首輪を嵌められよう
皆さん、大変お待たせしました!
「……なんでこーなるの」
「──大人しくすれば、その身の安全だけは約束しよう。だが、少しでも妙な真似をすればこちらにも考えがある」
「はいはい、何もしませんから」
意識を送った王城の俺。
なぜかこちらの俺は兵士やクラスメイトたちに包囲されており、武器を突きつけられて捕まるように脅されていた。
魔力を動かすのも不味い気がするので、とりあえず両手を挙げておく。
こっちの世界だとそれでも魔法が使えるので、警戒はまだ続くようだ。
「何をしている、さっさと首を見せろ」
「はいはい……これで俺も囚人かー」
何をするかはご想像通り、無骨な首輪が俺の首に嵌められる。
すると、体はひどい虚脱感に襲われ……ガクリと身動きが取れなくなってしまう。
「イム君、今の君には容疑が掛けられているからこうするしかない。けど、僕は君が何もしていないと信じている! 安心してくれ、絶対に助けてみせるから!」
「…………そっか」
「イム君?」
「いや、なんでもない。ただ、もしそうなら一人っきりか逆に人がたくさんいる場所にしてほしい。見張りと二人っきりとかになるぐらいなら、どっちかの方がいい」
分かる人には分かるヒント。
精神誘導を受けているユウキは当然無駄だろうが、まだ無事かもしれない奴には通用するはずだ。
「……黙れ、大人しくついてくるんだ」
「はーい。じゃあ、頼んだぞ」
「あっ……い、イム君!」
「任せたからなー」
とりあえず、今は脱出の時に必要なことをやっておくべきだな。
小さく[マップ]と呟き、ルートを把握するとか……まあ、そういうことだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「──なるほど、そういうことか」
首輪を外し、事情を洗いざらい記憶から取りだしたことでようやく納得する。
どうやら『俺』は捕まることで、自由な時間を確保したかったらしい。
「予め催眠で細工をさせた首輪を使わせ、ここに来れば外れる。あとは状況を俺が理解して、勝手に行動をするわけか」
催眠魔法は偉大なので、誰もそのことに気づくことはない。
その気になっていれば、俺を捕らえておく場所もVIPルームにできたんだろうな。
「……まあでも、ここなら寝るのに困らないか。ちょうどいい──『招来』」
首輪には、魔力を操りづらくする魔力妨害と少しずつ弱らせる活力吸収が付与されていて、嵌めている間は身動きが取れなくなる。
だからこそ、俺の願いを誰かが叶えてくれた……どうせ逃げられない雑魚を、放置できる場所に隔離した。
周りに誰も居ない牢、ただし部屋から出ようとすれば魔道具が警鐘を鳴らす。
しかし、魔法を使って呼べば……まったく問題なく、呼びだせるのだ。
魔力を使えばバレるのだが……そこは持っているスキルの一つを使用して、予め発動前の状態で保存しておいた魔法を、魔力消費ゼロで発動させて誤魔化す。
「……あっ、なんだマスターか」
「オム、お前の出番だ」
「出番かー、出番ねー。……少し待って」
呼びだしたのは中性的な子供。
ラームは少女っぽい無性だが、コイツは少年っぽい中性だ……顔立ちとかは、少女よりなんだけど。
そんなヤツなんだが、俺の従魔としてもっとも『らしい』ヤツだ。
具体的に言うと……割と面倒臭がり。
「……Zzz」
「寝るな。俺だってやる気はないけど、何もしないでずっと待つ生活がいいのか?」
「うげー、それは嫌だな……マスターの言うことを聞かないでサボる、だからこそのサボりだっていうのに」
「そういうことだ。このままだと、俺は殺されて契約が解けるぞ」
なお、こいつに催眠魔法は効かない。
その催眠魔法を俺に与えた【停導士】の力にどっぷりと嵌っているので、催眠魔法の効果よりもサボりの感性が強いのだ。
しかし、コイツはそれゆえに俺に従属することを誓っている。
本来のオムの種族では、コイツのような考え方を持つことなどほぼ不可能だから。
「分かりました、分かりましたよマスター。それで、ぼくは何をすればいいんですか?」
「護衛」
「隠れて?」
「暗殺者っぽいヤツが来たら迎撃と捕縛。他の奴は無視でいい。俺が一人でいるように見えるなら、隠れ方は自由だ」
実はクラスメイトでした、みたいな展開は避けておきたいのでそういう指示だ。
いちおう暗殺者系の職業だったクラスメイトもいたし、そういう配慮をしておく。
「はーい」
「それじゃあよろしく」
「ういうい」
頷くと、スーッと体が溶けるように消えていくオム。
魔力はいっさい使っていないので、警鐘がなることも無い。
だからコイツを呼んだわけだが……出番、無い方がいいんだよなー。
「って、こういうことを考えた方がフラグになるんじゃ……」
「──しなさいよ!」
「ダメです! ──様、どうかお引き取り下さい!」
「あー、えっと……マジか」
牢があるのは王城の離れに塔っぽい場所の地下なのだが、上で何やら揉めているような声が聞こえてくる。
そして、その声の内片方が、俺にはひどく聞き覚えが合って──
「邪魔するわよ──イム!」
「えっと……誰だっけ?」
「なんで憶えてないのよ!」
必中スキルの持ち主にして、ユウキハーレムの一員であるはずの和弓女子。
なぜか彼女が、この場にやってきたのだ。
それでは、また一月後に!




