第38話 七年前の夢の声を元運営社員に確認したら、俺はサービス終了後も運営と会話していたらしい
午前三時十一分に送ったメッセージへ、高城さんから返信が来たのは午前六時四十七分だった。
《起きています》
《夢の内容を、覚えている範囲だけ書いてもらえますか》
俺はベッドの上で昨夜の記憶を辿り、できるだけ余計な解釈を入れずに文字へ起こした。
《暗い場所》
《ゲーム時代の半透明画面》
《接続状態――異常》
《地球側通信――不安定》
《男性の声》
《レグナ、聞こえるか》
《ログアウトするな》
《まだ、そっちにいるな》
《今から説明する》
《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》
送信してから一分もしないうちに、今度は電話が鳴った。
「もしもし」
『如月さん。その言葉、夢の中で間違いなく聞いたんですね』
いつも落ち着いている高城さんの声が、少し硬い。
「全部一字一句って保証はできません。でも、最後の部分はかなりはっきり覚えてます」
『《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》』
「はい」
電話の向こうが静かになった。
「高城さん?」
『今日、施設へ来られますか』
「行けますけど……何か知ってます?」
『確認したいことがあります。ただ、先に答えを伝えると、如月さんの記憶に影響するかもしれません』
「ああ」
昨日と同じだ。
俺が知らない情報と、頭の中へ戻ってきたものを照合するなら、先に答えを聞かない方がいい。
「分かりました。何も聞きません」
『ありがとうございます。それから』
「はい」
『小松原さんへ連絡を取っても構いませんか』
その名前には覚えがあった。
高城さんと同じ《アークライト・オンライン株式会社》で働いていた元社員。七年前、サービス終了三日後に停止済みの端末が勝手に起動した時、その場にいた三人のうちの一人だ。
「もちろん。本人が嫌じゃなければ」
『では、こちらから事情を説明します』
電話が切れたあと、俺はしばらくスマホを見つめていた。
昨夜までなら、ただの妙な夢で済ませていたかもしれない。
けれど、三百年前の契約書へ描いた落書きを、今の俺が何も見ずに再現したばかりだ。豆を皿の底へ隠したことまで思い出した。
つまり、俺の夢には時々、本当に知らないはずの記憶が混じっている。
そして今回は、アステリア側ではなく。
地球側の声が出てきた。
◇
午前九時半。
政府施設の会議室には、俺、高城さん、水城さん、黒田医師が集まっていた。アステリア側からはノアだけが通信で参加している。
リゼルも来ようとしたらしいが、今日は王国側の公務がある。
《陛下の御身に異常がございましたら即時御連絡ください》
という通信が朝から三回来ているので、心配していないわけではなさそうだ。
「まず、昨日と同じことを確認します」
黒田医師が俺の前へ椅子を引いた。
「無理に思い出そうとしない。頭痛、吐き気、強い眠気、現実感の低下などがあれば、その場で中止します」
「分かりました」
「思い出せないことは失敗ではありません」
「はい」
「ノアさんもです」
画面の向こうで何枚もの記録を開こうとしていたノアの手が止まる。
《私?》
「如月さんへ答えを教えないでください」
《まだ何も言ってない》
「顔が言っています」
《高城も言う》
高城さんが小さく笑った。
「ノアさん、昨日からかなり分かりやすいですよ」
《……人間、三百年で顔を読む能力上がりすぎ》
「こっちは三百年経ってません」
少し空気が軽くなったところで、検証が始まった。
俺は昨夜の夢を最初から説明した。真っ暗な場所。半透明の画面。赤い警告。そして、男の声。
「声そのものに聞き覚えは?」
「ないと思います。少なくとも、今の俺が知ってる人じゃないです」
「年齢は」
「三十代から四十代くらい……かな。そこは自信ないです」
