来たるべき明日へ
(いよいよか……)
僕は部屋の中を注意深く見回した。読み終えて、その辺に置いていた本はすべて消えていた。クローゼットを開けてみたが、そこにもほとんど何も残っていなかった。服も靴も、すべて持ち去られていた。部屋は事実上、空っぽだった。せめて着替えの数着くらいは持っていけるだろうと考えていたが、どうやらそれすらも許されなかったようだ。
これで本当に決まったんだ。僕はもう、ここにはいられない。
ドアの向こうから足音が聞こえた。
「これからは、もうお世話をして差し上げられません。ゾルタンの言うことに従うのですよ。根は良い人ですから」
ヒルダはドアの向こう側に留まっていた。ドアの下の隙間から漏れる彼女の影だけが見えた。
「いつか……もし坊ちゃんが立派な人になったなら、またお会いできるかもしれません……」
僕はうつむき、返す言葉を見つけられなかった。ドアの向こうで、彼女の気配がゆっくりと遠ざかっていくのを感じた。
(ヒルダ……行かないで。もう二度と、置いていかないでよ)
僕は床を見つめたまま、動けずにいた。
追いかけて、泣き叫んで、せめて最後にもう一度だけ抱きしめたかった。でも、もしそうしてしまったら、自分を待ち受けている現実を受け入れられなくなることが分かっていた。爪が手のひらに食い込むほど強く拳を握りしめ、ゆっくりと息を吸い込んでから窓へと近づいた。
中庭と内壁の向こうには、城塞都市ティアが広がり、馬車が絶え間なく行き交っていた。さらに遠く、建物の向こうに訓練場がうっすらと見えた。僕はしばらくの間、そこをじっと見つめた。
(あそこには何が待ち受けているんだろう。新しい何かの始まりかもしれないし……あるいは、苦難の始まりかもしれない)
(でも、じゃあどうしてヒルダは僕に生き延びろと言ったの? あの外で、僕に何を見つけることを期待していたんだろう?)
準備するための時間がもっと欲しかったが、僕に選ぶ権利はなかった。突然、頭に軽い痛みが走った。一瞬、意識を失う直前のあの夜の記憶が脳裏をよぎった。
(あの空白……あれは何だったんだ? どうして六日間も意識を失っていたんだろう?)
僕は頭を抱え、床にうずくまった。
「ああっ! 六日間! まるまる六日間も! くそっ……」
視線がドアに落ち、取っ手が壊れているのに気づいた。僕は目を見開き、少しだけ微笑んだ。
(本当に、心配ばかりかけちゃったね)
「ヒルダ……ありがとう」
胸に手を当てながら、僕は囁いた。
数分後、重いブーツの音が廊下に響き、僕の部屋の前で止まった。鍵が開く音がした。二人の護衛が入ってきて、僕に対する最低限の敬意すら払うことなく、敷居のところで立ち止まった。
「ルティアン・アイゼンハルト。今日以降、シュタール家からの命令がない限り、シュタール家との直接的な接触を一切禁ずる。したがって、外壁の外にある下層区へ移送する。そこでお前の新しい生活が待っている」
僕は粗い布の包みを掴み、小脇に抱え、もう片方の手で腕輪に触れた。自分の部屋を振り返ることはせず、ヒルダの部屋を最後にもう一度だけ見た。ドアは開いていた。
二人の護衛は道中、一言も発しなかった。西棟の石造りの長い廊下を抜け、階段を下り、使用人の中庭へと続く裏口へと僕を連行した。今まで見たこともない入り口だった。階段や応接室を通る通常の経路をすべてすっ飛ばし、直接一階に出る作りになっていた。
そこで僕を待っていたのは、二頭のたくましい馬に引かれた木製の馬車だった。手綱を握っていたのは、豊かな灰色の髭を蓄え、深い皺が温厚な雰囲気を醸し出している年老いた男だった。
