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不良債権ダンジョンと借金三千億年から始まる魔王討伐記  作者: 伊阪証


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木刀

探偵が戻ってきたのは、地上の神殿に朝日が当たり始める前だった。通気穴の周りに這わせた蔦は、外から見ると放置された墓所を呑み込みかけているだけに見える。夜露を吸った葉は暗く、石段の割れ目に入り込んだ根は、昨日より少しだけ太くなっていた。メイドは地下へ続く階段の途中でそれを見て、伸びすぎるなと思った。便利なものはすぐに面倒になる。逃げ場を隠すための植物が、今度は逃げ場を壊す根になる。そういうことを考えていると、外側の崩れた石門の影から探偵が現れた。外套の裾に土がついている。乾いた土ではなく、湿った森の土だった。靴裏には細かい草の種がつき、袖口には灰色の粉が薄く残っている。火の跡ではない。乾いた骨を擦った時の粉に似ていた。

探偵は何も言わず、地下へ入った。フリートはすでに起きており、紙を広げていた。解剖医は水場の瓶を見ている。新人の三人は、青年だけが半分寝た顔で棚板を抱えており、女と少年は通気穴の根を確認していた。昨日までなら誰かが勝手に動き、誰かが止め、誰かが怒る流れになったが、今は最低限の役割ができている。寝る場所はまだ足りない。食事場所も狭い。だが、地下は少しずつ人がいても崩れない形になっていた。

「候補は三つあった」

探偵は壊れた机の上に、泥のついた小袋を三つ置いた。

「一つはただの古い森だ。人が消える噂はあったが、盗賊と獣の混ざった話だった。二つ目は病が出ない谷だが、原因は水質のせいだろう。三つ目が本命に近い。死体が残らない。動物が腐らない。腐らないんじゃない。腐る前に消えている。魔族が定期的に何かを置きに来ている痕跡もあった」

フリートがすぐに紙を引いた。探偵の話を聞く前から見出しだけは書いてあった。フェアリー候補地、供物線、死体残存、病害、植物相、魔族動線。彼女は探偵の小袋を見て、直接触らずに解剖医へ目を向けた。

「開ける前に、解剖医」

「分かっている」

解剖医は布を敷き、手袋代わりの薄い皮を手に巻いた。最初の小袋には土が入っていた。黒く、湿っていて、匂いがほとんどない。森の土なら、枯葉や小動物の死骸や腐敗の匂いが少しは残る。だが、その土は妙に静かだった。死んだものを抱え込んでいるはずなのに、死の匂いがない。二つ目の袋には、薄く削れた骨の欠片が入っていた。形からして小動物のものだろう。噛み砕かれたのではなく、表面だけを均一に削られている。三つ目の袋には、桃ではないが、こちらの森で見たことのない果皮の破片があった。乾いているのに、腐った跡がない。果実だったものが腐敗を経ずに薄くなり、皮だけが残ったように見える。

女がその破片を見て、思わず近づいた。解剖医が手で止める。

「触るな」

「でも、これ、普通の果物の皮じゃないです。乾き方がおかしい。水分が抜けたというより、使われた後に残った感じです」

「使われた果物か」

メイドが言うと、女はうまく言葉を選べずに眉を寄せた。

「前の世界でいうと、果物って腐るか乾くか食べられるかじゃないですか。でもこれは、食べられたのに形だけ残ってるというか、果肉だけ別のものに変わって、皮がいらなくなったような……すみません、変な言い方ですけど」

「変だが、分かる」

解剖医が骨片を見ながら言った。

「骨も同じだ。齧られた跡じゃない。削られている。肉が腐る前に除かれ、骨の表面だけを必要な分だけ持っていかれている。動物が食った後ではない。処理された後だ」

探偵は机の端に腕を置き、表情を変えずに続けた。

「森の入口は普通だ。むしろ静かで、危険には見えない。虫が少ない。鳥の声も少ない。獣道はあるが、途中で消える。消えた先に死骸はない。足跡だけが終わっている。そこから先は、苔が厚くなる。踏むと音がしない。道があるように見えるが、歩きやすい方へ進むと谷の奥へ流される」

