虚無の色・後編
テストはすでに始まっていた。
呼ばれた子供たちが一人、また一人と列から離れていく。彼らはおぼつかない足取りとこわばった肩で進み、絹布の前に着くと、手を乗せる前にためらった。
僕のいる場所からでも、布の上で彼らの指が震えているのがかろうじて分かった。目を閉じて唇を噛み締める者もいれば、ただじっと動かずに待つ者もいた。
そして、絹布が変化し始めた。
ほんの少し触れただけで青く染まることもあれば、うっすらとした赤みを帯びるだけのこともあった。
どんな結果が出ても、父上は完全に無表情のままだった。
彼の目を見つめれば見つめるほど、それは出席者たちの頭越しに遠くを見つめる、真の関心など微塵も感じさせない二つの黒い石のように見えた。
気づいた時には、列はすでに半分に減っていた。
ふさわしいと認められた者は家族に迎えられ、特別な許可を得て公爵に挨拶をし、足早に宮殿を後にした。
僕は列の最後尾だった。両手を握りしめ、磨かれた床に視線を固定した。
(もうすぐ僕の番だ)
僕は深呼吸をして、一瞬だけ目を閉じた。
兄弟たちはこういう時に、いつも決まった言葉を繰り返していた。すっかり覚えてしまうくらいに。冗談で言うこともあったけど、本気で励ましてくれることもあった。
(僕はアイゼンハルトだ。僕の血は力だ)
背筋に悪寒が走るのを感じた。
(効いた!)
僕は一瞬だけ微笑んだ。
「ルティアン」
シラードが呼んだ。
僕はビクッと肩を揺らし、目を開けた。
逆効果だった。
その言葉の後、不自然なほどの静寂が訪れた。動こうとしたが、ほんの数秒間、僕は金縛りに遭ったように動けなくなった。
観覧席の貴族たちのざわめきは、狂ったスズメバチの群れのように激しくなった。すべての視線が僕に集中していた。
僕は深呼吸をして列から離れ、テーブルに近づいた。
お香の煙が喉を刺激し、吐き気を催させた。革靴の薄い底を通して、石の刺すような冷たさが伝わってきた。
シラードに見つめられている時間が、永遠のように思えた。
僕はできるだけ自然に振る舞おうとし、玉座へと視線を上げた。父上の方へ。
彼の暗い瞳と視線が交差した。
僕は頭を下げた。正しい作法でお辞儀ができていると確信していた。
しかし、腰を曲げ始めた途端、何かがおかしかった。思った以上に動きがぎこちなくなり、一瞬バランスを崩してしまった。
「ぼ、僕はルティアン・シュタール・アイゼンハルトです」
僕は息を吐いた。
貴族たちのざわめきが甲高くなり、嘲笑の色を帯びた。
王国で最も誉れ高き一族の血を引く者として、ふさわしくない、あまりにも惨めな姿を晒してしまったことを自覚していた。
気を取り直そうとしながら、最後にもう一度父上を一瞥した。
彼は氷の彫像だった。
「握れ」
シラードの命令が空気を切り裂き、すべての囁きを圧殺した。
僕はヴェールの上に手を置いた。
授業で彼が繰り返していた言葉が頭をよぎった。
『胸から腕を通って、手のひらから外へ押し出される熱を想像するのだ』
僕は目を閉じ、どうにかしてその熱を見つけようとした。
数秒が過ぎた。
何もない。
喉の奥の詰まりと、呼吸まで締め付ける胃の痙攣しか感じなかった。
(どうして何も感じないの!?)
