところへやって来たのだ。
「てめぇ、耳が聞こえねぇのか?」
僕は気力を振り絞ろうとした。
左右を確認した。もしかしたら僕に用があるわけじゃないのかもしれない。
だが、近くには誰もいなかった。
テオはいたが、背を向けて食べていた。
喉の奥が詰まった。
「聞こえねぇフリをするってか、あ?」
「え、えっ――」話そうとしたが、すぐに遮られた。
「聞こえねぇフリをするってか、あ!?」
僕は不器用な笑みを浮かべようとした。
(どういう意味? 分からな――)
状況を理解する暇もなかった。
次の瞬間、背後の柵に激しい蹴りが叩き込まれ、僕の頭が木枠に激突した。
その衝撃で頭を板に打ち付けられ、僕は横に倒れ込んだ。
(なんだ……どうしてこんなことに? 僕が君に何をしたっていうんだ?)
手にしていたジャガイモが横を転がっていくのが見えた。
もう土で汚れてしまっていた。
理由は分からないが、どうしてもそれを強く握りしめておきたかった。
周りについた汚れには嫌悪感を覚えたが、それは僕の報酬であり、何時間も苦労して手に入れたものだったのだ。
(くそっ……)
テオの声が聞こえた。
僕は背を向けて地面に倒れたままで、できることといえば、あのジャガイモを取り戻そうと手を伸ばすことだけだった。
「……」
「ふざけんな、なんでだ?」
「ぐっ!」
横で鈍い音がした。
テオが弾き飛ばされたのだ。
その直後、誰かが僕の髪を掴み、勢いよく引きずり起こした。
「がっ!」
(どうして?)
「離し……ああっ!」
その少年は僕の手からジャガイモをひったくり、僕を地面に投げ捨てた。
僕は無力なまま、泥の中にうずくまった。
視線の先には、腹を抱えて地面をのたうち回るテオの姿があった。
「テ――」彼を呼ぼうとしたが、言葉にならなかった。
「チッ、手間かけさせやがって。落としたじゃねぇか」
彼がそれを二口で平らげるのを見つめながら、僕の胃は鈍い痛みに収縮した。
それは、僕の内側を食い尽くす敗北感とほぼ同じくらいの痛みだった。
(やめて……)
手から血が滲むほど、土と砂利を強く握りしめた。
(どうして誰も何もしないんだ?)
柵の周りにいる他の奴らは、すでにこの状況に慣れきっているかのように無反応だった。
大半はうつむいたままか、ただ目を逸らしていた。
今朝話しかけようとした少年の姿も目に入ったが、彼は隣の誰かと話しながら笑っていた。
(どうして……僕はこんなに弱いんだ?)
あんな惨めな報酬さえ守り抜くことができなかった。
(どうして一言も言い返せなかったんだ?)
その思いが僕を激しく揺さぶった。
「本当に弱ぇな、てめぇは」
僕は目を見開き、必死に涙をこらえた。
(弱い。ああ、そうだ。もし僕が……)
泥の中で身を縮め、膝を胸に抱え込んだ。
腕の中に顔を埋め、ただ戻りたいと願いながらそこに留まった。
(どうして……?)
腹部に衝撃が突き刺さった。
僕はたまらず体をくの字に曲げて喘いだが、息を整える前に次の衝撃が襲ってきた。
さらに、もう一発。
僕は歯を食いしばった。
「没落貴族が来るってみんな言ってたぜ……どうやら追い出されて正解だったみたいだな」
次第に音が歪み、視界がぼやけていくのを感じた。
(ヒルダ……ごめん)
「……いい加減にしろよ! やりすぎだ!」
「あ? この友達を……守るってか……で、具体的にどうすんだよ?」
(どうして僕にこんなことをするんだ? 僕は……)
少年の手が再び僕の髪を力任せに掴んだ。
僕の足が、下にある砂利の上を引きずられるのを感じた。
腹部に蹴りが入り、今度は胆汁と少しの血を飲み込んでしまった。
(もし僕に……魔力さえあれば……)
まぶたが重くなるのを感じた。
(……今頃、まだ宮殿にいられたかもしれないのに)
そして、意識が途切れた。
腕から突然、熱が放たれた。
僕は勢いよく目を開け、瞬時に意識を取り戻した。
「……誓って言う! やめないなら俺が!……俺が!」
(テオ?)
「俺がぁ? てめぇみたいな弱虫に何ができるってんだよ」
震える目を少しだけ上げると、テオが見えた。
周囲の風景と同じように彼の姿もぼやけていたが、金髪で彼だと分かった。
「テ、テオ……大丈……」
その瞬間、見えた。いや、感じ取った。
微かな圧力がテオから発せられていた。
彼の顔はほとんど真っ赤になっていた。
彼の周囲に細い風が巻き起こり、地面の小石を浮かび上がらせていた。
(この風は……)
それはほんの一瞬、ヒルダが虚空に消える時にいつも感じていた風と同じものだった。
(馬鹿……やめろ……そんなことしたら……君がやられちゃうよ)
「テ、テオ……もう、いいから……」
テオの手元では、驚くべき速さで土が寄り集まり、大きくなっていた。
「ど、どけ、ルティアン!」目に涙を浮かべたテオが、突然叫んだ。
その低くドスの利いた声を聞いた瞬間、僕は正気を取り戻し、状況を理解した。
理由は分からないが、とにかく退かなければ、何が何でもそこから離れなければならないと本能が告げていた。
あいつから何とかして逃れようともがいたが、うまくいかず、僕は相手の腕に噛みついた。
血の味が口に広がるほど強く噛みついた。
突然あいつが手を離し、僕はテオの方を振り向いた。
(僕たちを殺す気か!? 馬鹿なの!?)
