別の道・前編
走りながら、仲間たちの体温が僕に押し寄せ、汗と凍てついた泥の息苦しい悪臭と混ざり合っていた。 訓練生たちは疲労すら感じていないようで、これから何が待ち受けているのか、そして何より、あの新しくやって来た二人について空想を膨らませることに夢中になっていた。
到着するグループにいる唯一の少女について、すでにかなり下品なコメントを口にしている者もいた。
無理もない。
ここ数年、女性の顔を見たことのある者など僕たちの中にはほとんどいなかったのだから。
それなのに、彼らとは違い、僕の頭の中は、走る前にゾルタンが僕に向けたあの歪んだ笑顔のことで頭がいっぱいだった。
(僕から何を求めているんだ? そして一体、この壁の外で何が起きていれば、これほど危険な演習が必要になるんだ?)
僕はため息をつき、呼吸だけに集中するために拳を強く握りしめた。 三人の少年が僕の前を通り過ぎていった。明らかに僕のことを話していた。
「図々しい奴だ。チッ!」
「あんな奴、放っておけよ。まともに走ることすらできてないのが見えないのか? 伝染るぞ!」
「それよりさ! ヘヘッ……あの女……」
彼らの声は僕をかすめ、すぐに消えていった。ここでの基本的なルールを、僕はすでに学んでいた。目立たなければ、誰も手を出してこない。 息を切らしながら、遠くの広場を振り返った。
ゾルタンは選抜されたグループと話していた。テオの金髪が目立ち、少し離れたところに紫色の髪が見えた。おそらく、新しく来た二人のうちのどちらかだろう。最後の周回を終えるのに十分なだけ息を整え、僕は中央の広場で他の連中に合流した。
そこでは、丸眼鏡をかけた男、ガレクが僕たちを待っていた。彼は足を組み、本を読み耽りながら座っていた。僕たちが全員一列に並んだ時、僕は信じられないような光景に目を奪われた。彼は広場の中央にある、完璧な円柱の小さな石柱の上に座っていたのだ。
あんなものは今まで見たことがなかった。それなのに、まるで生きている地面から自然に生えてきたかのように、地形と完全に同化していた。 少しして、彼は指で眼鏡の位置を直し、立ち上がった。
「なかなか興味深い」
石の円柱はゆっくりと地面の中へと引っ込み始め、ついには完全に消え去り、表面には滑らかで均一な土だけが残された。
(土属性魔法!?)
奇妙に魅惑的だったが、あの種の魔法にこれほど独特で汎用性の高い使い方があるというのは、驚きでもあった。
男は列に近づき、一人一人を極めて注意深く観察し始めた。僕は最後の方だった。 果てしなく長く感じる数分の後、彼は僕の前で立ち止まり、再び眼鏡の位置を直した。彼の琥珀色の目は、底知れない何かを反射していた。彼には、よくある貴族の傲慢さとはまた違った、独特の高慢さがあった。そして奇妙なことに、彼は僕の叔父、シラードを思い出させた。
「ふむ!」その一言だけで、僕を選考から外すには十分だった。
理由は分かっていたので、落ち込むことはなかった。彼は魔力に親和性のある者を選抜するためにそこにいて、僕にはそれが完全に欠如していた。
ガレクが広場の中央に戻ると、隣接する兵舎からゾルタンともう一つのグループが出てきた。
ちょうどその時、左側の木の柵の向こうの道に、カエルの姿が見えた。彼は二頭の馬を引いており、全身を濃い灰色の外套で覆った人物を伴っていた。それが新しい剣術の教官、ヴィラであることは容易に推測できた。だが、彼女が女性であることはすでに全員が知っているというのに、なぜ体と顔を隠し続けるのかが分からなかった。
(火傷や戦争の傷跡でも隠しているのか? それとも、ただ単に姿を見られるのを恥ずかしがっているだけなのか?)
ゾルタンと同等の権限を持つ教官が、単なる「恥じらい」を理由に、この場所の常識から外れた行動を取るなんて、到底あり得ないように思えた。物思いに耽っていると、カエルが僕を見つけ、腕を大きく振って僕を呼んだ。 僕は慌てて目を逸らした。
(頭がおかしくなったのか?)