「処理動線です」

フリートが言った。

「巣に誘導するのではなく、処理しやすい場所へ流す道です。フェアリーは大きな門を作りません。見張りも立てません。環境を変えます。歩きやすい道、甘い匂い、柔らかい足場、低い枝、戻りにくい曲がり方。侵入者が自分で奥へ入ったように感じる形にします」

青年が棚板を抱えたまま、顔をしかめた。

「罠っていうより、森全部が口みたいなもんか」

「言い方は嫌ですが、近いです」

フリートは否定しなかった。

「ただし、フェアリーは口だけではありません。処理したものを環境へ戻す。病を残さない。死体を放置しない。だから有用です。魔王が直接欲しがる理由はそこです。戦場で死体が腐らず、病が広がらず、物資として再利用できるなら、後方管理として強すぎる」

「その後方管理が人も食う」

メイドが言った。

「はい。ですから近づく側から見れば、ただの害悪です」

フリートはあっさり言った。そこに同情はない。フェアリーを可愛い妖精として扱う余地もない。魔族の中でも、有用だから維持され、有用だから生贄が回り、有用だから近づく者が素材になる。そういう種族だった。

少年が果皮の破片をじっと見ていた。

「桃ではないです」

「分かるのか」

メイドが聞く。

「少なくとも、僕の知っている桃の皮じゃないです。でも、外の森の果物でもないと思います。これが落ちていたなら、外界にない果樹がある可能性は高いです。桃そのものかは分かりません」

女が続けた。

「桃に近いものがあるとしても、すぐに種を持って帰れるとは限りません。果実が成熟してないと種が使えないかもしれないし、フェアリーの環境でだけ育つ可能性もあります。土も欲しいです。できれば果実、種、枝、苗。優先順位は種だけど、種だけだと危ない」

「昨日の話通りだな」

メイドはフリートの紙を見た。そこにはすでに、種、果実、枝、苗、土壌、病害隔離と並んでいる。項目だけ見ると農業の準備に見える。だが、その横には、死体処理、供物線、森焼き、移動誘導とも書かれていた。桃の種を取る話と、フェアリーを敵の住処へ押しつける話が、同じ紙の上で並んでいる。

「魔族が置きに来ているものは何だ」

探偵はもう一つ、小さな布包みを出した。中には、乾いた革紐の切れ端と、黒くなった金属片があった。

「荷札だ。文字は削られていたが、紋だけ残っている。魔王軍の下級補給線で使われるものに近い。中身は見ていない。ただ、置き場の周辺に血の跡はなかった。生きたものを縛って連れてきた痕跡も薄い。死体か、肉か、処理対象を荷として置いている可能性が高い」

解剖医が革紐を見た。

「生贄というより、廃棄物処理だな」

「言葉を選ばないならそうです。フェアリーへ渡せば、死体や病巣を残さず消せる。代わりにフェアリーは資源を得る。魔族側は森を管理し続ける必要があるが、処理施設としては有用です」

フリートはそう言って、紙へ「供物=管理費」と書いた。

「だから、ここを燃やすと魔王軍は困ります。処理施設が動く。フェアリーが飢える。フェアリーは別の住処を探す。魔王軍は移動先で改めて管理しなければならない。そこに他の魔族がいれば、食われるか、資源を奪われるか、住処の運用が崩れる」

「殺さない方が得、か」

メイドが言うと、探偵が頷いた。

「殺し切るにはコストが高い。移せば敵のコストになる」

青年はあまり納得していない顔だった。

「でも、森を燃やすって言っても、どのくらい燃やすんだ?全部燃やしたら桃も燃えるんだろ」

「全部は燃やさない」

女がすぐ答えた。昨日から何度も考えていたらしい。

「燃やすなら外側です。乾いた下草とか、外縁部の巣みたいなところ。根元まで焼くと土が死ぬし、果樹があったら終わりです。煙で動かせるならその方がいい。火の壁で逃げ道を作るというか、行ってほしい方向以外を居づらくする。火を入れた後で、桃がある場所だけ急いで確保する。たぶん、火より煙と熱が大事です」