「ど、どけ!」
すぐにその少年を見たが、僕の言葉を聞いている様子はなく、テオの方を、目を見開いたまま見つめて固まっていた。
その瞬間、空気を切り裂くような乾いた鈍い音が聞こえた。
僕はあいつを突き飛ばし、すぐに後ろへ下がった。
猛烈な風圧が目の前を通り過ぎ、僕は数メートル先まで吹き飛ばされた。乾いた土や葉と一緒に地面へ叩きつけられた。
数秒間、耳鳴りがした。
僕は横を向き、咳き込みながら土と血を吐き出した。
「ごめん、ルス! ごめん、怪我してない!?」
テオが駆け寄ってきて、僕が立ち上がるのを手伝ってくれた。
顔を上げると、広場の半分を覆うほどの土埃が舞い上がり、ほとんど何も見えなかった。
(何が起きたんだ? あれは魔法だったのか?)
僕は冷や汗を流しながら石のように固まり、テオを見つめた。
「お前、馬鹿なのか!?」その言葉は、自分でも驚くほど自然に口を突いて出た。
土埃の壁が晴れていく中、数メートル先にうずくまっている人影が見えた。
そこにいた全員が、多かれ少なかれ目を丸くして柵に張り付いていた。
テオが僕の肩を掴み、揺さぶった。
「おい! 大丈夫だよね? ねえ、ルス! どこも怪我してないよね!?」
「僕たちを殺す気だったの!?」
「ごめん、どうやって止めればいいか分からなくて……これしか思いつかなかったんだ」
「もう少し右か左にズレてたら、僕らのどっちかが大怪我してたかもしれないんだよ!」
「え?」
「でも、そうならなかっただろ! ああいう魔法を制御するのって、すっげぇ魔力を使うんだからな!」
「でも、今は無事なんだし、それが一番大事だろ?」彼は笑いながら僕を見た。
(どうして!?)
テオの軽口に気を取られ、僕は勢いよく振り返った。
土埃はすっかり収まり、地面にいるもう一人の少年が目に涙を浮かべながら僕に話しかけようとしているのに気づいた。
(その顔……全部、お前のせいだ。お前さえ……)
やがて彼が腕で顔を拭いながら立ち上がり、僕を見た。
「なんで俺を助けたんだよ?」と彼は呟いた。
口の中に広がる血の鉄の味と、息をするたびに軋む肋骨を感じながら、僕は少しの間彼を見つめ返した。
気の利いた答えなんて持っていなかった。
僕の頭の中に、高尚な正義感があったわけでもない。
ただ、そうしただけだ。
何かを言いかける前に、鋭い笛の音が広場をつんざいた。
「お遊びは終わりだ、ウジ虫ども! 立て!」
遠くから、だが容赦のないゾルタンの声が轟いた。
傷跡の少年はビクッと肩を跳ねさせると、僕の視線を避けて背を向け、フラフラと整列しようとしている他の奴らの中に紛れ込んで消えた。
「ルス、怪我してる? 動ける?」テオが僕のそばに駆け寄ってきた。
恐怖で目を丸くし、声を震わせている。
彼はタコのできた汚れた手を差し伸べてきた。
「うん……多分、大丈夫」僕は嘘をついた。
彼の手を取って起き上がろうとしたが、すぐに膝の力が抜けた。
テオが腕を支えてくれていなかったら、そのまま顔から地面に突っ込んでいただろう。
「ほら、これあげる! あ、でもすぐに食べちゃダメだよ! 蹴られて胃が痛いだろうからさ」
彼はポケットから小さな包みを取り出し、急いでその布を開くと、まだ湯気の立つ半分のジャガイモが現れた。
彼はそれを僕のポケットに押し込んだ。
そして、笑顔で僕を見た。
「どうして……よく知りもしない相手に、こんなことができるの?」
その瞬間、僕は涙を堪えることができなかった。
「君だって同じことをしたはずだよ、絶対にね!」
「……」
「クソガキ! テオ、どこにいる!?」
広場の向こう側から、耳をつんざくようなゾルタンの怒声が飛んできた。
「おっと! あとは一人で続けられる?」
僕は数秒間、テオを見つめた。
彼の顔には恐怖と焦りの色が広がっていた。
まるで、たった今起きたことなど何もなかったかのように。
僕は辛うじて微笑んだ。
彼は僕を優しくその場に立たせると、驚くべき速さで走り去っていった。
一歩踏み出すごとに胃に痙攣が走ったが、少しずつ回復し始めていた。
不思議なことに、僕は彼を恨む気にはなれなかった。
背中を丸めて遠ざかっていくあの少年を見ながら、僕は不快な予感を覚えていた。
彼の地獄は、僕の地獄よりもずっと前から始まっていたのだと感じた。
あの騒ぎの後、残りの時間は、息の詰まるような訓練の連続だった。
傷跡のある少年はずっと距離を置いていたが、時折僕を盗み見ているのに気づいた。
外の世界は何も許してはくれない。
生き延びるための代償がどれほど高いものか、僕は理解し始めたばかりだった。




