episode28・再会
「阿藤、やっぱりお前はやる男だと信じてたぜ」
試合後の更衣室で奥居がそう言って阿藤を称える。逆転のホームラン、ピンチを作るエラー、それを帳消しにするバックホーム。確かにこの試合は阿藤雄一のワンプレーが随所に目立ち、彩られていた。
「いや、でも……。あの場面は上杉さんもナイスブロックでしたし」
阿藤は謙遜して答えるなか、柏木は阿藤に声をかける。
「お前のバックホームに上杉も応えたんだろ。どちらにしても阿藤、お前のおかげでこの試合は勝てたんだ」
柏木もそう言って阿藤を盛大に労う。自分に対する自信不足が目立つ阿藤には、多少大げさに誉めた方が彼の成長に繋がると、柏木は判断していた。
「真弓はまたあのマッサージか、さて今のうちに帰るかな」
若菜は一人で球場を出ていた。最後の激しいブロック、幸いにも真弓にケガはなかったものの、それを心配した舞によるマッサージの餌食になった。
「感触も効き目も殺人級だからね、積極的に受けたい訳じゃないかな。……」
若菜の前に一人の男が現れ、その男は彼女に声をかけた。
「若菜、2回戦突破おめでとう」
「八代くん……」
彼こそが次の試合の相手で甲子園最有力候補の中森商業、その1年生投手、八代守であった。
「見てたよ、試合。相変わらず凄いピッチングだったよ」
「ありがとう」
守が若菜のピッチングを高く評価している。それに若菜もお礼の言葉を返すと、守の雰囲気が一変して、若菜に言い切る。
「それでも、次は負けない」
「チームの総合力はそっちが上だけど、こっちもそう簡単には勝たせないよ」
守の発言に対して、若菜も強気に返す。
「いい試合になるといいな」
「ええ、そうね」
それだけをいった二人は、別方向へと歩き出した。
「こいつが5番の本田寿、1年ながらクリーンナップを打っている要注意のスラッガーだ」
その翌日、視聴覚室にて中森商業のビデオを見ているラムタラ野球部、柏木は敬子のデータを元に選手を解説していく。
「次は投手、エースは3年の中田研二、右のオーバーハンドだ。これといった決め球があるわけではないが、高い制球力が武器の技巧派だ。しかし、恐らく先発してくるのはこいつだろう」
そう言って柏木がビデオに映し出したのは守であった。
「八代守、1年生ながら140キロを越えるストレートと落差のあるフォークを武器するサウスポー。中田との比較なら、ダブルエースと呼んでも差し支えないほど遜色ないだろう」
そう言うと、柏木は紙を手に取って、全体に声をかけ、彼は中森商業戦のオーダーを発表し始める。
「氷室、先発はお前だ」




