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success!  作者: kimberlite
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episode29・3回戦(1)

 いつもよりもスタンドか賑やかな今日の球場、無理もない。相手は甲子園最有力の中森商業。今までとは注目度が違っていた。


「中森の初戦はラムタラか、勢いがあるとは言っても、実力差はそう簡単に覆せないぞ」

 スタンドには神楽坂が試合を見に来ていた。そんな彼の横に座る一人の中年男性。

「神楽坂くんか、久しぶりだな」

「影山さん、こちらこそご無沙汰してます」

 影山はそのままビデオカメラとスタンドを取り出し、それをセットしている。

「まあ、目当ては中森の選手だよ、特に八代と本田、君の母校には気の毒かもしれないけど」

 影山はそういいながら機械のセットアップをしており、神楽坂もその様子を見ながら話す。

「スカウトの目線ではそうなりますよね、私は記者として中森を注目してますが、OBとしてラムタラにも注目してますよ」

「そうか、いい試合になるといいな」


 選手たちがグラウンドで準備を始めている。影山はブルペンで投球練習をしている八代を見ながら呟く。

「左であれだけのボール、彼はかなりの大物だ……ん?」

 ラムタラ側のベンチを見る影山は、投球練習をしている選手、若菜に驚き、思わず立ち上がる。

「あの時の女の子じゃないか」

「影山さん、あの子と面識があるんですか?」

 影山の様子に驚く神楽坂、彼の問いに影山は若菜と出会ったときのことを話す。

「八代くんを初めて見た試合で、彼女も彼を見に来てたんだ。てっきり高校野球のファンかと思っていたが、選手だったとは……。しかもストレートは八代くんにも見劣りしないぞ」

「そうだったんですか」

 神楽坂は影山の話を聞いて納得したようにうなずく。すると、影山は神楽坂にこういった。

「なるほど、君がこの試合を見に来たわけがわかったよ、いつもは夏の試合なんて見に行かない君が」

 影山はそう言うと試合を見る眼差しへと変わった。彼は鋭い眼光で選手を見つめはじめた。


 選手たちが整列して試合開始のサイレンが鳴った。後攻の中森商業、先発投手の守がマウンドへ立った。

「1番、ライト、奥居くん」

 ラムタラの先頭打者は奥居、これは柏木の判断であった。八代相手に普通のオーダーを組んでも勝算は薄い。そこでムラはあるが、チームに勢いを与えられる奥居を1番に起用する博打に出たのだ。


 柏木の賭けは成功する。打球の勢いはなかったものの、ポテンヒットとなりノーアウト1塁。

 続くケンの打席、その初球は外にはずして1ボール。

「(左で油断してるのか、クイックが遅いな)」

 2球目に奥居は盗塁を決めた。元々盗塁しづらい左ということもあってか、八代はクイックをあまりうまくなく、そこを突いた形でチャンスを広げる。

「ナイバン!」

 送りバントを決めて1アウト3塁。続く打者は3番に座った島岡。彼の当たりは外野フライだが、距離は十分、犠牲フライでラムタラは中森から1点を先制してみせた。

 続く今井はフォークに空を切って空振り三振。しかし、ラムタラが先制したことで、球場内に不穏な空気が流れ始めていた。



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