合同演習・前編
三日目の朝、僕の体にはまだ鈍い痛みが残っていた。
ベッドから起き上がろうとした瞬間、両足に鋭い痛みが走り、数秒間そのまま固まってしまった。奥歯を噛み締め、それでも無理やり立ち上がった。僕に選べる道などなかったのだ。
午後になって訓練が再開されると、痛みに慣れる時間すら与えられなかった。ランジ、回避、殴打、そして転倒が息つく間もなく繰り返された。
こんな経験は今まで一度もしたことがなく、最初の数日間はただの地獄だった。
五日目の夜、飼い葉桶を掃除していると、厩舎の板の隙間からかすかな月明かりが差し込んできた。腕で額の汗を拭おうとして、何気なく自分の両手へと視線を落とした。
僕はその場で動きを止めた。
指先は腫れ上がり、潰れた水ぶくれと黒ずんだかさぶたで覆い尽くされていた。
拳を握ろうとしたが、指全体に激痛が走り、すぐに手を開いてしまった。
(どうやって……こんな状態のまま続けろっていうんだ?)
もう一度、その手を見つめた。だが、いつかヒルダと再会できるかもしれないという思いは、あまりにも強かった。僕の心の奥底で、何かがすでに覚悟を決めていたのだ。
(もし体がこの生活に慣れてくれれば、もっと耐えられるようになるかもしれない)
(……それとも、ただ醜い手になっていくだけなのかな)
僕はため息をついた。どちらにせよ、やり続ける以外の選択肢はなかった。
目を閉じると、不意にある光景が脳裏をよぎった。
同じように過酷な労働で傷ついていたヒルダの手が、銀の洗面器にラベンダーの香る温かい湯を注いでいる。その前に座っていた僕は、指先にインクがついたくらいで文句を言っていた。
あの頃は、そんな些細なことさえ一大事のように思えていたのだ。
目を開け、再び自分の手を見た。
綺麗な手でいられることが、どれほど当たり前だったのかなんて、一度も考えたことがなかった。
石鹸の良い香り、滑らかな肌、いつも当たり前だと思い込んでいたあの清潔感……。
今となっては、そのすべてが消え失せていた。僕はゆっくりと手を下ろした。
ヒルダは、これを毎日やってくれていたのだ。
初めて、彼女の仕事がどれほど骨の折れるものだったのかを思い知った。
(ごめんなさい……)
それから、四週間が過ぎ去った。
僕の体は以前より細くなり、日を追うごとに筋肉が硬くなっていくのを感じた。何週間も付きまとってきた痛みが消えたわけではなかったが、確実に変化が現れていた。少しずつ力がつき、毎朝感じていた鉛のような重だるさも、今ではほとんど消え失せていた。
朝の角笛が鳴り響き、僕はいつもの過酷な一日に備えて支度を整えた。夜明けの凍てつく寒さの中、僕たちは広場の中央に整列し、隊長の怒号が轟くのを待った。
だが、広場は異様な沈黙に包まれたままだった。
ゾルタンが……初めて姿を現さなかったのだ。
僕は息を詰め、それからかすかに安堵の息を漏らした。
広場の柵の向こうに目を凝らした。普段なら兵士や訓練生でいっぱいの敷地が、完全に空っぽだった。
(今日は休みをくれるのかな? もしかしたら……訓練も少し軽くなるかも……)
隣にいるテオにそう言おうと顔を向けたが、喉の奥で言葉が詰まった。
テオは笑っていなかった。周囲の者たちがざわめく中、彼は一人、頭を抱え込んでいた。こめかみを強く締め付け、その力で指の関節が真っ白になるほどだった。小刻みに足踏みを繰り返しながら、激しいパニックに駆られたように早口でブツブツと呟いている。
「まずい……いや、いや、いや……頼む、今日だけは……」
「テオ? どうしたの?」僕は眉をひそめ、小声で尋ねた。
「何か問題でもあるの? ゾルタンはいないのに」
「それが問題なんだよ!」テオは僕の方へ勢いよく顔を向け、低く吐き捨てるように言った。
「誰かから聞いたことはあったけど、ま、まさか……こんなに早く来るなんて。今日……」
「今日?」僕は怪訝な顔で聞き返した。
「……正規の訓練生たちとの、合同演習なんだ」
僕の胃が、本能的にギュッと縮み上がった。
「演習……正規の訓練生?」
テオが答えを返す前に、広場の大門が勢いよく押し開かれた。
姿を現したのは、傷一つないほど磨き上げられた鋼鉄の甲冑、朝の鈍い光を跳ね返す白銀の鋼鉄甲冑に身を包んだ背の高い男だった。羽織っている深い青のマントには、汚れどころか折り目一つついていない。
足の運び方を見ただけで、すぐに分かった。
(貴族だ)
その男は、僕たちから数メートルも離れた場所で足を止めた。
視線は僕たちの頭上を通り過ぎ、決して目を合わせようとはしなかった。整った細身の顔には、露骨な嫌悪感が張り付いている。
(ここの教官なのかな? でも……よく見たら、父上に媚びへつらっているゴマすり野郎たちと瓜二つだ)
最前列にいた少年の一人が一歩前に出ると、咳払いをした。
「あの……本日の指示を――」
「下がれ、ゴミめが! この真新しい鎧が汚れるだろうが!」
甲高い男の声が、少年の言葉を遮った。
(教官……だと!?)
男は手袋をはめた手を鼻先に当て、本能的に一歩後ずさりした。
「近づくんじゃない、距離を保て! 他の貴様らもだ!」
重苦しい沈黙が広場を支配した。
僕たちの吐く息の気配すら拒絶するその男を、僕は冷ややかに見つめた。
一ヶ月前の僕なら、あるいは彼の気持ちが理解できたかもしれない。同じような軽蔑を抱いていたかもしれない。
だが今、柵のこちら側からその姿を見つめる僕の胸に湧き上がってきたのは、苦々しい怒りだけだった。
その教官は、午前中ずっと僕たちに近づこうとはしなかった。
安全な距離を保ったまま、冷淡で事務的な命令を下し続け、自分自身が僕たちと直接関わらずに済むように、ひたすら終わりの見えない腕立て伏せと土の上でのダッシュを強要した。
そして正午を迎えた時、唐突に、裏門の重厚な木板がきしむ音を立てた。
ゾルタンが、ゆっくりとした足取りで広場へと入ってきた。
だが、今回は一人ではなかった。
彼の背後から、誇らしげな足取りで、美しく磨き抜かれた訓練用甲冑をまとった二人の人影が進み出てきた。
僕が、嫌というほどよく知っている二人だった。
ロワンと、ダリアン。




