episode10・エースナンバーを目指す者
練習試合で逆転勝利を収めたラムタラナインは、翌日以降も練習を重ねる。若菜たち一年生も徐々に上級生たちについていけるようになっていった。
そんな中、野球部にビッグニュースが届く。
「西優学園から練習試合の申し込みが来た」
柏木の一言で部員たちがざわめく、西優学園は、聖ラムタラ学園の地区において中森商業と並んで二強と称される学校であり、甲子園には幾度も出場していた。
「これを受諾するかどうか迷うところだが、どうしたい?」
今井は部員たちの様子を見る。阿藤のように実力差に萎縮する部員もいれば、島岡のように実力を試したいと思う部員たちもいる。その様子を見た今井が判断に迷っていたが、少しの間をおいて決断する。
「やりましょう。今年は有望な一年生が多数入りました。夏を占う意味でも、非常に意義があると思います」
「よし、それじゃあ、向こうにも伝えておく、試合は来週の日曜日。各自調整しておいてくれ」
部員たちが勢いよく返事をすると、この日の練習が始まった。若菜はブルペンに向かい、投球練習を開始する。
心地よいミットの音が響き、捕手からは「ナイスボール」の声。若菜は捕手からの返球を受け取る。すると、真弓がブルペンにやってきて、ブルペンにいた捕手と入れ替わった。
「今日は変化球を交えていこう」
真弓の指示に了承した若菜はストレートだけでなく、変化球を投じはじめる、若菜の持ち球はストレートとカーブ。しかし、この2球種だけでは厳しいと考えており、若菜はスライダーの習得に励んでいた。
「……」
若菜の投球練習を見ながら、ウォーミングアップを行っていた早瀬も若菜に負けじと、投球練習を始める。球速で劣っている以上、それ以外の要素で活路を見出さなければ、エースとしての面目を保てない。柏木は早瀬にエースとしての面目を保てるピッチングスタイルの模索を命じており、彼はその意気に応えようとしていた。柏木は彼の性格を考慮して、早瀬を現時点でのエースに据えたのである。
「今日もいいボールだったよ」
若菜と真弓は投球練習を切り上げて、他の練習へと移動しようとする。そのとき、早瀬が若菜たちに話しかけてきた。
「氷室、悔しいがお前の方が球は速い。だが、俺はエースになるために、己を磨く」
それだけをいって早瀬は投球練習を開始した。