少年が小さく頷いた。

「あと、風。風向きを間違えるとこっちが処理動線に押し戻されます。煙が谷に溜まると、僕たちも動けない。森を燃やす前に、出口と風の抜け方を見ないと駄目です」

解剖医はその二人を見ていた。戦闘ではまだ使えない新人が、火の入れ方と土の死に方を話している。その知識は、剣を振るより今は価値があった。

「火傷と煙の準備もいる。湿った布、水、目を守る布。フェアリーに傷を見つけられると寄るなら、こちらは血を出せない。転んで膝を切るだけでも危険だ」

「血に反応するのか」

青年が言う。

「死体処理をする種族が、血と油と弱った動物に反応しない方がおかしい」

解剖医は当然のように言った。

「だから、君は走るな」

「俺?」

「君が一番転びそうだ」

青年は反論しかけたが、昨日棚板を運んで二度足を滑らせているので、口を閉じた。

探偵は机に簡単な地形図を描いた。森の入口、獣道、苔の厚い場所、谷の奥、供物置き場、魔族の搬入線。正確な地図ではない。探偵が実際に踏めた範囲だけだ。それでも、フェアリーが誘導しているらしい道の流れは見えた。入口から安全そうな道を選ぶと、自然に谷の奥へ向かう。谷の奥には処理場がある可能性が高い。供物置き場はその手前。魔族は奥まで入らず、置いて戻る。つまり、魔族側もフェアリーの中心へ入ることは避けている。

「魔族も奥へは行かないのか」

メイドが聞く。

「少なくとも下級の運び手は行かない。置いて、すぐ戻る。置き場の周囲に立ち止まった痕跡は少ない。怖がっているというより、手順化されてる。これ以上入るな、という線があるんだろう」

「その線の向こうに桃がある可能性が高い」

フリートが言った。

「フェアリーが維持している植物なら、供物置き場の近くではなく、中心部です。外界にない果樹があるなら、処理と栽培の循環がある場所でしょう」

「つまり奥か」

メイドは図の谷奥を見た。正面から入れば処理動線に乗る。奥へ行くには乗らなければならない。だが、乗ったら素材になる。だから森を燃やして、動線そのものを変える。フェアリーを移動させ、中心を空ける。短い時間だけ桃の場所へ入る。

「燃やした後、どこへ移す」

探偵が聞いた。

「候補はあります」

フリートは別の紙を出した。そこには周辺の魔族拠点らしい点が三つ書かれていた。

「一つは湿地の魔族。フェアリーとは相性が悪いです。処理能力は落ちますが、湿地側の病害管理が崩れます。ただし距離が遠い。二つ目は獣系魔族の住処。餌が多く、フェアリーが居着きやすい。移動も近い。犠牲は出ます。三つ目は旧鉱山の魔族。死体処理の需要があるので受け入れる可能性がありますが、閉鎖空間なのでフェアリーが増えると内部が詰まります」

「どれが一番嫌がる」

メイドが聞く。

「獣系魔族です。数が多く、管理が荒い。フェアリーが入ると食われる個体が出ます。反発も起きる。魔王軍が調整に手間を取られるはずです」

「そこへ流す」

「ただし、こちらが誘導したとバレないように。火が自然発生に見えるか、別の魔族の不始末に見える形が望ましいです」

探偵がそこで笑った。静かな笑いだった。

「火の元は作れる。獣系魔族の狩り場に、乾いた油と火種を置いておけばいい。森の外縁に火が回り、フェアリーは居づらくなる。逃げる先に餌の多い住処がある。あとは勝手に動く」