「どうぞ、ルティアン坊ちゃん。お乗りください」
彼は優しい身振りで荷台を指し示し、そう言った。
彼が僕の名前を呼び、おまけに敬称までつけてくれたことに、僕は戸惑いから目を細めた。粗削りな木の板によじ登り、包みを胸に強く抱きしめた。馬車がガタッと揺れ、本邸と外の世界を隔てる巨大な鉄の門に向かってゆっくりと動き始めた。
この場所を離れたくなかったが、アーチをくぐる直前、急に胃を掴まれるような喪失感に襲われ、本能的に自分が生まれた宮殿の高い尖塔へと振り返った。視線が下層のバルコニーのファサードを滑り落ちた。手すりから身を乗り出している人影があった。この距離からでも、それが誰だか分かった。
ヒルダだった。彼女が顔に手を当てたその瞬間、朝の陽光が彼女の姿を照らし、彼女が背を向ける前に何かがキラリと光った。僕は目を見開いた。手首の腕輪を見て、それを強く握りしめた。息が詰まるほど胸が痛んだが、僕は泣かないと決めた。
「僕ならやれる」
自分自身に言い聞かせるように囁いた。
馬車が門を抜けると、宮殿は僕の背後へと消えていった。その時、僕の意識は、今まで見たこともない世界へと引き込まれた。あのアーチの外に出たことなど、一度もなかったのだ。
目の前には土埃の舞う入り組んだ道が広がり、漆喰塗りの壁とむき出しの木梁、傾斜した屋根を持つ多層階の家々が所狭しと並んでいた。家々の間には無数の路地が走り、絶え間なく人々が行き交っていた。
だが、この場所の本当の中心は市場の広場だった。未知の強烈な匂いが、波のように僕を襲った。焼きたてのパンの香り、屋台に山積みされた野菜の匂い、湿った土の匂い、そして僕には判別できない様々な匂いが空気に混ざり合っていた。
この新しい世界に夢中になるあまり、老人が僕を見つめていることに気づかなかった。
「こうした外の世界をご覧になるのは初めてでしょう、坊ちゃん?」
人混みを避けるために馬の歩みを緩めながら、老人が尋ねてきた。
「少し圧倒されておられるようですね。何か特に気になるものでも?」
僕は彼の方を向き、数秒間黙っていた。
「おお! 申し訳ありません、無作法をお許しください。私のことはセバスとお呼びください」
セバス……。僕はひしめき合う家々に視線を走らせ、数週間前に読んだ本の内容を思い出した。新しい防衛建築に関する本だ。
「セバスさん、ここの守りが……」
僕は考え込みながら呟いた。
「うん……それに、危険にさらされる可能性も」
セバスは灰色の眉をひそめた。
「はい?」
「防衛設備のことです。不十分すぎます」
僕は外壁を指さした。
「もしあそこから魔物が攻めてきたら、この家々が真っ先に倒壊します」
セバスの優しい笑顔が凍りついた。彼は目を細め、黙って僕を観察した。手綱を握る彼の指に力が入った。
「オッホッホ」
やがて彼は、先ほどとは違う声色で笑い声を漏らした。
「鋭い指摘です……坊ちゃんのお年を考えれば、あまりにも鋭すぎる。ええと、何と言いますか、平民たちは石の壁が本当の防衛線ではないことをよく理解しているのです。彼らの安全は、この町の向こうで訓練を積んでいる新兵たちにかかっているのです。彼らは、いざという時に自分たちの『家』と呼ぶものを守るために、盾となって立ち塞がってくれる者たちを信じているのです」
弱者に同情する者などいない。それが残酷な現実であり、まさにそのために僕は見捨てられたのだ。
(じゃあ、どうしてここは違って見えるんだろう?)