朝の選抜の最中に持ち場を離れることが許されないことなど、彼は百も承知のはずだ。
「坊主、来い!」彼は大声で叫んだ。
その場にいた全員が振り向いた。あの老いた厩務員が、あれほど堂々と広場の活動を中断させたことに、僕と同じように驚いていた。ガレクは乱暴に本を閉じ、カエルの方へ視線を向けた。一瞬、彼が躊躇したのが見えた。 その間も、僕は馬のそばにいる外套の人物を見つめ続けていたが、瞬きをした次の瞬間には、彼女はすでに僕の視界から消え失せていた。
(一体どうやって……どこへ行ったんだ?)
一方、カエルは門のところで立ち止まり、まるで市場で古い友人に会った時のように自然に手を挙げてガレクに挨拶をした。 最も信じられないことに、宮廷魔術師であるガレクが、礼儀正しい笑顔でその挨拶を返したのだ。
(知り合いなのか?)
それから彼は僕の方へ向き直り、手で軽く「行け」と合図を送った。 何が起きているのか理解できなかったが、僕はその指示に従った。 お詫びの印にお辞儀をした。
「ありがとうございます!」と呟き、急いで門の方へ向かった。
ゾルタンの姿を探した。幸いなことに、彼はまだ遠くにいた。
(後でどんな罰を受けさせられるか、考えない方がいい)
門を通り抜けるとすぐに、カエルが僕の背中を叩いた。
「よく来れたな?」
「あんた、頭がおかしいのか? こんなこと許されるわけないだろ。もし隊長に見つかったら――」
「私が許可したのよ」
僕はビクッと肩を震わせた。女性の声は僕の左側、わずか一歩の距離から聞こえた。だが、ほんの一瞬前に振り返った時、道には誰もいなかったはずだ。
「どこを見てやがる、坊主? 反対側だ」カエルが鼻で笑った。
僕は右へ勢いよく振り返った。 ヴィラがそこにいた。フードを被り、顔を伏せたまま、僕のすぐ隣に立っていた。
「ひっ!」
冷たい悪寒が背筋を滑り落ちた。喉からは引きつったような掠れ声しか出ず、恐怖のあまり後ろへよろけ、ドスンと尻餅をついた。 心臓をバクバクさせながら、彼女を見上げた。
(一体どうやって? 確かに左側から声が聞こえたはずなのに、実際は……)
彼女は微動だにせず、完全に無関心な様子で背筋を伸ばしていた。顔のない灰色のシルエットは、それだけで誰の心にも恐怖を植え付けるのに十分だった。 カエルは口元に笑みを浮かべながら、僕が立ち上がるのを手伝ってくれた。
「坊主、落ち着け。ちょっとした用事に手を貸してほしいんだよ」
そう言うとすぐに、老人は馬の尻を叩いて歩き出した。
「でも、もしゾルタンが……」
「いいから来い!」カエルは立ち止まり、僕の言葉を遮った。
それから僕の背後に回り込み、僕の背中を押して無理やり歩かせた。
「すぐに戻れるさ。それに、彼女が言うなら、お前は絶対に安全だ!」
彼は親指でヴィラを指した。
(彼女が言うなら、だって? ゾルタンに血を吐かされないことを祈るしかないな)
僕は神経質にフードの人物を振り返った。
「えっと……あ、ありがとうございます」
カエルが何を企んでいるのかはまだ分からなかった。彼のことだ、『ちょっとした用事』というのは、僕を過労で死なせるという意味だろう。そして、教官を連れてきているという事実が、この状況を全く安心できないものにしていた。 やがて僕たちは厩舎に到着した。カエルは大きな鍵の束を取り出し、普段肥料や重しを運ぶのに使っている手押し車を持ってくるように僕に命じた。
「これで何をするの?」
「おお! すぐに分かるさ。とりあえず、旧宿舎へ向かうぞ」
(旧宿舎?)
