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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第315話 龍を巡る⑥

 

~ドレイク視点~


「可愛がってあげましょうか。――【八卦宵(はっけよい)】」


 シンクねぇさんが怒簾虎威を地面へ突き立てた瞬間だった。


 ゴゥッ!! という音と共に、濃密な魔力が地底湖全体へと広がる。

 それは攻撃ではない。

 相手の環境支配型技巧に抗う、シンクねぇさんの技巧。その第一段階(・・・・)といえるもの。


 だが、俺達を包み込んでいた歪な感覚が、数秒だけ固定された。


「……は?」


 リヴィアが初めて怪訝そうな声を漏らす。

 水面へ広がった魔力が波紋となって空間を伝播し、今まで好き放題に変化していた流れを無理やり固定化していく。

 上下左右が曖昧だった景色や、歪められていた感覚すらも。


「へぇー?」


 リヴィアが笑う。

 だがその笑顔は先程までとは違う。

 面白そうな玩具を見つけた子供の顔だ。


「シンクちゃん、やるじゃんっ!!」


「称賛するにはまだ早いですよ」


「ふぅん……。でもさ?」


 バシャリ。

 水面が揺れる。


「その程度で何とかなると、本気(ガチ)で思ってた?」


 瞬間。

 無数のリヴィアが現れた。


 十。

 二十。

 三十。


 いや、もっとだ。

 地底湖全体を埋め尽くすほどの分身。

 全てが本物にしか見えない。


「どーれだ? 当ててみなよー」


 全てが同じ顔で笑う。

 自然とゾワリと鳥肌が立つが――


「ドレイク」

「うっす! いつでも大丈夫っすよ!」


 シンクねぇさんの問いかけに短く返事をする。

 半年前ならパニックになっていただろう。

 でも今は違う。焦りはない。

 それに、ランドバルクが何度も何度も言っていた。


『目や耳では騙せても、魔力の流れは嘘をつきマセン』


 呼吸を整える。

 身体の中を巡る魔力。

 地底湖を流れる魔力。

 リヴィアの魔力。

 全てを感じ取れ。


(居たっ!)


 一体だけ。

 流れる魔力の強さが違う。


「シンクねぇさん!」

「ええ。わたくしも見つけました」


 俺が気付いた時、シンクねぇさんも同じ答えへ辿り着いていたようだ。


「行きますよ、ドレイク。【八卦宵(はっけよい)――乃兀蛇(のこった)】」


 ――ドンッ!!

 地底湖全体が揺れるほどの、巨大な衝撃波がシンクねぇさんから放射状に走り、次いで地面から針状の岩が次々と隆起し始める。

 最初の衝撃波で分身の大半が一斉に吹き飛び、残った分身も岩に貫かれて崩れ落ちていく。


「えっ!?」


 本体が露わとなったリヴィアの目が見開かれた。

 ――今だ。


「行くっす!!」


 シンクねぇさんの発動した衝撃が俺の背中を押すのに合わせ、全力で一歩を踏み込む。

 すると、すぐに俺の動きに気付いたリヴィアは空間の支配権を戻すため、魔力制御を瞬時に整えた。


「そんなんじゃ、まだまだ甘いよぉ」


 リヴィアが笑い、右手が動く。

 俺の攻撃を受け流し、逸らすつもりだ。


 横薙ぎに振った赤鬼の金棒にリヴィアの魔力が触れる。

 このままでは、また流される。

 だが、俺は敢えてそこで力を抜いた。


「それを待ってたっす!」


「……えっ?」


 俺の攻撃は受け流されたが、同時にリヴィアも固まっている。


 攻撃を受け流されるなら。

 その流れに乗って、利用すればいい。


 受け流された勢いのまま身体を回転させ、更に加速。

 純粋なパワーに、遠心力を上乗せする。


「――っらぁ!!」


 一気に超加速した赤鬼の金棒が、水を弾き飛ばしながら弧を描く。


「ちょっ――!!」


 ――ドゴォォォォン!!


 衝撃と轟音が地底湖全体を揺らし、叩きつけた水面から水柱が天井近くまで吹き上がった。

 リヴィアの身体が数十メートル吹き飛び、水面を何度も跳ねながら転がっていく。そして最後は、静かに水中へと沈んでいった。


「……」

「……」


 それまでの苛烈な攻防と一転して訪れた突然の静寂。

 そうして、しばらくして。


 ――ぷかり。

 水中からリヴィアは顔だけを水面に出してきた。


「いっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」


 突然の絶叫に、思わずビクッと肩が跳ねる。


「ねぇ! 普通あそこで加速する!? 意味分かんなくない!? 脳筋なの!?」


「脳筋じゃないっす」


「じゃあ、アレ何よ!?」


「ノリ……っすかね?」


「意味わかんな!! マジキモい!!」


「いや、そろそろガチでヘコむっすよ?」


 その言葉の後。

 リヴィアは大きくため息を吐いた。


「はぁ……、マジだる」


 そして殴られた頭部を(さす)りながら、俺達を見る。

 その顔は、最初より少しだけ柔らかかった。


「合格」


「……へ?」


「だから、合格だって~」


 肩を竦める。


「ウチに一発入れたんだから、まぁ十分っしょ~?」


 そう言って、ニマッと笑った笑顔はこれまでになく純粋なものだった。


「まぁ? まだ全然弱いけど? これ以上ココに居座られたくないしぃ~?」


 飄々とした態度と口の悪さは変わらない。

 だが、その言葉と表情には確かな俺達への評価があった。


「それで、次はどこへ向かうのが良いのでしょう?」


 しばらく呆気に取られていると、シンクねぇさんが口を開き次の行先を聞いた。

 ……残された属性龍は、『樹龍』、『風龍』、『火龍』の3体。


「ん~、次って言われてもさぁ? ……もう、やめとけば?」


「急に歯切れが悪くなっておりますが、何か理由でもあるのですか?」


「だって、樹龍のジジィは今休眠期だから多分起きないよ? 風龍は今どこにいるか誰も分かんないし~」


「んじゃ、火龍っすね!」


「いやいや、アイツだけはやめときな~!」


「え? なんでっすか?」


「なんでって、二人とも死ぬから」


 あまりにも自然に、まるで明日の天気でも話すように。

 サラッと滅茶苦茶な事を言われた。


「さすがに、それは大袈裟じゃないっすか?」


 半年間地龍(ランドバルク)に鍛えられた。

 ギリギリだったが、水龍(リヴィア)にも認められた。


 言うなれば、2体の古龍にお墨付きをもらったと言ってもいい。

 そんな今の俺達なら、すぐには勝てなくとも得られる物はあるはず。


「どうしても行きたいなら、別に止めないけどさぁ?」


「……一応、住処を聞いても良いっすか?」


「火山島。ここから海の方に出て、まっすぐ進めば数日で着くと思うよ~」


「であれば、どこかで休息は必要ですね。途中の島で野営を挟みつつ向かうことにしましょうか」


「そうっすね!」


 俺達に立ち止まっている時間なんて無い。

 行く先が明確であり、そこに強者が居るのであれば、行かないという選択肢は無い。


 だが、それを聞いていたリヴィアの目は全く笑っていなかった。


「ハァ……、マジ気を付けなよ? 火龍(アイツ)だけはガチで頭おかしいから」


 去り際に静かに放たれたその言葉の本当の意味を、この時の俺達はまだ理解できていなかった。

 


幕間である「龍を巡る」が6話も続きましたが、次話からは阿吽視点に戻り、いよいよ“修羅咲祭”へと進んでいきます! お楽しみに★

次話は6/26(金)投稿予定です♪

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