「話し方は?」
「仕事中っぽかったです。慌ててるけど、何とか落ち着いて説明しようとしてる感じで」
そこで高城さんと水城さんが視線を合わせた。
まだ何も言わない。
「続きは?」
「《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》の後で起きました」
「その前に、あなた自身は何か話しましたか」
「一回だけ。《誰だ》って」
「それだけ?」
「覚えている範囲では」
高城さんがゆっくり息を吐き、机の上の端末をこちらへ向けた。
「ここから先は、答えを開示します」
「お願いします」
「七年前。サービス終了から三日後、停止したはずの業務用端末が起動した時、私以外に二名の社員がいました。その一人が小松原直樹さんです」
「覚えてます」
「私は保守メニューを操作していました。ですから、音声確認を行ったのは私ではありません」
嫌な予感というより。
何となく、答えが見えてきた。
「小松原さん?」
「はい」
高城さんが頷く。
「あの日、小松原さんはヘッドセットを使っています」
俺は椅子へ座り直した。
「でも、第十七話――じゃなくて、前に確認した記録だと、アステリア側から音声が来たって話だけでしたよね」
「その通りです。小松原さん自身も、当時の聞き取りでは《陛下と呼ぶ声を聞いた》ことしか話していません」
「じゃあ地球側からは?」
「試験的に、何度か呼びかけています」
「記録は?」
「残っていません」
音声保存に失敗した。
それは以前から分かっている。
七年前の作業報告に残っているのは、保守メニューの表示と操作履歴だけだった。
「ただ」
高城さんの表情が変わる。
「私には、一つだけ覚えている言葉があります」
「何です?」
「小松原さんが画面へ向かって」
一度、間を置いた。
「《レグナ、聞こえるか》と言いました」
背中がぞくりとした。
昨夜。
夢の中で最初に聞いた言葉。
俺はそれを。
高城さんから一度も聞いていない。
「その後は?」
「覚えていません。七年前ですし、当時は全員混乱していました」
「《ログアウトするな》は?」
「それは……」
高城さんが首を横へ振る。
「私は覚えていません」
水城さんが確認する。
「記録にもありません」
ノアも王国側の資料を調べたが、当然出てこない。
《地球側の会話は記録できてない》
つまり。
まだ半分だけだ。
俺の夢が七年前の出来事と一致したと言うには足りない。
「小松原さんは?」
「現在、映像通話へ参加する準備をしていただいています」
高城さんの端末へ通知が届いた。
「御本人から許可が出ました」
◇
『久しぶりですね、高城さん』
画面に映った小松原直樹さんは、以前見た時と変わらない、ごく普通の四十代の男性だった。
現在も別会社で社内システムを管理しているらしい。
『如月さんも、お久しぶりです』
「また七年前のことで申し訳ないです」
『いえ。むしろ、あの日のことがまだ続いてる方が驚きですよ』
「ですよね」
『普通は始末書二枚で終わる話です』
高城さんが眼鏡の奥から睨む。
「書いたのは私です」
『だから覚えてるんですよ』
「一枚は小松原さんの報告不足が原因でした」
『それ今言います?』
元同僚。
少しだけ当時の空気が見えた気がした。
「小松原さん」
水城さんが本題へ戻す。
「今回は、如月さんが昨夜見た夢について確認させてください」
『聞いています』
「如月さん。先ほどの言葉を」
「はい」
俺は画面を見る。
「夢の中で、男の人がこう言いました」
一つずつ。
ゆっくり。
「《レグナ、聞こえるか》」
小松原さんの表情が止まる。
「《ログアウトするな》」
眉間へ皺が寄った。
「《まだ、そっちにいるな》」
『……待ってください』
「はい」
『最後は?』
「《今から説明する。君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》」
