episode26・2回戦(1)
2回戦が始まろうとしている。都内某所の球場で試合前の整列をしている鏡巡とラムタラナイン、若菜の向かいには五月が立っていた。
「氷室さん、この前はぶつかって申し訳ありませんね」
「いえいえ、こちらこそ、今日はよろしくお願いします」
二人が言葉を交わすと試合開始のサイレンが鳴り、後攻のラムタラナインが守備についた。
ラムタラのマウンドには早瀬ではなく、若菜が立っている。真弓も今日はマスクを被っており、先発バッテリーを組むことになった。
「1番ショート、野原くん」
アナウンスが流れ、先頭打者が左打席に入り、審判はプレイを宣告した。若菜が振りかぶって第1球を投げる。そのボールは野原の足へと当たった。
「デッドボール!」
足を痛そうに押さえる野原であったが、一塁へと向かう。その間に真弓はマウンド上の若菜へと駆け寄り、声をかける。
「力みすぎだよ、リラックスリラックス」
「う、うん……」
若菜は帽子を深くかぶり直し、大きく息をついた。三塁コーチボックスにいた五月は若菜の表情の変化を見逃さなかった。
「あのまま呑まれてくれればよかったのに」
五月はそう呟きながら次の打者、尾崎にサインを出した。
尾崎は若菜の初球に対して送りバントを行う。しかし、若菜の球威が勝ったか、打球の勢いを殺しきれずにピッチャー真っ正面へ転がり、若菜が捕球した。
「セカンド!」
真弓の指示で素早く2塁に送球する若菜、2塁はそのままアウトになり、送りバントは失敗、1アウト1塁となる。
「氷室、ナイス!」
今井から声をかけられ、若菜はマウンドへと戻っていく。
「3番、センター上川さん」
3番打者でチームの主将、五月が左打席に入った。五月は若菜の初球に対して手を出すが、レフト側へのファールとなった。
「(遅れてるけど、これならどう?)」
五月は先程よりもバットを短く持ち、速球にタイミングを合わせようとした。これを見逃す真弓たちではない。速球狙いをはずすべく緩いカーブのサインを出した真弓、若菜もそれに頷いてセットポジションに入る。
「……!」
若菜が投球動作に入ったところで、1塁ランナーの尾崎が走り出した。それを見た島岡が2塁のベースカバーに入るが球速の遅いカーブであったことから、送球は間に合わずセーフ、結果的にランナーを2塁へと進めてしまった。
2塁にランナーを進められたが、2ストライクと追い込んでいる。若菜は外角へ速球を投げるが、これに五月はこれを流し打つ。ライン際の打球はフェアが宣告され、2塁ランナーの尾崎は本塁を踏んだ。後続の打者こそ打ち取ったものの0-1、五月の頭脳プレーに翻弄された若菜は初回から鏡巡に先取点を許してしまったのだった。




