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正当な対価・後編


「今回だけは大目に見る。裏へ行って、そのバケツとデッキブラシを取ってこい。ああ、忘れてた……」彼は何かを投げ、僕はそれを空中で掴み取った。


(石? いや……当たった感触が違う……) それは石鹸の欠片だった。


僕が一瞬驚いてそれを見つめていると、テオが近づいてきて、僕の手を覗き込んだ。 老人は厩舎の脇を指差した。


「その水を好きに使って、さっさと失せろ」


(体を洗ってもいいってことか? それが彼のメッセージ?)


自然と笑みがこぼれた。それだけで、今までの疲れがすべて報われたような気がした。少なくとも僕にとっては。


テオもテンションが上がり、待ちきれない様子だった。


(無理もない)


体を洗うことが許されるのは週に一日だけ。それ以外は水たまりを使ったり、こびりついた汚れを落とすためだけに、適当に濡らしてどうにかやり過ごすしかなかった。


背筋がゾッとした。本当に吐き気がする生活で、まだとても慣れることなんてできなかった。 柵の裏で水が入った二つのバケツを見つけた。一つで広場を洗い流し、もう一つで僕たちは満足いくまで体を洗った。


水は凍えるほど冷たかったが、その時の僕たちにとっては黄金のように思えた。僕は一滴たりとも無駄にしないよう細心の注意を払った。 無駄にするなんて考えただけでも、心が震えるほどだった。


終わった頃には、老人はすでに姿を消していた。道具とバケツを柵の裏に片付け、僕たちは宿舎へと向かった。 水は僕の疲れまでも綺麗に洗い流してくれた。一方のテオは、歩きながらもう少しで眠りこけそうになっていた。


罰則の第一週目は、まさにそんな風にして過ぎていった。 馬糞と、疲労と、筋肉痛にまみれた地獄の日々。


そして八日目を迎え、また一つ厩舎を空にした後、僕は地面にスコップを突き刺し、木の柄を強く握りしめて老人を睨みつけた。


「僕たちの借りの一週間は、今日で終わりだ」息を切らしながら僕は言った。


「あんたの糖蜜を何度も掃除して動かし、雪かきをし、厩舎を綺麗にした……さあ、約束通り、対価の話をしようか」


老人はピッチフォークに寄りかかりながら、片方の眉を吊り上げた。


「今日は馬どもが食いすぎちまってな。食いすぎるとどうなるか分かるか? クソを大量にひり出すんだよ。これは追加の訓練だと思え……そうだな……体幹の安定のためのな!」


(信じられない。こいつ、僕たちをからかってるのか?)


テオが突然一歩前に出て、口を挟んだ。


「不公平だ!」


だが、僕は片手で彼を制止し、後ろへ下がらせた。彼のその性格は、僕たちをさらに大きな厄介事へと引きずり込みかねない。


「僕たちは自分たちがやった仕事に見合う対価が欲しい。それに、まずはあんたが何者なのか、二人とも知っておきたい」


老人は数秒間、僕を見つめた。 それから小さくお辞儀をした。その瞬間、とぼけた馬丁の雰囲気が完全に消え去った。


「てめぇ、クソガキ……カエルだ。カエルと呼べばいい。それにしても、ゾルタンのところに戻って『暇です』とでも言いたいのか? まあ、報酬については……そうだな」


(カエル……どこかで聞いたことがある名前だぞ?)


「お金には興味がない」僕は一歩も引かずに言い放った。


それは事実だった。 お金があってもこの収容所のような場所から抜け出せるわけでもなく、ここで使う方法もなかった。 食べ物ならともかく、それはテオの方が向いているだろう。


(考えろ、ルス、考えろ……何を……) 一週間前のことを思い返した。


(様々な流派、闘気……)


(これが、外の世界をもっと深く知るためのチャンスかもしれない)


「戦闘の流派についての本と、あらゆる種類の書物が欲しい。僕の体格の分を、知識と実践で補わないと……」


「あ! 僕は食べ物で大満足だよ!」


突然目を覚ましたテオが、満面の笑みで大きく手を振りながら割り込んできた。


僕は彼を理解しようと見つめた。彼は肉体的にはここにいるが、頭の中は全く別の場所にあるようだった。


(ここにいる奴らは、どうして揃いも揃ってこうなんだ? まるで……論理的に考えているのは僕だけみたいだ)