画面の向こうで。
小松原さんが椅子の背へ身体を預けた。
『それ』
声が低くなる。
『俺です』
誰も話さなかった。
「覚えてるんですか」
『全部じゃありません。でも、《ログアウトするな》は言いました』
「どうして?」
『画面に、接続中のユーザーが表示されたからです』
「ユーザー?」
『はい』
七年前。
サービス終了から三日後。
ゲームはもう終わっている。
一般プレイヤーはログインできない。
それなのに。
保守用端末。
未実装の王権接続画面。
その隅へ。
一つだけ。
ユーザー表示が出た。
『REGNA』
俺のプレイヤー名。
「それ、記録に残ってました?」
『残ってないと思います』
高城さんも頷いた。
「表示時間が短すぎました。画面保存を実行した時には消えていました」
『俺は最初、不正接続だと思ったんです。サービス終了後なのに誰かクライアントを動かしてるのかと』
「だからログアウトするなって?」
『はい。接続元を調べるまで切るな、と』
「《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》は?」
小松原さんは数秒考えてから、苦笑した。
『たぶん、それも俺です』
「たぶん?」
『当時の画面に、妙な数字が出てたんですよ』
「数字?」
『ゲーム内時間です』
高城さんが補足する。
「停止しているはずの世界時刻が更新され続けていました」
『サーバーは止まってる。それなのにアステリア側の時間だけ進んでる。建物の状態も、人員情報も、毎秒変わっていた』
「それで」
『俺、画面の向こうに本当に誰かいるとは思ってませんから』
小松原さんが少し照れたように頭を掻く。
『残ってるテスト用AIか何かだと思って、説明したんです。《お前がログアウトしてる間も、この国動いてるぞ》って』
言葉は少し違う。
けれど。
意味は同じ。
夢の中。
《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》
「じゃあ」
黒田医師が静かに確認した。
「現在の如月さんが知る方法のない会話が、夢に現れたことになりますね」
高城さんはすぐには頷かなかった。
「小松原さんが過去にどこかで話した可能性、記録が別の場所へ残っている可能性まで調べる必要があります。それでも、これまでより一致度は高いと思います」
「問題は」
俺は画面を見る。
「何で俺が聞いてるんですか」
七年前。
その時の俺は。
自宅にいた。
ゲームはもうアンインストールしていた。
当然。
運営会社の保守室にいる小松原さんの声なんて聞けるはずがない。
『そこなんですよ』
小松原さんの顔から笑みが消えた。
『実は、俺も一個だけ黙ってたことがあります』
「黙ってた?」
『黙ってたというか、あまりにも馬鹿馬鹿しくて言わなかった』
「何です?」
『返事が来たんです』
◇
「返事?」
『はい』
俺より先に、高城さんが画面へ近づいた。
「小松原さん、それは初耳です」
『高城さんにも言ってなかったと思う』
「なぜです」
『音じゃなかったからです』
俺たちは顔を見合わせる。
「じゃあ何で?」
『テキスト欄です』
保守画面。
画面下部。
普段なら運営からユーザーへ案内を送るための簡易通信欄があった。
小松原さんが「レグナ、聞こえるか」と呼びかけた直後。
その入力欄に。
向こう側から文字が表示された。
『最初は一言だけでした』
「何て?」
小松原さんは目を閉じた。
『《聞こえてる》』
心臓が強く鳴った。
「それ」
『覚えがありますか』
「……ない」
まだ。
何も浮かばない。
黒田医師がすぐ止める。
「思い出そうとしなくて大丈夫です」
「はい」
小松原さんが続けた。
『俺も驚いて、誰だって聞きました』
「返事は?」
『《レグナ》』
「俺じゃん」
『俺もそう思いました。それで、本人確認しようとして』
「何を聞いたんです?」