聞いたこともない名前だった。 僕が手押し車を押している間、ヴィラは僕の後ろを歩いていた。いや、滑るように移動していた。まるで音を立てない暗殺者のようだった。砂利道を踏む足音は微塵も聞こえず、あの外套がどれほど重いかを考えれば、それはあらゆる物理法則に反していた。
(この壁の外には、僕がまだ理解できないことが本当に多すぎる)
カエルは僕たちを最も東にある防壁へと案内した。そこは訓練生には立ち入りが禁止されている区画で、過去の魔物襲撃で死んだ兵士たちの幽霊が出るという、悪趣味な噂が立っていた。到着すると、そこには重厚な金属製の門が入口を塞いでいた。通常の木の柵の代わりに、その区画全体が錬鉄のフェンスで保護されていた。
「開けたら、手押し車を中に入れろ」カエルは鍵穴をいじりながら言った。
「ヴィラがついて行く。彼女は何をすべきか分かっている。俺は数人を呼びに行ってくる。人手は多いに越したことはないからな」
僕は頷いたが、混乱は増すばかりだった。
(『ちょっとした用事』に、一体何人必要なんだ? それに、何をする気だ?)
僕はため息をついた。
(少なくとも、良い面はある。今日はいつものうんざりするような反復練習をサボれる)
今度はヴィラが僕を追い越し、先に入っていった。僕は手押し車を引いて彼女に続いた。
一見したところ、その区画はキャンプの他の場所と大して変わらないように見えた。防壁に向かって広場があり、中央に大きな建物、そして東側に宿舎の列がある。だが細部に目を向けると、その違いは絶大だった。
中央の広場は、完全に切り出された石で舗装されていた。ただの訓練場ではない、まるで本物の闘技場のようだった。宿舎も、いつから立ち入り禁止になっているのか分からない場所にあるというのに、頑丈で信じられないほどよく手入れされていた。窓ガラスは朝の光を反射している。僕たちの腐りかけた木の小屋とは雲泥の差だった。
しかし本当の驚きは、ヴィラについて本館の入口に向かった時にやって来た。補強された大扉の上に、濃い色の木の看板が掲げられていた。 『武器庫』。
「手押し車は外に置いておきなさい」ヴィラが振り返って言った。
彼女の声を聞くのはこれで二度目だったが、今回ははっきりと聞こえた。驚くほど穏やかな声色で、おそらく三十歳にも満たない、ごく普通の女性のようだった。
「中からいくつか物を取り出すわ。それを整理したら、少し休んでいいから」
(休む? その言葉の意味を知っていればの話だけどね)
「ええと、あ、ありがとうございます、教官」
「師範と呼びなさい。その方が響きがいいわ」
それ以上何も付け加えることなく、ヴィラは重い扉を開けた。 内部は埃と鉄の匂いがし、真っ暗闇に包まれていた。 彼女は片手を上げ、理解不能な単語を一つだけ呟いた。すると何もない虚空から、白っぽい光の小さな球体が生まれ、宙に浮いて部屋を照らし出した。 僕は手押し車の取っ手を握りしめたまま、凍りついた。
(魔法? ゾルタンは彼女が剣の師範だと言っていたはずだ。どうして呪文が使えるんだ? これが普通なのか分からない。もしかして、彼女は単なる魔法剣士なのか?)
答えを出す時間はなかった。光が建物の内部を照らし出し、僕は完全に心を奪われた。 武器は病的なまでに整然と配置されていた。壁には盾がぎっしり詰まった金属製の箱や、補強された弓、重石弓が整然と掛けられていた。 部屋の中央には、木と革でできた大きな訓練用のダミー人形がいくつもそびえ立っていた。古い摩耗の跡や深い切り傷が見えるものもあったが、明らかに修復され手入れされており、今すぐにでも使える状態だった。どんな熱心な訓練生でも、こんな場所で訓練できることを夢見るだろう。
光の球体はヴィラに従って、ダミー人形の方へと移動し始めた。
「この人形を一人で外へ運び出せる?」
僕は人形に近づき、一つを掴んで持ち上げようとした。重かった。それぞれが頑丈な石の土台に乗っていたが、カエルに教わった通りに脚と体の中心を使うことで、崩れることなく一つを引きずり出すことができた。
「は、はい。あまり問題なくやれるはずです」
「よろしい。出せるだけ外へ運び出し、広場の中央に並べなさい」