「燃やしすぎるな」

女が強く言った。探偵が少しだけ目を向ける。

「桃があるかもしれない場所まで焼かれたら困ります。森を壊して移すのは分かります。でも、火を強くしすぎると根も種も死にます。煙で外縁を押すなら、中心部は残してください」

「その中心部がどこか、まだ分からない」

「だから先に見る必要があります」

少年が言った。

「入るのか」

メイドが聞く。

少年は少し迷ったが、頷いた。

「入口だけです。植物相を見るなら、僕と彼女が行った方が早いです。でも奥までは行きません。戻れなくなると思います」

「行かせない」

解剖医が即座に言った。

「怪我をしたら終わる」

「怪我をしない範囲で見るだけです」

「その範囲を君たちは知らない」

「なら、範囲を決めてください」

少年の返しは静かだった。解剖医は少しだけ黙った。言い返せないわけではない。だが、必要な情報を得るには、植物を見られる者を出すしかないことも分かっている。

メイドは図を見ながら判断した。新人を戦わせる気はない。だが、植物を見る役目はある。危険だから置いていく、で済ませると桃の種の判断ができない。連れて行くなら、入口まで。奥へは入れない。血を出させない。戻る線を探偵が作る。解剖医が怪我を見張る。メイドが引き戻す。フリートは地下で手順を組む。

「入口調査だけだ」

メイドが言った。

「探偵が道を作る。解剖医が危険を止める。植物を見るのは二人。ただし線を越えたら引きずって戻す。青年は行かない」

「なんで俺だけ」

「転ぶから」

解剖医とメイドが同時に言った。青年は棚板を抱え直し、少し拗ねた顔をした。

フリートは紙に新しい手順を書いた。第一段階、入口調査。第二段階、中心部推定。第三段階、外縁火入れ準備。第四段階、フェアリー移動誘導。第五段階、桃種奪取。第六段階、土壌・果実・枝回収。第七段階、痕跡消去。書き終えると、紙の端を軽く叩いた。

「まだ入口調査までです。燃やすのは次以降。ここで急ぐと、フェアリーの処理動線に乗ります」

「誰に説明している」

メイドが言うと、フリートは顔を上げた。

「全員です。特にメイド」

「私は急がない」

「処刑場で急がなかっただけです。普段は急ぎます」

探偵が少しだけ笑った。解剖医は笑わず、入口調査用の布を選び始めた。女と少年は、果皮の破片をもう一度見て、互いに短く話し合っている。青年は不満そうに棚板を削っているが、角は前より丁寧に落としていた。

その夜、探偵と解剖医と新人二人、そしてメイドはフェアリー候補地の外縁へ向かった。フリートは地下に残り、地図と手順を整理する。王女は行かない。断頭剣も動かさない。地上の神殿は蔦に覆われ、外から見ればさらに荒れた墓所になっていた。

森の外縁は、探偵の言った通り静かだった。危険な森は、もっと分かりやすく危険であってほしい。獣の匂い、腐った死骸、虫の羽音、踏み荒らされた草。そういうものがあれば警戒できる。だが、ここにはそれがない。土は湿っているのに腐敗臭がない。枯葉はあるのに虫が少ない。遠くで鳥が鳴いたが、その声も途中で切れた。道はないはずなのに、歩きやすい隙間だけが続いている。足音は苔に吸われ、枝は人が通る高さだけ不自然に空いていた。

「入るな」

解剖医が小さく言った。

「まだ入っていません」

女が答える。

「入っている気分になった時点で危ない」

探偵は地面に小さな印をつけた。帰り道のためではない。帰り道に見える場所が本当に帰り道かを確認するための印だ。メイドは周囲を見た。確かに、奥へ進みたくなる。足元が楽で、枝が少なく、薄い甘い匂いがある。警戒しているのに、身体の方が少し前へ出ようとする。これは道ではない。誘導だ。