『《今どこにいる》』
「それは普通ですね」
『返事が変だった』
小松原さんの声が、少しずつ慎重になる。
『《王城》』
俺たちが黙る。
『こっちはゲーム会社です。当然、接続元のIPとか地球側の場所を聞いたつもりだった。でも相手は王城って答えた』
「アステリアの」
『当時の俺は、そういう設定で返答するAIだと思いました』
ノアが画面の向こうで、猛然と何かを調べ始めた。
《その時間》
「ノア?」
《三百年前の王城記録を見る》
「あるの?」
《探す》
小松原さんの話は続く。
『それから俺が、《お前、本当にプレイヤーのレグナか》って聞いたんです』
「返事は?」
そこで。
小松原さんが俺を見る。
『これを言っていいのか、今でも迷います』
「俺のことなら聞きます」
『分かりました』
短い沈黙。
『《半分》』
「……半分?」
『そう表示されました』
背筋が冷えるような怖さではなかった。
むしろ。
妙に納得する部分があった。
三百年前。
俺がログアウトしている間も。
アステリアには「俺」がいた。
飯を食べ。
寝て。
散歩をし。
リゼルたちと話した。
昔の俺は。
単なるゲーム上の自動動作だと思っていた。
ところが。
その「俺」の経験が。
今。
俺の中へ戻ってきている。
「それで?」
『俺が《半分って何だ》って聞きました』
「答えは」
『《蓮はいない》』
俺は。
今度こそ。
何も言えなかった。
「俺の本名……」
『はい』
「運営側では分かってた?」
高城さんが首を横へ振る。
「プレイヤーの登録情報を、現場のサーバー担当者が簡単に閲覧できる仕組みではありませんでした。少なくとも、あの保守画面には表示されていません」
『俺も如月さんって名前は知りませんでした』
「じゃあ」
七年前。
アステリア王城にいた。
ログアウト中のレグナ。
そいつは。
地球側にいる俺を。
蓮と呼んだ。
「続きは?」
『《蓮はいない》の後』
小松原さんは、自分の記憶を確認するようにゆっくり話す。
『《俺は留守番》』
俺は思わず額を押さえた。
「留守番……」
ノアが顔を上げる。
《それ》
「知ってる?」
《知らない》
「じゃあ何」
《すごく陛下っぽい》
「そこ!?」
《言いそう》
「俺も思ったけど!」
高城さんまで口元を押さえている。
「確かに、如月さんらしい表現ですね」
「高城さんまで」
少しだけ。
張り詰めていた空気が緩んだ。
俺が二人いるかもしれないという状況なのに、片方が「留守番」と名乗っただけで妙に深刻さが消える。
「他には?」
『あります』
また。
空気が戻る。
『最後に俺が聞きました。《プレイヤー本人は戻るのか》って』
「……」
『相手はしばらく返事をしませんでした』
「それで?」
『《分からない》』
そうだろう。
サービスは終了した。
俺は二度とログインできないと思っていた。
アステリア側から見れば。
本物の俺が戻る保証なんて。
どこにもなかった。
『そのあと』
小松原さん。
一度。
息を吐く。
『《でも待ってる》』
「誰が?」
『俺も聞きました』
返ってきた文章。
『《みんな》』
リゼル。
セレフィナ。
ノア。
ミーナ。
国の人たち。
三百年。
待った人たち。
俺は。
何も返せなかった。
◇
《見つけた》
ノアの声で。
全員が画面を見る。
「何を?」
《同じ日の王城記録》
三百年前。
サービス終了後。
地球時間で三日が過ぎた頃。
アステリア側では、もっと長い時間が流れている。
王宮の簡易日誌。
重要度が低く。
これまで詳しく調べられていなかった記録。
《記録官――第三補佐官》
《場所――旧王権室前》
文章が表示される。
《レグナ陛下の御影、王権室にて長時間独語》
「御影?」
ノアが説明する。
《ログアウト中の陛下を、昔そう呼んでた時期がある》
「初耳」
《後で呼び方変わった》
「何に?」
《陛下》
「結局同じ!」
記録は続く。
《声を掛けるも反応薄し》
《御本人曰く》
