episode17・梅雨とライバルの予感(1)
強豪校に勝利したことで俄然練習への熱が入るラムタラ野球部、しかし6月に入るとその熱の勢いは急速に削がれてしまった。
教室内に窓に滴る水滴を見つめる2人の少女、若菜と真弓が話している。
「はあ、今日も雨」
「こればっかりは仕方ないよ」
梅雨による連日の雨、ときたまの晴れもグラウンド整備に追われ、満足な練習ができない状態が続いていた。
「全くだ、屋内練習場があれば話は別だがな」
二人の会話にケンが割って入ってくる。ケンの言う通り、屋内練習場があれば雨の日も練習することができる。だが、そんな設備を持つのはこの前戦った西優クラスの強豪に絞られるのもまた事実であった。
結局、練習できないままにフラストレーションだけが溜まっていく若菜たちであった。
「だったら屋内で練習できるように工夫したらどうだい?」
小さな段ボールを抱えた島岡が若菜たち3人に話しかけてくる。
「なにかいい方法でもあるの?」
若菜が島岡に問いかけると、彼は段ボールを空けてその中身をひとつ取り出す。
「あ、紙ボール……」
「おお、その手があったか!」
真弓がその中身を声に出すと、ケンが勢いよく他の紙ボールを取り出す。
誰しも一度は、ガムテープで丸めた紙ボールを使って遊んでいる男子を見たことがあるだろう。この様子を見ていた島岡は、紙ボールであれば室内での練習ができると考えて、大量に製作したようだ。
「じゃあ、机を動かすか」
ケンがそういうと校内放送のアナウンスが鳴る。
「1年C組、氷室さん、上杉さん、いらっしゃったら職員室まで来てください」
突然の呼び出しを不審がる4人、ケンが若菜の方を見ると、若菜は首を横に降っており、真弓に引っ張られる形で職員室へと向かった。
「「え~!」」
職員室に向かった若菜と真弓は、驚きのあまり大声を出し、職員室の先生から睨まれる。
「そう驚くな、うちの野球部OBで現在は『スチューデンツ・ベースボール』の記者をやってる神楽坂昌也さんという人が、お前たちを取材したいそうだ。まあ、コネだな」
柏木は事情を説明して、二人を落ち着かせようとする。
「いや、驚きますって」
「あのデンベーからなんですよ」
しかし、二人の驚きは止まらない、『スチューデンツ・ベースボール』とは読んで名のごとく、学生野球を取り扱う雑誌でラムタラ野球部の中にも愛読者がいるほどの人気雑誌、柏木も言うようにコネとはいえ、ラムタラ野球部が取材されるのは前代未聞であった。
「で、編集長は俺の1期生だから、ついつい二つ返事でな」
柏木は軽い口調で爆弾発言をする。彼によると取材は明後日、放課後に迎えが来るということだった。もはや拒否権はないことを悟った二人は大きなため息をつくことになった。




