episode9・練習試合(3)
反撃のムードが最高潮に達した八回表の攻撃。前の回に打者一巡の猛攻を見せていたラムタラナインに対し、リリーフを送るかと思われたが祥村ベンチは投手を続投させてくる。
カキィィン!
先頭のケンが初球をライト前に運び、ノーアウト1塁、続くバッターも絶妙なバントを見せて得点圏へとランナー進める。続くバッターは前の打席でヒットを放っている真弓、ここでキャッチャーが立ち上がる。
敬遠であった。祥村の投手はツーシームで打たせてとるピッチャーであるため、球筋に慣れていなければ打つのは難しく、次のバッターは今日初打席の若菜、ランナーを埋めて併殺をとりやすくしようという算段であった。
「ボール、フォアボール」
審判に宣言されて真弓は一塁へと行く。そして、若菜が左打席へと入っていった。
「プレイ!」
祥村バッテリーの初球はツーシーム、若菜は見送ってカウントは0-1。
二球目に投じられたのも外角のツーシーム、若菜はこれを打つが、三塁側ファールゾーンに飛んでツーストライクと追い込まれる。
三球目に投じられたのは外角ボールゾーンのカーブ、見送って1-2。
恐らく次が勝負球、ツーシームかカーブか、相手としてはツーシームで併殺が欲しい場面だが、そのタイミングで待っていれば、カーブとの緩急差を捌けない、祥村バッテリーはその配球でラムタラ打線をてこずらせてきた。若菜の読みと、祥村バッテリーの読み。勝つのはどちらか……。祥村の投手は四球目を投じた。
投じられたのは内角のツーシーム。若菜の読みは的中した。金属音が響いた後、ボールはライトのフェンスを越えていく。
逆転のスリーランホームランであった。8-7、ついに逆転した。
その後は追加点を得られずに、相手の攻撃を迎えたが、若菜のピッチングは冴え渡り、8回と9回を0点に抑え、8-7で聖ラムタラ学園が勝利した。
試合後、河内が柏木に話しかける。
「あの女の子バッテリー、かなりの逸材だな」
「ああ、本当は誰にも見せる気はなかったんだがな、意外と試合展開が苦しくて投入することになったよ」
「今夜、飲みにいかないか?」
そう言って監督たちは、酒屋へと向かい、昔話に花を咲かせた。
若菜は高校初打席をホームランで飾り、投げては2イニング1/3を被安打0に抑える好リリーフを見せ、公式戦に向けて確かな手応えをつかんでいた。もちろん、若菜だけでなくケンや、真弓といった一年組は好成績を納めており、先輩たちにもいい刺激となっていくことであろう。