ヴィラは中に残り、武器庫の隣の区画へ消えていった。彼女が何をしているのかは分からない。僕は一つずつ、運べる限りのダミー人形を外へ運び出すことに集中した。
しばらくすると、外から声が聞こえてきた。カエルのあのしゃがれた声だとすぐに分かった。彼は二人の男を連れてきており、いくつか指示を出した後、彼らも僕を手伝い始めた。
彼らはほんの数分のうちに、ダミー人形、訓練用武器が詰まった金属製の籠、様々な装備品など、ヴィラが要求したものをすべて運び出した。 作業が終わると、ダミー人形を五体ずつ、四列に整然と並べた。まるでこの場所を、大規模な訓練のために準備しているかのようだった。
(おそらく、この区画がヴィラの指導下に入るんだろうな)
「よくやってくれた。もう休んでいいわ」
ヴィラが扉から出てきて、手伝いの男たちの一人と話し始めた。 カエルが僕に近づいてきた。僕の肩を叩いた後、彼は顎でヴィラを指し示した。 僕は少し休むために手押し車に腰掛けた。
「どうだ? 彼女を見てどう思った?」
「ゾルタンの正反対みたいだね」
「実力は隊長と同じだ。いいか、坊主、彼女を怒らせないように気をつけろよ。さもないと後悔することになるからな」
「本当に?」
「ああ! 時には彼以上に厳しいこともあるぞ」
しかし、彼女を見れば見るほど、カエルが描写するような野獣には見えなかった。
「前から彼女を知っていたの?」
「数年前に何度か見かけたことがあるだけだ。それ以上の関係じゃねぇ」
「ふーん……」
「もし彼女の授業や訓練を見る機会があったら、よく見とけ。驚かされるはずだ。その点に関しては、ゾルタンとは全く違うからな」
(彼女の授業……?)
「それは良さそうだけど、僕には正しい資――」
「坊主、てめぇが興味を持ちそうなものを見つけたぜ。だが、気をつけろよ」
カエルが不意に僕の言葉を遮った。彼の眼差しはさらに真剣味を帯びた。
(興味を持ちそうなもの? まさか……)
僕は目を見開いた。 もし本当に僕が考えているものを見つけてくれたのなら、僕は一歩前進できるかもしれない。
「何か見つけてくれ――」
カエルは僕の耳を引っ張り、即座に僕を黙らせた。 ヴィラがこちらへ歩いてきたのだ。カエルは咳払いをして、話題を変えるふりをした。
「それで、まだ体力は余ってるか、坊主? 終わる前にもう少しやってもらうことがあるぞ」
ヴィラがカエルの前に到着し、驚いたことに、彼と握手をするために片腕を上げた。 その腕は傷跡に覆われ、肌の上を幾重にも交差する部族のタトゥーが彫り込まれていた。 しかし、僕に本当の衝撃を与えたのは彼女の両手だった。どう見ても女性の手ではなかったのだ。指先からは、人間のものとするにはあまりにも長く、太い爪が伸びていた。
(爪!?)
一瞬、僕は目を逸らすことができず、それを見つめたまま固まった。 カエルは安心させるような笑顔で、教官の手を握り返した。
「ありがとう、爺さん。あなたの馬がいなければ、時間通りにここには着けなかったわ。これをトレンテに持って行って、よろしく伝えておいてちょうだい」
彼女は何かで膨らんだ小さな袋を彼に差し出した。
「相変わらず気が利くな。トレンテも喜ぶだろう。ありがとよ」
ヴィラは手を離した。僕がたった今苦労して配置したばかりの的の一つに近づき、爪の先で暗い色の木材に軽く触れた。そして僕の方を振り返り、フードの影から僕を観察した。
「あれほど弱いのに、見事な姿勢ね」
不意を突かれ、僕は目を丸くした。
「もう宿舎に戻っていいわ。今日のあなたの仕事は終わり。そして……手伝ってくれてありがとう」
それ以上何も付け加えることなく、彼女は背を向け、武器庫の重い木製の扉の向こうへと消え、鈍い音とともに扉を閉めた。 僕は立ち尽くしていた。彼女の言葉と、あの爪の残像にまだ動揺していた。
「今夜、厩舎へ来い」老人が僕の目を真っ直ぐに見据えながら囁いた。
少しして、彼は辺りを見回し、いくつかの方向を確認してから、上着の中からいつもとは違う本を取り出し、僕の胸に押し付けた。
「は、はい!」
(ああ……)
「待って。今は持っていけないよ。キャンプに戻らなきゃいけないのに!」
「じゃあ、てめぇで隠せ」
「どうして僕が隠さなきゃいけないんだよ? あんたが持って帰ってよ!」