他の子たちは数秒触れただけで、すぐに反応していたのに。
僕は慌てて二度目を試みた。肺いっぱいに息を吸い込み、ありったけの力で息を下へと押し込んだ。
だが、またしても、手のひらの下には何も流れる気配はなかった。
額に汗の雫が流れ落ちるのを感じ始めた。ヴェールは冷たく、何の反応もない。
何もないという感覚が手首から這い上がり、僕をぞっとさせた。
僕は布を握りしめた。
待った。
何も起こらなかった。
「どうして……?」
その言葉が、かすれた囁きとなって僕の唇から漏れた。
パニックが胃の壁を引っ掻き始めた。
(もっと頑張らないと)
僕は関節が白くなるまで、前腕の腱が引っ張られるのを感じるまで、絹の布地に力一杯指を食い込ませた。
ヴェールには何の反応もない。
月の広間全体が、僕の頭上で炎が爆ぜる音しか聞こえないほどに静まり返った。
白など、想定されていなかった。
聞こえてきたのは、死骸にたかるハエの羽音に似た、病的な嘲笑だった。
「白……?」
「あり得ない……反応していないぞ」
「ヴェールが……しかし彼はヴォルガス公爵の嫡出子……」
僕はすがるように叔父を見つめ、無言で説明を求めた。
彼は目を閉じ、僕の視線を避けるように横を向いた。
(嫌だ……)
パニックに陥りながら、辺りを見回すと、ゆっくりと、焼け付くような涙が目を刺し始めた。
観覧席から数十の顔が僕を見下ろしていた。全員が同じ、純粋で揺るぎない軽蔑の表情を浮かべていた。
貴族たちの間から、軽くて微かな笑い声が聞こえたのはその時だった。
視界の端に、ふくよかな男が指の後ろに笑みを隠しているのが見えた。
「ど、どうして……」
僕は泣きじゃくりながら囁いた。
そして、父上の声が空気を切り裂いた。重々しく、決定的な響きだった。
「チッ……貴様」
僕の心臓が止まった。
(父上……)
僕は息を呑み、勢いよく顔を上げた。
だが、ヴォルガスの視線はテーブルにも、僕にも向けられていなかった。
それは側面の観覧席に向けられていた。
一瞬にしてその男の顔から血の気が引いた。彼は一歩前に出たが、鎧の下で目に見えて震えていた。
「わ、我が君……ヴォ、ヴォルガス公爵……そのようなつもりは――」
ヴォルガスは玉座から立ち上がらなかった。怒鳴ることも、僕に黙れと命じることもしなかった。
彼はただ、左手を上げた。
部屋の空気が崩落した。
怪物的で物理的な圧力が僕の肩を下へと押し潰し、膝を折ることを強制した時、僕の涙は一瞬にして干上がった。
(ぐっ……何が起きてるの?)
「すべてその護衛の責任です!」
まだ口元に笑みを浮かべ、顔を赤らめたふくよかな男が言った。
彼は少し離れた場所に跪いている男を指差し、やっとの思いで声を出した。
「公爵閣下の御前で笑うなどという無礼を働いたのです!」
護衛はわずかに頭を上げた。
「私は……笑っておりません……」
「黙れ!」
貴族が吐き捨てた。
「そのような無礼が許されるはずがない!」
護衛は再び言葉を発しようとしたが、圧力が彼を再び床へと押し潰した。
ヴォルガスは一言も発さなかった。
広間にのしかかる力がますます強くなっていく中、彼は玉座に座ったまま、無言で彼を見つめていた。
そして、護衛が崩れた。
「か、閣下、私は決して……どうか……ぐっ! お、お許しを!」
護衛は喘ぐように言った。
僕は、先ほど護衛を告発していた貴族に目を向けた。
金の指輪をはめた手で口元を隠し、笑っていたあの男だ。 彼の唇は、嗜虐的な笑みを浮かべていた。
突如として、恐怖が現実味を帯びた。
「ぐああ……私には家族が……! ああああっ!」
護衛の声が途切れ、悲痛な叫び声へと変わった。
ヴォルガスはゆっくりと拳を握り込んだ。
それは綺麗な音ではなく、湿った、おぞましい音だった。
分厚い板金鎧が、まるで紙屑のようにひしゃげていく。男の体はあり得ない方向へと折れ曲がり、無残にも石の床へと叩き潰された。
僕は目を丸くし、そこから視線を外すことができなかった。胃から吐き気が込み上げてきた。
充血した目で、観覧席を見た。
何人もの貴族が、主の圧倒的な力を目の当たりにして歓喜し、優雅な拍手を送り始めた。
床に倒れた男は、血をゴボゴボと吐きながら喘いでいた。途切れた呼吸の音は、叫び声よりもさらに酷かった。
黒と白の大理石の上に、ドロドロとした黒い血だまりがゆっくりと広がり始めた。
僕の後ろに並んでいた子供たちの何人かが、恐怖のあまり泣き出した。
だが、あの瞬間、僕の心を決定的に破壊したのは、大人たちの絶対的な無関心だった。
楽しげな、あるいは退屈そうな彼らの視線は、おとぎ話に出てくる悪魔の顔のように僕には見えた。
「秩序を保つために必要な教訓ですな」
ふくよかな男が玉座に向かって深くお辞儀をしながら呟いた。
僕は青ざめ、硬直したまま、ヴェールを痙攣するほど強く握りしめていた。
宴や儀式の時、いつも贈り物を交換し、愛想よく微笑み合っていたあの貴族たちと同一人物であるはずがなかった。
僕は広間を見渡したが、もはやそれが同じ場所だとは認識できなかった。
(でも……それなら、これは一体どういうことなんだ?)
