別の道・後編
薄暗がりの中で目を開けた。頭が割れるようにズキズキと脈打ち、耳には鬱陶しい耳鳴りが響いていた。ざらついた手が僕の襟首を掴み、無理やり上体を起こすのを感じた。
「爺さん……」
カエルの姿に焦点を合わせようと目を細めながら、僕は呂律の回らない声で呟いた。
「変な夢を見たんだ」
カエルはすぐには答えなかった。
襟首から手を離し、床を指差した。辺りを見回して、僕は目を見開いた。厩舎は無残に荒らされていた。 藁は、まるでこの隅っこだけに小さなハリケーンが直撃したかのように吹き飛ばされていた。オーツ麦の袋は真っ二つに引き裂かれ、はっきりとした切り裂き跡が残っていた。
(夢じゃなかったのか!?)
僕の膝のすぐそばには、開かれたままの本が転がっていた。そして少し離れたところに、ほうきの柄が。
「なんだこれ……」
ズキズキと痛み続ける頭を押さえながら、僕は囁いた。
「てめぇに理解もできねぇ代物を試そうとするほど馬鹿じゃないってことを、祈るぜ」
カエルは低い声で唸った。それは、久しぶりに聞く容赦のない声だった。
「僕……僕にも分からない。ただ、見たものを真似しただけで……」
カエルは本をひったくり、乱暴に閉じると、道具箱の二重底の下にそれを隠した。
「元通りに片付けろ。今すぐだ。角笛が鳴るまで一時間もねぇぞ」彼は僕に命じ、何を考えているのか分からない表情で僕を睨みつけた。
「もしゾルタンや他の誰かが、この袋の切り裂かれた跡を見たら……てめぇには答えられないような質問をされることになるからな」
状況を飲み込む暇すらほとんどないまま、僕は散らばった干し草を掃き集め、できるだけ早く厩舎を片付けた。
「爺さん」台無しになった藁を捨てながら、僕は言った。
「影を見たんだ。それから、頭の中にものすごい圧迫感を感じて――」
カエルはもうそこにはいなかった。おそらく裏手で馬の世話をしているのだろう。 僕は手を止め、一瞬だけ辺りを見回した。
(つまり、本当に起きたことなんだ)
ほうきの柄を握りしめた。左腕にまで微かな痛みが走った。 最後にもう一度厩舎全体を見渡し、すべてが元通りになっていることを確認してから、裏手へ向かってカエルを呼んだ。
「爺さん、全部片付けたよ。前よりも綺麗に――」
角笛の音が訓練場全体に響き渡り、会話を遮った。
「さっさと行け」背を向けたままカエルが言った。「また今夜な!」
僕は広場へ向かって駆け出した。 道中、同じ宿舎の連中が他の列に合流するのを見つけ、目立たないようにその中に紛れ込んだ。すぐにゾルタンが到着し、全員を整列させると、三つのグループに分けた。僕は最後の組に回され、昨日と同じ連中といつもの反復練習をすることになった。
昼になり、隊長が休憩の合図を出した時、今日もテオとソランの姿がないことに気がついた。それは僕が抱いていた疑念を裏付けるかのようだった。
(おそらく彼らは別の場所で訓練しているのだろう。テオがここ数週間姿を消していたのも、まさにこれが理由だったのかもしれない)
だが午後になると、ゾルタンは僕たちのグループを、闘気を使った模擬戦をしているグループに合流させた。驚いた。これまでは全く別の訓練メニューをこなしていたからだ。 最初の訓練は、特定の構えをとり、木刀を本物の剣に見立てて、斬撃を繰り出すような動きを繰り返すというものだった。
他の連中がすぐにそれを始める中、僕はしばらく観察し、彼らの動きの何が違うのかを理解しようと努めた。そこで僕は、昨夜試したあの動きを、目立たないように真似してみた。だが、無駄だった。
あの『感覚』がなければ、その構えは単なる窮屈な姿勢に過ぎなかった。 訓練中、何度も試みたが、結果はすべて同じだった。周囲では他の訓練生たちが互いに打ち合いの稽古を続けていた。ある時、そのうちの一人が僕の躊躇いがちな動きに気づき、訝しげな視線と短いしかめ面を向けてきたが、すぐにまた自分の模擬戦へと意識を戻していった。
僕は試すのをやめ、彼らを観察し続けた。 脚への体重の配分から、移動や方向転換の速さに至るまで、この数日で彼らが格段に強くなっていることは明らかだった。彼らが本当に闘気を使っているのかどうかは分からなかったが、その動きには確実に何らかの変化があった。