あの平民たちの顔は、皆幸せそうに見えた。
(理解できない)
「他の誰かに頼って生きて、いつ襲われるか分からないのに……本当にそんな生き方を受け入れているんですか? 他人の意思一つで終わってしまうような人生の、どこがいいんですか?」
(違う……そこが問題なんだ。その恐怖を抱えているからこそ、彼らはこんな風に生きることができるんだ)
一瞬、セバスは僕の方を向き、わずかに眉を上げた。それから微笑んだ。
「それがこの世界の仕組みだからですよ、坊ちゃん」
彼は少し間を置いた。
「誰もが自分の身を自分で守れる力を持っているわけではありません。それでも、彼らは生き続けます。働き、食べ、恋をして……子を育てるのです」
彼はためらうように言葉を継いだ。
「もしかすると……すべてを自分の力で思い通りにできないと分かっているからこそ、他人を信じることを学ぶのかもしれませんね」
僕は黙り込んだ。セバスは再び前方の道へと視線を戻した。
「あのような質問をされたのは、初めてですよ」
馬車は進み続け、家並みの最後を通り過ぎた。その時、セバスが咳払いをし、一段低い声で話し始めた。
「これからの数日間は、どうかくれぐれもご注意ください、坊ちゃん。あなたは並外れて賢い方ですが、下層区では知恵だけでは通用しません。騎士団の団長は、誰に対しても容赦しない、鋼鉄のような男です」
「覚えておきます」
僕は包みの布を握りしめながら答えた。
「もし、万が一……厄介な状況に陥った時は」
セバスは誰も聞いていないことを確認するように辺りを見回し、付け加えた。
「カエルという男を探してください。その辺りをうろついているか、厩舎の近くで隠れて休んでいることが多いはずです」
「教官ですか?」
僕は眉をひそめて尋ねた。
「あの男が? とんでもない!」
セバスは首を振り、あきれたようにため息をついた。
「あいつは天下一品の怠け者です。寝てばかりで、他人の仕事に便乗してばかりの穀潰しですよ。ならず者、それが奴の正体です」
老人は肩を揺らして声に出して笑った。だが、その目に一瞬、鋭い真剣さが宿った。
「ですが、信じてください」
最後に彼は、まっすぐ前を見たまま囁いた。
「あの男は、どうすれば生き延びられるかを知っているのです」
僕はそれ以上何も聞かなかったが、その名前を心に刻み込んだ。
カエル。
しばらくして、人混みに溢れた通りから、いくつもの小道が通る小さな畑の広がる地帯へと出た。初めて外壁を間近で見ることができた。果てしなく広がる空き地の端で、馬車が止まった。
左手の遠くには、背の低い建物が延々と連なり、そこから戦用の獣と呼ぶにふさわしい、巨大な馬たちが顔を覗かせていた。右手には、広い中庭に囲まれた本棟がそびえ立っていた。その背後にある訓練場には、少年たちが群がっていた。僕と同じくらいの年か、少し年上に見えた。
「到着です。彼らは皆、騎士や下級貴族の息子たちで、特別な訓練のためにここに送られてきたのですよ、坊ちゃん」
老人は荷台から僕が降りるのを手伝うために御者席から降りながら説明した。
「セバス、あれは何?」
彼はちらりと横目で見た。
「見たことがない」
僕は建物を指さした。セバスは短く笑い声を漏らした。
「これはただの兵舎です。周りに見える他の建物が、新兵たちの宿舎になります」
その後、セバスは帽子を直し、深く頭を下げた。
「私たちの旅はここでおしまいです。ですが、一つだけ言わせてください」
「坊ちゃんは本当に大人びておられる。宮殿の悪党どもが噂しているようなお方とは、まるで違います」
彼は言った。
「いつかまた、お会いできることを願っております」
「今までありがとう、セバス」
僕は彼の目をまっすぐ見て答えた。
男は御者席に戻り、手綱を鳴らして遠ざかっていった。僕は中庭の端に一人取り残された。辺りを見回す暇すらなく、巨大な影が僕の視界を覆い尽くした。
勢いよく振り返った。岩のようにがっしりとした体つきの、見上げるほど巨大な男が僕を見下ろしていた。僕は生唾を飲み込んだ。年季の入った深緑色の重厚な上着と、黒いマントを羽織っていた。顔と首に刻まれた無数の傷跡が目に入った。悪寒が走り、僕は肩をすくめた。
「アイゼンハルト」
男が雷鳴のように怒鳴った。
「は、はい!」
体が震え、僕は思わず飛び上がった。
「俺は紅蓮騎士団団長、ゾルタンだ。今日からてめぇは、自分の力で生きていかなきゃならねぇ」
「は、はい!?」
(それだけ?)