「ふざけるな。その本を持ってるてめぇが捕まったら、次にあいつらが誰を探しに来ると思ってるんだ?」
「でも、僕が隠してそれが見つかったら、僕が探されるじゃないか!」 カエルは呆れたように数秒間、僕を睨みつけた。
「てめぇ、見た目以上に扱いづらいな」
「厄介事には巻き込まれたくないんだ」
「俺だってそうだ」
「じゃあ、持って帰ってよ」
「だからダメだと言っただろ」
「だから僕はいいって言ったんだ」
僕たちは無言で睨み合った。 少しして、カエルが容赦なく僕の頭を小突いた。
「痛っ!」 僕は慌てて後ずさりし、痛む頭を両手で押さえた。
「ど、どうして叩くんだよ!?」 ついにカエルは深々とため息をつき、降参するように肩をすくめた。
「分かったよ、悪魔め。だが、これ以上は一言も喋るな! 道具箱の隣に置いておく」
「ありがとう」
「だがな、俺が今夜あそこで寝るか、自分の宿舎で寝るかは分からねぇ。もし俺がいなくても、勝手に持っていけ。そして終わったら、俺がいなくても元の場所に戻しておけよ」
「分かった」
カエルは首を振った。
「俺の気が変わる前に、さっさと失せろ」
最悪の事態を覚悟してキャンプに戻った。隊長に血を吐かされるか、倒れるまで走らされると確信していたが、奇妙なことに何も起こらなかった。
ゾルタンは残りの時間、遠くから険しい視線を何度か投げかけてきただけで、一言も口を開かなかった。 だが、もう一つ僕の注意を引く異常な出来事があった。テオ、ソラン、そして新しく来た二人の訓練生、ミラとギルドの姿がなかった。彼らはメインのキャンプから完全に姿を消していたのだ。 他の訓練生たちが泥の中で訓練を続けているのを観察しながら、僕は考え込んだ。
(ゾルタンは準備を始めるために、あいつらをどこか別の場所へ移したに違いない。もしかして、さっき僕が手伝って準備したあの武器庫に連れて行ったのか……?)
その考えは、僕の中に漠然とした焦燥感を残した。 夜までの数時間は、全く進んでいないように感じられた。暗闇が訪れ、他の訓練生たちが疲労困憊してバラックで倒れ込むと、僕はいつもより少し遅い時間に、警備の目を盗んで静かに外へ抜け出し、厩舎へと向かった。 干し草と馬の匂いが、安全な避難所のように僕を迎えてくれた。
カエルはすでに自分の小部屋でいびきをかいて眠っていた。僕はランタンを手に取り、目立たないように炎を最小限に絞った。藁の上の最も暗い隅に座り、オート麦の袋に背中を預けた。 興奮でわずかに震える手で、革装丁の表紙に触れた。
まだ信じられなかった。ついに、重要なことを読み、学ぶ機会を得たのだ。僕は微笑みを浮かべ、それを開いた。
ページは黄ばんでいて、手触りは粗く、びっしりと書かれた文字と解剖学の図解で埋め尽くされていた。最初のページの上部にあるタイトルを見て、僕は息を呑んだ。
『基礎と基本技術:最も古く名高き流派』。
ついに、外の世界についてもっと教えてくれるものを手に入れたのだ。
表紙に手を置き、躊躇いながらページをめくった。 一見したところ、実際にはそのような内容には見えなかった。その本はあまりにも薄かった。おそらく五十ページもなかっただろう。
最初のページをよく見てみると、冒頭に注釈があった。この本の著者のものだろうか? 明らかにペンで書かれており、筆圧による凹凸が見えるほどだった。 その注釈には、著者が世界で最も名高い三つの戦闘流派で培った知識を集めたものであると明確に説明されていた。
龍神流、水神流、そして雷神流。
僕は唾を飲み込んだ。
本当に神から伝えられた戦闘技術なのだろうか? 僕は信仰や神々について何も知らなかった。過去に教会についての本を読んだことはあったが、彼らが崇拝する神々について深く調べたことはなかった。
背筋に悪寒が走るのを感じながら、僕は読み始めた。
本は雷神流の解説から始まっていた。機敏さ、回避行動、地形の利用、そして攻撃の正確さを基盤とする戦闘スタイルだ。最初は、何が書かれているのかを理解するために素早くページをめくるだけだったが、やがて基本姿勢のセクションにたどり着いた。そして、ページをめくった。 次のページ以降は、破り取られていた。
(嘘だろ……嘘だ! くそっ、どうしてこんなことが?)