そこ。
俺の視線が止まった。
《地球から返事があった》
高城さんが椅子から立ち上がった。
「一致しています」
七年前。
地球側。
小松原さん。
高城さん。
運営会社。
誰も。
アステリアが本当の世界だと知らなかった。
同じ頃。
アステリア側では。
ログアウト中の「俺」が。
誰もいない王権室で。
地球と話したと言っていた。
「続き」
俺は言う。
「まだありますか」
《ある》
ノアが記録を開く。
《詳細を尋ねる》
《陛下の御影、しばし沈黙の後》
そして。
《蓮に教えないと》
俺の名前。
また。
出た。
《何を、と尋ねる》
《返答》
次の一文を。
俺は。
声に出して読んだ。
「《こっちは消えてない》」
昨夜の夢。
男の声。
《君がログアウトしている間、アステリアは止まっていない》
それを聞いた。
もう一人の俺。
ログアウト中の俺。
留守番。
そいつは。
地球側にいる俺へ。
伝えようとしていた。
ゲームは終わった。
でも。
アステリアは終わっていない。
「七年前の俺に」
声が少し掠れた。
「届かなかったんだな」
《うん》
ノアが答える。
《でも》
「何?」
《今届いた》
俺は。
画面を見る。
三百年以上遅れて。
自分から自分へ。
届いた言葉。
◇
検証はそこで終了になった。
黒田医師が「今日はもう十分です」と言い、高城さんも反対しなかった。俺自身も、これ以上は頭へ入らない気がした。
小松原さんへ礼を言って通信を終える前。
彼が突然「あ」と声を上げた。
「どうしました?」
『一個、思い出しました』
「何を?」
『最後です』
七年前。
接続が切れる直前。
小松原さんは。
王城側の「レグナ」へ聞いた。
『《お前はこれからどうする》』
「……」
『返事、来ました』
「何て?」
小松原さんが苦笑する。
『《仕事あるから》』
「俺じゃん!」
ノアが即答した。
《陛下》
「何でそっちでも仕事してるんだよ!」
『俺も意味分からなかったんですよ。当時は』
アステリア。
三百年前。
主が消えた直後。
国は混乱していた。
ログアウト中の俺。
留守番の俺。
たぶん。
普通に。
仕事へ戻った。
「働きすぎだろ……」
高城さんが笑う。
「今の如月さんにも言えますね」
「俺、今日は会社休んでますよ」
「異世界の記憶検証のために」
「休みになってない」
《陛下》
今度はリゼルから通信が入った。
《検証が終了したと伺いました》
「早いな」
《本日の午後は》
「仕事しない」
《まだ何も申し上げておりません》
「休む」
《……》
「三百年前の俺にも言われたから」
少し。
間。
《承知いたしました》
「素直」
《ただし》
「何?」
《御帰宅後の食事は》
「自分で食べる」
《睡眠時間は》
「確保する」
《王権端末は》
「必要な連絡だけ」
《では》
一度。
《合格です》
「何の試験だよ」
通信の向こう。
リゼルが少し笑っていた。
◇
その夜。
俺は言われた通り。
何も調べなかった。
飯を食って。
風呂へ入って。
王権端末を閉じる。
ベッドへ入る。
「今日は夢なしでお願いします」
誰に頼んでいるのか分からない。
目を閉じる。
しばらくして。
眠る。
今度は。
夢を見なかった。
朝。
普通に目が覚める。
「よし」
安心して。
スマホを見る。
通知。
ノア。
《起きた?》
「起きた」
《昨日の記録》
「今日は調べないって」
《調べてない》
「じゃあ何」
《王権端末が勝手に分類した》
画像。
《ログアウト中経験情報》
《同期率――二・八パーセント》
「……同期率?」
《昨日まで表示なかった》
更に。
その下。
《未同期経験情報――大量》
「大量って」
《推定期間》
表示。
《十五年分》
俺は。
スマホを持ったまま。
固まった。
ゲームを遊んだ十五年間。
俺がログアウトしていた。
すべての時間。
そこで生きていた。
もう一人の俺の記憶が。
まだ。
ほとんど丸ごと。
残っていた。