「焼き立てのパンをいくつか、ジャガイモを少し多めにもらえるだけで、給料としては最高だよ!」 テオは何度も頷きながらそう締めくくった。


カエルは数秒間無言で僕たちを観察し、テオの食欲と僕の頑固さを交互に見比べた。彼は無精髭をボリボリと掻いた。


「金髪の坊主には食い物、変わり者には戦闘の本、か。てめぇは奇妙なガキだな。まあいいだろう。お前らが厩舎を綺麗に保つなら、毎月末には、てめぇの枕の下に勉強道具を、そっちの坊主にはまともな飯を用意してやる。商談成立か?」

(変わり者? このクソジジイ……)


「商談成立だ」僕はため息をつきながら答えた。


数ヶ月が過ぎ去り、無慈悲な冬が到来した。広場の泥と砂利は、凍てつく氷の檻へと姿を変えた。


昼間は骨が軋むほど体を酷使し、夜はカエルが調達してくれた戦闘術や戦術の本を薄暗いロウソクの灯りの下で読み耽っていたが、僕とテオとの差は埋まるどころか、絶望的な深淵へと広がっていった。 それらの本に書かれているのは、剣やその他の武器を使った単純な戦闘スタイルばかりだった。テオが口にしていた『龍神流』のような大層な流派についての記述は、どこにも見当たらなかった。


(一体何なんだ? 普通の戦闘スタイルと、そんな大仰な名前がつけられた流派とでは、何が違うというんだ?)


読書中、僕はよくそんな疑問を抱いていた。


その間にも、テオは自らが天才であることを証明し続けていた。 彼の体は戦闘向きではないにもかかわらず、魔力の存在のおかげで成長し続けていた。 一方の僕は、彼の十分の一の成果を得るためだけに、血を流さなければならなかった。


そして何よりも最悪だったのは、ランニング中、彼がわざとペースを落として僕を待っていることだった。 僕が転ぶと、彼は笑顔で手を差し伸べてきた。 彼にとっては友情の証であっても、僕にとっては時間が経つにつれ、耐え難い屈辱へと変わっていった。


いつからそう思い始めたのか正確な日は分からない。だが、僕の中で確実に何かが変わりつつあった。


僕たちは重いオーツ麦の袋を運んでいた。僕は息を切らし、腕を震わせながら、どうにか自分の袋を引きずっていた。 テオは僕を見ると、目の前の袋を平手で叩き、何かを囁きながら布地を掴み、片手で頭上へと持ち上げた。 彼の腕の周りでは空気が揺らめいていた。それは僕の目には、何らかの魔法の力のように見えた。


ピッチフォークに寄りかかっていたカエルが、目を丸くした。


「悪魔に誓って……魔纏(まてん)じゃねえが、よく似てやがる! それ、自分で編み出したのか、坊主?」 「うん!」テオは誇らしげに答えた。


「隊長が言ってたみたいに、筋肉に魔力を集中させようとしてみたんだけど、ちょっと違う形に練り上げてみたんだ!」


カエルはクスクスと笑い、それから挑発的な態度で僕の方を振り向いた。 「で、てめぇはどうなんだ、ルティアン? 何もなしか?」彼は嘲笑しながら言った。


酸の波のように、怒りが脳天へと駆け上った。


「僕に魔力がないことくらい、よく知ってるだろ、ジジイ!」僕は拳を強く握り締めながら吐き捨てた。


テオはその張り詰めた空気を読めず、息一つ乱さず、僕に近づいてきた。


「ルス! 僕に任せて、君の分も運ぶよ!」 視界がかすんだ。


(もし僕が……君みたいだったら) 「触るな!」僕は叫んだ。


テオは困惑し、後ずさりした。


「え、ただ手伝おうと……」


「君の手なんか要らない! 君のクソみたいな魔法も必要ない! よくも僕をコケにしてくれたな? 僕の努力は、君にとっては無価値だって言うのか!?」


自分を止められるよりも早く、僕はテオのチュニックの襟首を掴んでいた。 正直なところ、フラストレーションからほんの一瞬彼を脅かしてやりたかっただけだ。確かに怒ってはいたが、それ以上の意味はなかった。


「ルス! ごめん、そんなつもりじゃ……」パニックに陥ったテオは、本能的に僕の手首を掴んだ。 その万力のような圧力は凄まじかった。


人間離れした圧力の下で、自分の骨がメキメキと音を立てるのを感じた。


(何だ、この非常識な力は?)


「ああっ!」


苦痛の悲鳴とともに彼から手を離し、僕は地面にうずくまって自分の腕を強く押さえた。 手首はすでに赤紫色に腫れ上がっていた。


突き刺すような痛みに耐えながら、拳を握りしめた。もう限界だった。


(魔力があるだけで、これほどまでの差が生まれるのか?)