木刀を握る自分の手に視線を落とした。タコが焼けるように痛むのを感じた。 目を閉じ、あの感覚を呼び起こそうとした。 何もない。 そこで今度は、一つ一つの動きを調整し、見たものを完璧に思い出しながら、ゆっくりとその技術を実行してみた。 一つ目。 そして二つ目。 だが、あの感覚は得られなかった。何より、その技術を正しく実行できているとすら思えなかった。 目を開けた瞬間、僕はピタリと動きを止めた。
ゾルタンが僕の目の前に立っていた。周囲が完全に静まり返る中、僕を見下ろし、血の気が引くほどの強烈な視線で僕を睨みつけていた。
辺りを見回した。
僕の近くにいた訓練生たちも、隊長の放つ気配に金縛りに遭い、訓練を止めていた。模擬戦すらも完全に停止していた。ゾルタンは僕の足元を見下ろし、次に腰の落とし方、最後に木刀を握る僕の手へと視線を移した。
「もう一度やれ」
「え、何ですか?」彼の目が僕を射抜いた。
「重心。体重移動。もう一度やれ」 僕は唾を飲み込んだ。
僕にできるのは、ただ真似しているだけのその動きを、もう一度繰り返すことだけだった。せいぜい、不恰好に再現しようとする程度だ。僕は正しいリズムを刻むように意識しながら、ゆっくりと同じ動きを繰り返した。だが、その一撃には『魂』がこもっていないと感じていた。空っぽだった。だからこそ、僕は焦りを感じていた。
「もう一度だ」ゾルタンが命じた。
僕はもう一度やり直し、それから彼の方を振り向いた。
ゾルタンは数秒間、その木刀をじっと見つめていた。まるで何かを探しているかのようだった。
「夜までそのまま続けろ」ついに彼が言い放った。
その声色からは何も読み取れなかった。
「その構えから一ミリも動くな」
彼は背を向け、模擬戦をしている連中のところへ戻っていき、胃のあたりに、締め付けられるような重いしこりが生まれた。その日の残りの時間、僕は同じ動きを何度も何度も繰り返した。その度に昨夜の感覚を呼び起こそうとしたが、何も起こらなかった。無理に続ければ続けるほど、腕に疲労が溜まり、木刀を握る手のひらが熱く焼けるように痛んだ。
ゾルタンがようやく訓練の終了を告げた時、僕はすっかり疲れ果てていた。僕はいつもより遅い時間、全員がすでに眠りについた頃に厩舎へ戻った。カエルは自分の小さな部屋で大きないびきをかいていた。 道具箱の下から本を取り出し、厩舎の最も暗い場所に座り込んだ。
雷神流のページを読み返しながら、僕は動きそのものよりも、著者が描写している感覚の方に集中しようと努めた。バランス。呼吸。体重の配分。身体の制御。本を閉じ、古いほうきの柄を握りしめ、あの姿勢を再現しようと試みた。 何もない。足の置き方を変えてみた。何もない。呼吸を遅くしてみた。やはり何もない。 僕は息を吐き出した。
おそらく、僕は求めるものを間違えているのだ。昨夜、僕は闘気を使おうなどとはしていなかった。そもそも、あれが闘気の感覚なのかどうかも分かっていなかった。ただ、見たものに従っただけだった。
目を閉じ、ゆっくりと息を吸い込んだ。一瞬だけ、他のすべてを忘れようとした。本のこと、技術のこと、そして「成功させたい」という願望すらも。 僕はただ、あの動きのことだけを考えた。片方の脚からもう片方の脚へと移動する体重、筋肉の緊張、そして身体全体が一つの物体として連動するその感覚を。 数秒間は何も起きなかった。そして、背筋に微かな震えが走った。 僕は勢いよく目を開けた。あの感覚が戻ってきた。昨夜ほど強力なものではなく、ほんの僅かに感じ取れる程度の、体を貫く細い糸のような感覚だった。それが再び消えてしまうのを恐れるかのように、僕は身動き一つできなかった。じっとしたまま、それがどこから来るのかを理解しようと努めたが、数秒後にはその感覚は霧散してしまった。
僕は藁の上に力なく座り込んだ。
(できるんだ)
偶然ではなかった。僕はそれを呼び起こすことができる。少なくとも、ほんの一瞬だけなら。