彼の目を見ようとしたが、できなかった。男は訳の分からない唸り声を上げ、中庭の方へ振り返った。
「テオ! さっさとそのクソ足を動かせ!」
少年たちの列から人影が飛び出してきた。僕より少し年上で、金色のボサボサ髪と、生き生きとした表情を持つ少年だった。彼はこちらへ走ってくると、巨大な教官の前に気を付けの姿勢で立ち、明らかにぎこちない敬礼をした。
「新兵を宿舎に連れて行け。てめぇの寝床がどこか教えてやれ」
ゾルタンはそう命じると、背を向け、背後の訓練場に向かって大股で歩き去っていった。テオは僕を頭からつま先まで値踏みするように見た。そして、驚いたことに、太陽のような笑顔を向けた。
「よろしく! 僕はテオだ」
土埃と汗にまみれた手を差し出しながら、彼は言った。
「君が新入りだね? おいで、案内するよ」
僕は一瞬、彼の手を見つめた。小さな切り傷が無数にあり、肌は荒れてひび割れていた。握るべきか、それとも一歩下がるべきか分からなかった。
「ル、ルティアン」
僕も手を伸ばそうとしたが、ためらった。テオは構わず僕の手を掴み、力任せに握りしめ、自分の方へと引き寄せた。
(えっ!?)
「ま、待って……」
僕はあやうく彼にぶつかりそうになり、バランスを崩した。信じられないほどの力だった。
(どうしてこんなに力があるんだ? そんなに大柄でもないのに……)
僕は一瞬言葉を失った。手のひらに、分厚くザラザラとしたタコの感触が伝わってきた。
(ここでは礼儀作法なんて……何の役にも立たないみたいだ)
僕はため息をついた。
左手にある宿舎の列に向かって歩きながら、テオは立て続けに話し始め、交代制の仕組みや水の汲み場所を説明してくれた。彼を見れば見るほど、何かが僕を惹きつけた。その新しいやり方や、新しい振る舞いを受け入れるように背中を押されているようだった。だが、何かが引っかかっていた。僕はただ頷きながら、一定の距離を保っていた。
(僕はついさっき勘当されて、非情な軍事キャンプに放り込まれたばかりだっていうのに、僕の最初の仲間は、まるで遊び場にでもいるみたいに振る舞っているのか?)
「ねえ、それはそうと……」
重い木製のドアを開ける直前、テオは少し立ち止まり、急に真顔になった。
「ゾルタンは本気だよ。明日から君も始まるからね。起床はぴったり五時、太陽が昇る前だ。まあ、嫌でも目が覚めると思うけどね!」
僕は不意を突かれ、目を見開いた。
「ご、五時!? どういう――」
「そう。それに、友達としての忠告だけど、角笛が鳴ったら一秒たりとも遅れちゃだめだ」
テオは声を潜め、背後を気にしながら付け加えた。
「じゃないと、一日中飯抜きになる。信じてよ、僕らがやってる訓練じゃ、飯抜きで夜まで生き残るなんて無理だからね」
僕は生唾を飲み込んだ。直後、彼がドアを押し開け、宿舎の内部が姿を現した。
殺風景で凍えるように冷たい部屋だった。壁沿いに八つの木製ベッドが並び、薄い麦わら布団が敷かれていて、男たちの汗と淀んだ空気の匂いが充満していた。
僕は一歩前へ踏み出した。背後で、ドアがドスンという音を立てて閉まった。僕の古い人生は、もはやドアの向こう側だった。