(どうしてこんなことがあり得るのか、全く理解できない)


「ごめん、ルス! わざとじゃないんだ! 気づかなくて!」テオが泣き叫ぶように言った。 僕は一言も発することなく、立ち上がった。


「おい坊主、止まれ!」カエルが怒鳴った。


テオの必死の呼び声も無視して、僕は凍てつく夜の中へと厩舎から走り去った。 今夜はもう、誰の顔も見たくなかった。


兵舎を抜け、外壁の前にたどり着いた。そこからは、ただ自分の本能に従った。明確な目的地があったわけじゃない、ただ少しでも遠くへ歩きたかっただけだ。 逃げ出したいのは山々だったが、それは不可能なことだった。


大通りに沿って歩いていると、巡回している複数の警備兵の姿が見えた。だが奇妙なことに、いつもより数がずっと少なかった。


柵と柵の間に身を隠し、彼らが通り過ぎるのをただ待った。安全だと確信してから、凍りついた砂利道を進み続けた。 僕の中で、ある願望が道を切り開いていくのを感じた。


おそらく今こそが、この壁の外の世界を初めて目にする時であり、僕の中で燃え盛るものを解放する時なのだと。


正門へと続く道に出た。壁と同じ高さを誇る、巨大な金属製の門だ。


(どうすれば……)


僕は出口の門の傍ら、城壁の影に半分身を隠すようにして立ち止まった。通路の両脇には二つの小さな尖塔がそびえ立っており、暗闇の中で辛うじて見えた。その一つから、揺らめく光が漏れていた。


壁に近づき、冷たい風から身を守るようにして数分間そこにとどまった。その時、上から声が聞こえてきた。低く、まるで囁き声のようだった。


「……明日にはようやくあの門の作業も終わるのか?」


「天気が持てばな。まだ骨組みの一部を直さなきゃならねえらしい」


「この寒空の下でか? 給料が倍になったって、俺はご免だね」


「お前が行くわけじゃないんだから、運が良かったな」 短い笑い声が聞こえた。


「とにかく、西門はあと数日は閉鎖されたままだ。工事が終わるまで、誰も使わねえよ」


「本当か? もう警備を再開したのかと思ってたぞ」


「警備はいるさ。だが工事中で、あそこを通る奴なんて一人もいねえよ」


「なるほどな……そういや、もうすぐ交代の時間だ。俺は暖まって、一杯ひっかけてくるわ」


「おい! 俺にも何か飲むもん持ってきてくれよ!」


「おうおう! じゃあまた後でな!」


「よしきた! さっさと行け。ここはおれが見といてやるから」


足音が近づいてくるのが聞こえた。僕はすぐに壁から離れ、少し離れた柵の裏に身を隠した。 尖塔の横の階段から一人の警備兵が姿を現し、降り始めた。手袋を直し、広場へ向かって急ぎ足で歩き去る彼のマントが、風に煽られてはためいていた。 彼が遠ざかるのを待った。

(壁の話をしていた。もしかしたら……あそこに抜け道があるかもしれない)


もう一度周囲を見渡し、西側の城壁に沿って歩き出した。 風がナイフのように顔を切りつけてきたが、歩き続けた。


右手に訓練場と兵舎が見えてきた。毎日訓練を受けている場所だとすぐに分かった。その広場はまだ深い闇の中に沈んでいた。


僕は進み続けた。 十分ほど歩くと、最初のものから数百メートル離れた場所に別の兵舎が見えた。そこにも独自の訓練場があった。


(正規の訓練生たちはここで訓練してるのか?)


もう少し先へ進み、左へと視線を向けた。 ついにそれを見つけた。 西門。だが、あの正門とは比べ物にならないほど粗末なものだった。


(別の用途で使われているのか?)

城壁の一部が足場や木の板で覆われていた。 僕は立ち止まった。


(ここからなら、本当に外に出られるかもしれない)


改装中であるにもかかわらず、遠くに二人の警備兵の姿が見えた。そして近づくにつれて、すぐに彼らが誰なのか気づいた。あの貴族の教官の直属の部下たちだ。


(カシアンって名前だっけ? 確か……)


(もし外に出たいなら、一刻も早くどうにかする方法を見つけなきゃならない)


(でも、どうやって……)


柵の裏に身を隠し、彼らからわずかな距離のところまでゆっくりと前進した。


(僕に魔力がないのは、たぶん幸運だったんだ。そのおかげで誰も僕に気づかない。ゾルタンが、魔力は感知されることがあるって言っていたし)


だが、その幸運も大して役には立たなかった。


辺りを見回したが、可能な手段は多くはなかった。警備兵たちの周囲はすべて闇に包まれており、この状況では僕にできることは限られていた。


(諦めるべきか?)