だからあんなに薄く感じたのだ。
(あのじいさん、これに気づかなかったのか?)
だが、残されたわずかなページには、第一の流派に関する複雑な解剖学的詳細と知識がびっしりと詰まっていた。
僕はため息をつき、ページを戻して隅々まで注意深く読み直した。 闘気が初期技術の基盤となっていたが、マニュアルにはゾルタンが僕たちに見せたものとは全く異なる発展方法が記されていた。しかし、読み進めるうちに、僕は立ち止まらざるを得ない記述に出くわした。
闘気によって引き起こされる感覚が驚くほど詳細に説明されており、そこに書かれていることは、僕がすでに経験したことのある感覚を思い出させた。 まだその本質を理解できていなかったが、その感覚は紛れもなく同じものだった。
(どうしてこの闘気の変異型が、昨夜僕が感じた感覚とこんなにも似ているんだ? 僕には……)
僕はその技術を思い出し、あの感覚と結びつけようと試みた。集中しているうちに、何かが起きた。 足の運びや刃の傾きを示す色あせた図解をじっと見つめていると、インクの線が突然うねり、命を宿したように見えた。単なる疲労のせいだと思い、幻覚を振り払おうと瞬きをしたが、それは消えなかった。それどころか、ますます強まっていった。
(ラプランと戦った時にも、これと似たような感覚があった)
厩舎の木の板も、古びた干し草の匂いも遠のき、濃密な暗闇に飲み込まれていくように感じられた。やがて、壁は完全に消え去った。
(一体……一体僕に何が起きているんだ?)
目が熱く焼けつくように痛み始め、脈打つ熱と変動する強烈な光に貫かれた。本のページは消えていた。代わりに、その虚空に浮かび上がるように、顔を持たない長髪の男の色あせた影が立っていた。
心臓が喉まで跳ね上がった。
僕は本を勢いよく閉じ、後ずさりして、踏み固められた土の上に両膝から崩れ落ちた。
幻覚が途切れた。厩舎の影も、馴染みのある音も、すべてが元の場所に戻っていた。
息を切らしながら、僕は急いで隅のバケツへと這っていった。両手を突っ込み、凍るような水を顔に浴びせ、こめかみをハンマーで打ち据えられるような激痛を、必死に鎮めようとした。肌を刺す冷気が数秒間だけ僕の正気を取り戻させ、しかし、それは一時的な安堵にすぎなかった。
突然、空間が再び歪み、痛みも戻ってきた。顔のない影が再び現れた。その幽霊のような姿は、重心を滑らかに下げ、テキストに記された通りの正確な角度で膝を曲げ、完璧な動きで水平の斬撃を放った。
それが見えた。恐ろしいほどの鮮明さでそれが見えた。体重が踵からつま先へと移動していく様子や、力を生み出すために背中の筋肉がどのように収縮するのかを、はっきりと感知できた。
(まるで……脳が勝手に身体を動かしているみたいだ)
アドレナリンが火のように血管を駆け巡り、僕が感じていた痛みを和らげた。
(やってみるしかない)
自分がそのように動けるのかどうか、知らなければならなかった。 剣の代わりに使えるものを目で探し、カエルの古いほうきの柄を見つけた。僕はそれを柄のように握りしめた。目を閉じ、あの影の姿を心に呼び起こす。
脚を開く。体重を中央に。 老人に教えられた通りに腹を膨らませて深く息を吸い込み、あの感覚を待った。
震えを感じた瞬間、僕は一歩前に踏み出し、その動きを正確に模倣し、斬撃を放った。木製の柄が空気を切り裂く鋭い音を立て、藁を巻き上げて厩舎中に散らした。 僕は言葉を失い、ただ微笑んだ。
(これが……闘気!?)
その動きが終わったのと全く同じ瞬間に、頭蓋骨を貫くような鋭い痛みが走り、まるで焼けた釘を両目の間に打ち込まれたかのようだった。 世界がひっくり返り、僕の脚は崩れ落ちた。
最後に感じたのは、踏み固められた土に頭がぶつかる鈍い音だった。そして……完全な暗闇が訪れた。