その夜以来、機会を見つけては厩舎に戻り、訓練を重ねた。 だがカエルは、僕が引き起こしたあの惨事を忘れてはおらず、遅れた仕事を取り戻させるために、数日間は普段以上に僕をこき使った。 労働と訓練の合間を縫って、本を読んだり実験したりできる時間は、夜の数時間しか残されていなかった。
最初は、その感覚はほんの数秒しか現れなかった。しかし日を追うごとに、体の中を巡る感覚を少しずつ掴めるようになり、より容易に引き出せるようになっていった。まだそれを完全に制御することはできず、長く維持しようと試みるたびに、耳の奥で鬱陶しい耳鳴りが鳴り響き、頭に軽い痛みを残した。
ヴィラが僕の前に立ち止まったのは、二週目の訓練中のことだった。僕が一つの動きを終えた直後、フードの影から彼女の声が届いた。
「その動きを、どこで知ったの?」 僕は驚いて彼女を見た。
「え、何ですか?」
「その動きよ。間違ってはいるけれど……」彼女は感情を交えずに言った。
「それは雷神流の『入門の構え(にゅうもんのかまえ)』ね」
心臓が喉まで跳ね上がり、僕は目を見開いた。その時になってようやく、ゾルタンの言葉を思い出した。ヴィラは、その流派の一級師範なのだ。
「ぼ、僕は……誰にも教わってません。ただ、浮かないように他の連中の動きを真似しようとしていただけです」
ヴィラは一歩近づいた。
「嘘はおやめなさい」彼女は僕にしか聞こえないほどの低い声で囁いた。
「その動きは、素人が木刀を振り回しているのを見ただけで身につくようなものではないわ。でも、あなたのやり方には根本的な間違いがあるわ」
僕は唾を飲み込んだ。
見抜かれている。僕は一瞬押し黙り、体を強張らせた。 ヴィラは僕の答えを待つように、もう一歩近づいた。 僕は観念して、うつむいた。
「いくつか、読んだんです」
「どこで?」
「古い本で」 彼女は数秒間沈黙した。
「ただ読んだだけで模倣できるような代物ではないのだけれど」
僕は彼女を見つめたが、何と答えればいいのか分からなかった。 ヴィラはしばらくの間、黙っていた。それから、わずかに首を傾げた。
「まずは認識することを学びなさい。その『感覚』のことよ」
「は、はい」
(バレたのか? 僕のせいで、爺さんまで面倒なことに巻き込まれるかもしれない……)
僕は目を見開いた。
「ど、どうして――」
ヴィラは一歩下がり、僕の言葉を遮った。
「訓練を続けなさい。けれど、無理に引き出そうとしてはいけないわ。そんなことをすれば、ただ自分を傷つけるだけよ」
(何を無理に引き出しちゃいけないんだ? あの感覚のことか?)
「師範、待って」
彼女は立ち止まったが、振り返ることはなかった。
「どうして、何かが違うって分かったんですか?……あの感覚は……一体何なんですか?」
彼女は一瞬だけ静止した。
「私がその流派を極めているからよ」
そう言い残して彼女は再び歩き出し、僕の中には以前にも増して疑問が残った。
二週目の残りは、僕は誰にもそのことを話さず、一人で訓練を続けた。あの感覚は以前よりも頻繁に現れるようになったが、それでも維持できるのは、ほんの数秒だけだった。無理に引き出そうとするたびに、耳鳴りが強くなり、頭痛がぶり返した。その痛みが何から来ているのかは分からなかった。
(ヴィラが言っていたことのせいなのか? 無理に引き出してはいけない? じゃあ、一体どうすればいいんだ?)
そうして第二週目が終わった。
三週目の初め、ゾルタンは十五日前のあの朝と同じように、僕たちを広場の中央に集めた。隊長が列の間を歩き、僕たちを一人一人値踏みするように見渡すと、訓練生たちのざわめきはゆっくりと静まっていった。
「前にも言った通り、来週からグラムラーの森での演習が始まる。ヴィラはすでに選抜メンバーの準備に取り掛かっている」
訓練生たちの間にどよめきが走った。
僕は黙ったままだった。
今回もまた、自分には関係のない話だと思い込んでいた。 ゾルタンが僕の目の前で立ち止まった。
「おい、クソガキ」
彼は僕の頭に手を置き、軽く締め付けた。
僕は体を強張らせた。
隊長は僕の顔の高さまで身をかがめた。
「お前も行くんだよ」