僕はため息をついた。


突然、少し先にいた警備兵の一人が僕の方向へ近づいてくるのが聞こえた。彼らとは少なくとも二十メートルは離れていた。僕の声が聞こえたはずはない。音なんて一切立てていなかったのだから。


「ん!? 誰だ?」


(どうして見つかった? 隠れているのに……)


僕のすぐ横で何かの扉が開き、僕は柵に体を密着させるように押し付けられた。


「おい、クロード、とりあえず中に入れよ。冷えたビールが待ってるぜ。警備なんか後でいいさ。こんな夜更けにこんな場所に来る奴なんて、狂人くらいなもんだ」


「新入り、お前も入れよ!」


「チッ! クレイだって言ってんだろ! おい!」


その生意気な声には聞き覚えがあった。あの日の合同演習で一番最初に倒された、あの正規の訓練生の少年の声だ。


(なるほど、ここではそうやって回ってるのか。権力のある奴を知っていれば、それだけでキャリアが進んでいく)


まだ信じられない思いで門の方を振り返ると、少しして足音が聞こえた。誰も見えなかった。やがて、ランタンの灯りが目の前の砂利道を照らし出した。 もしその人物がこちらを振り返れば、僕は一瞬で見つかっていただろう。これだけ冷え込んでいるのだから、息を吐き出せば、いくら隠れていてもその白い吐息は確実に見えてしまう。

だが幸運なことに、何も起きなかった。少なくとも、僕が恐れていたような事態にはならなかった。彼らは僕のすぐ隣を通って中へと戻っていったのだ。僕は音を立てないように細心の注意を払い、できる限り長く息を止めた。 僕は気力を振り絞り、つい先ほどまで警備兵が立っていたその門へと歩き出した。

こっそりと近づいてみると、門は枠から完全に取り外され、作業のためにテーブルの上に置かれているのが見えた。代わりに、簡易的な金網が塞ぐように設置されているだけだった。それを越えるのは簡単だった。


誰にも見られないよう、険しい山道へと向かって、時折走りながら進み続けた。


境界線を越えた瞬間、唇から笑い声が漏れた。 こらえることができなかった。拳を握りしめ、少しだけ前かがみになると、突如として熱い感情が胸を突き抜けた。


(やり遂げたんだ)


初めて、僕は本当に外の世界に出たのだ。 おそらく数キロは歩いたはずだが、そんなことはどうでもよかった。今は。


息を整えるために立ち止まった時、それが見えた。 この漆黒の夜において、比類なき美しさを放つもの。


(これがガルガルドの峰か。すごい……あの隣に見えるのが、有名な『白竜の鬣(はくりゅうのたてがみ)』なんだな)


(今まで、こんなにはっきりと見えたことはなかった)


僕はガルガルドの峰の麓にある、荒涼とした岩の広場にたどり着くまでよじ登った。そこにある絶対的な静寂の中で、痛む手首を抱えながら、岩に寄りかかるようにして崩れ落ちた。


「憎い……本当に君が憎いよ、テオ」凍てつく風に向かって囁き、どうにか呼吸をしようとした。


彼は、奇跡と光に満ちたあの世界に属する人間だった。 僕はただの失敗作だ。痛みから少しでも逃れようと、追放される前にヒルダがくれた腕輪を指先でなぞった。


(闘気、魔纏……もし僕がこれらの技のどれか一つでも使えたら、どんなに良かっただろう。もしかしたら、今日ここにいることはなかったかもしれない……)


突如として、温かい痺れのような感覚が前腕全体に広がるのを感じた。ほんの数秒間だったが、それが手首の痛みを和らげてくれているかのように思えた。


(手首から時折感じる、この唐突な温もりは何なんだ? まさか、この腕輪から?)


腕輪へと視線を落とすと、そこからは明らかに、徐々に増していくかすかな温もりが放たれていた。 (ヒルダ、あなたは一体僕に何をくれたの?)


眼下に広がる暗い谷底は、遠く離れたティアの街の灯りで彩られていた。 僕は、雲の間にまだ見え隠れしている月へと視線を上げた。 肺をいっぱいに満たすように、深く息を吸い込んだ。


「誓うよ!」


(ああ、もう二度と誰にも屈しないと誓う。もちろん、言うは易く行うは難しだけど……それでもやってみたい)


(いや)


(『やってみたい』じゃない)


(必ずやり遂げるんだ)


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