少年が膝をつき、苔を見た。触ろうとして、解剖医に止められる。少年は手を止め、指を近づけるだけにした。

「これ、普通の苔じゃないです。踏まれるのを嫌がってない。むしろ踏ませている感じがします。足音を消して、柔らかくして、奥へ行きやすくしてる」

女は低い枝を見た。

「枝も変です。戻る時に邪魔になる向きで伸びてます。入る時は楽だけど、出る時には引っかかる。これ、人が剪定したみたいに見えるけど、たぶん植物の方がそう育ってる」

「フェアリーが環境を使っている」

メイドが言った。

探偵が奥を見た。

「供物置き場はこの先だ。だが今日は行かない」

「行かない」

メイドは即答した。行きたくなる道だった。だから行かない。奥へ入るための判断は、次の段階でいい。今日は森が口を開けていることを確認できれば十分だった。

その時、風がわずかに動き、甘い匂いが強くなった。女が一歩、足を出しかけた。本人も気づいていないようだった。メイドは肩を掴み、後ろへ引いた。女ははっとして、自分の足元を見る。線を越えかけていた。探偵がつけた印より、半歩奥に足が入っている。

「すみません」

声が小さかった。

「謝るな。覚えろ」

メイドはそう言い、森の奥を見た。何かがいる気配はない。羽音もない。小さな姿も見えない。だが、もう見られているのかもしれない。フェアリーは正面から出てこない。森が先に触れてくる。

少年が小さく言った。

「果樹はあります。奥に。見えないけど、匂いが少し違う。花じゃなくて、実の匂いに近いです。でも桃かは分かりません」

「十分だ」

メイドは引く判断をした。ここで欲張れば、処理動線に乗る。果樹の存在は完全ではないが、可能性は見えた。フェアリーの森は本命でいい。次は燃やすための外縁と、逃がす方向を決める。桃があるかどうかは、その後に確認する。

帰り道は、来た時より少し長く感じた。探偵の印がなければ、同じ場所を歩いているかどうか分からなかっただろう。低い枝が外套に絡み、苔が足音を消し、甘い匂いが背中を押す。メイドは女と少年を前に出さず、解剖医は二人の足元だけを見ていた。血は出ていない。転んでもいない。それだけで、今日は勝ちだった。

森を抜けたところで、青年がいないのに青年の声が聞こえた気がした。気のせいだ。甘い匂いが残っている。フェアリーの領域は、外へ出ても少しだけ身体に残るらしい。メイドはその不快さを覚えた。次に来る時は、煙で押す。火で追う。森の口を閉じるのではない。別の魔族の住処へ向けて、口ごと動かす。

地下へ戻ると、フリートが待っていた。彼女は全員の顔を見て、血が出ていないことを確認し、紙へ一行足した。

「入口調査完了。フェアリー領域、本命」

女は疲れた顔で頷いた。少年は水を飲み、すぐに通気穴の根を見に行った。解剖医は二人の足を確認し、探偵は地図に新しい線を書いた。メイドは椅子に座り、肋の痛みを押さえながら森の匂いがまだ鼻の奥に残っているのを感じた。

フリートは次の紙を出した。

「次は火入れの設計です。燃やすのではなく、移動させます。中心部は残す。桃の可能性がある果樹を焼かない。逃がす先は獣系魔族の住処。痕跡は自然火災か、獣系魔族の不始末に寄せる」

「やることが増えたな」

メイドが言うと、フリートは即座に返した。

「桃を木刀にしたいと言い出した時点で増えています」

正しい。腹立たしいほど正しい。

フェアリーの森は見つかった。桃はまだ見ていない。種もない。だが、そこに外界にない果樹がある可能性は高い。フェアリーは倒さない。森を燃やして移動させる。魔王軍の別の住処に押し付ける。空いた中心部から、種と果実と枝を取る。

鬼を狩るための木刀は、まだ木ですらない。

けれど、その木になるかもしれない場所だけは、ようやく見えた。

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