この場所のことを、僕は分かっているつもりだった。だけど違った。本当は、何一つ知らなかったんだと、今になってようやく気づいた。
僕は勇気を振り絞って、再びヴォルガスを見た。
彼の冷酷な視線が僕を捉えたかのように見えたが、それは僕という存在をすり抜け、まるで何もない空間を見つめているかのようだった。
彼にとって、僕はもうあの場の一部ではなかった。
いや、ひょっとすると最初からそうではなかったのかもしれないと、僕は身震いとともに悟った。
彼は玉座からゆっくりと立ち上がった。
その姿がステンドグラスを背景に浮かび上がり、圧倒的で、人間離れしていた。
「血と力。それこそが、シュタール・アイゼンハルトの名の下に生きる権利を貴様らに与える唯一のものである」
シラードが一歩前に出て、父上に近づいた。彼は声を潜め、僕にかろうじて聞こえるほどの囁き声で言った。
「兄上、私はあのヴェールが――」
「退屈だ」
ヴォルガスのブーツの下に、瞬時にして複雑な真紅の魔法陣が灯った。
僕がここに来てから初めて、彼の視線が僕を真っ直ぐに射抜いた。
「この瞬間より、ルティアン・シュタール・アイゼンハルトはシュタール家に属するあらゆる権利、階級、特権を失う。これより先、もはや我が子としては認められぬ」
僕は動けなかった。
(ああ……最初からそれを考えていたんだね)
驚きではなかった。完全には。
父上が僕を他の兄弟たちと同じように見ていないことは知っていた。いつ本当に気づいたのかは説明できないけれど、もう何年も前から知っていた。
彼の前に姿を見せるたび、挨拶も、言葉も、視線すら僕に向けられたことは一度もなかったのだから。
それでも、声に出して言われるのは違った。
(もはや我が子としては認められぬ……)
その言葉が頭から離れず、消え去ってくれなかった。
広間に静寂が降りた。
続いて、宰相が前に進み出た。彼は封をされた羊皮紙をゆっくりと開いた。
「帝国歴三百四十九年、コルトン一世により発布されたトゥルハン王国勅令の定めに基づき……」
彼の声は厳かさを増した。
「ルティアン・シュタール・アイゼンハルトから、シュタール家に属する権利、階級、特権を公式に剥奪する。この瞬間より、彼は『ルティアン・アイゼンハルト』としてのみ認められるものとする」
(嫌だ……父上。待って……)
「父上! 僕は……」
その日、彼が初めて、そして最後に僕へと視線を向けた。
「僕は……やり直せます! 父上!」
今まで受けたどんなものよりも重く、耐え難い力が僕を打ち据えた。
「父上!」
声が喉の奥で消え去り、僕は膝から崩れ落ちた。頭を上げることができなかった。目に涙が溢れていたが、止めることはできなかった。
「見捨てないで……」
片手を伸ばして父上の注意を引こうとしながら、僕はありったけの力を振り絞って顔を上げようとした。
彼の足元に、瞬時に複雑な真紅の魔法陣が灯った。 それが床に広がり、一瞬だけ魔法陣の線を描くのが見えた。
僕は固まった。
何が起きているのかを理解する前に、彼の体は光と共に消え去った。
シラードは木製のテーブルを手のひらで強く叩いた。
「儀式は終了した。速やかに退出するように。清掃手続きのため、広間は閉鎖される」
と命じ、それから死体の近くにいる護衛に向き直った。
「メイドたちを呼べ。そして今すぐすべて片付けろ」
「はっ!」
広間から人々が足早に去っていき、次第に空になっていった。
貴族、高官、そして護衛たちは、まるで僕の『マナの欠落』が感染する呪いであるかのように、僕と目を合わせないようにしながら出て行った。
僕は体の脇で拳を握りしめ、頭から足の先まで震えていた。
僕は視線で叔父を探した。これからどうすればいいのか必死に尋ねたかった。何ヶ月も僕を指導してくれた教師に、ほんの少しでも支えや説明を求めたかった。
だが彼は、マントを翻しながら側面の出口へ向かってすでに歩き出しており、一度も振り返ることはなかった。
僕は広間の中央で膝をついたまま、一人取り残された。
粘つく血と、鉄のような匂いが空気を満たし、お香の匂いと混ざり合っていた。
白いヴェールが、最後の、残酷な嘲笑のように、まだ僕の指を凍らせていた。
僕は純粋で盲目的な意地だけでそれを握りしめた。
だが、容赦なく白いままだった。
(あり得ない……どうして? なんで僕が? これほどの仕打ちを受けるような、何か悪いことでもしたの?)
そしてまさにその場所で、僕が完全に崩れ落ちた静寂の中、遠くから囁きが聞こえた。
低い笑い声。
それは満ち足りた、ほとんど恍惚とした響きだった。
この広間の闇に潜む何かが、僕の転落を愉快だと感じていた。
僕はもう三男ではなかった。
名前を、家族を、そして未来を奪われたのだ。




