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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第314話 龍を巡る⑤

 

~ドレイク視点~


「……へぇ? ちょっと、アゲじゃん」


 リヴィアがイタズラを思いついた小悪魔のように、自分の唇に指を当てる。

 すると水面が、微かに揺れた。


 今度は、感じ取れる。

 力の流れ、魔力の流れが。


「シンクねぇさん!」

「ええ、分かっております」


 声を合わせる。

 それだけで意思疎通は十分だ。


 ――来る。

 そう頭で考えた時には、水面が大きく歪みリヴィアの姿が霞みのように消えていた。


(速ぇ! なんっちゅう魔法構築速度っすか……!)


 だが、今度は目で捕らえられた。

 水が揺れるその一瞬で、リヴィアは少なくとも二つの魔法を同時に発動させていた。


 ひとつは水魔法による精巧な分身作成、これはネルフィーねぇさんの分身に近しいものはあるがそれだけではない。

 もうひとつの魔法……、それは透明化ともいえるもの。背後や水面の風景に自身の姿を溶け込ませ、あたかも超高速でリヴィアが動いたかのように錯覚させていたようだ。


 声がした逆に突然現れたように感じたのも、分身作成や消去を超高速で行うことで出現位置を錯覚させていた。さらに言葉で俺達の感情を逆なでして視野を狭めさせ、本体の居る位置すら悟られないようにしていたというのが突然背後から攻撃された種明かしだろう。


 微かに感じる、ほんの僅かなズレ。

 それに身体を合わせる。


「あはっ」


 背後に気配。

 これは分身体、だが攻撃自体は避けなければ致命傷を負う。


 そのまま身体を捻ると、水の刃が浅く頬を掠めた。


「おぉー? 良い感じになってきたじゃん。でも、まだまだ対応しきれてないよー」


 横。

 瞬きをするより速く、瞬間移動のように死角へと現れるリヴィア。


「今度は見えてるっすよ!」


 反射的に赤鬼の金棒を振るも手応えの抜ける感覚とともに、リヴィアの姿が水に変わる。


「ざぁんねん、ハズレぇ」


 その打ち終わりの隙を突いて本命の攻撃が飛んできた。

 防御も回避もできないタイミングでの必殺の一撃。喰らえば致命傷を負う。


 ――でも、大丈夫。


「それも、予想通りでございます」


 シンクねぇさんが間に滑り込み、大楯状態の怒簾虎威(どすこい)で攻撃を弾き上げた直後、一瞬で大斧に変形させるとそのまま振り抜いた。


「なかなかやるじゃん」


 あれだけの大きな隙でも躱された。

 ただ、今のは“流された”わけじゃなく、“躱した”。

 この違いは大きい。

 余裕を持って対応できなかったため、回避という選択を取らざるを得なかったのだろう。


「ドレイク、焦らなくて良いですよ。勝負はここからです」


「了解っす」


 呼吸を整え、流れを見る。

 最初とは違う。

 無理に攻めず、待つ。

 相手の動きに合わせられれば、必ず活路は見えてくる。


「……うわ、キモ。なんか急に落ち着いてるんですけどー?」


 リヴィアが顔をしかめる。


「褒め言葉として受け取っとくっす」


「は? 違うし。……チッ、ナメてんの?」


 舌打ちとともに目が細められる。

 その直後、空気が変わった。


「……じゃあさ」


 水面が、大きくうねる。


「ちょっとだけウチの本気(ガチ)、出しちゃおーっと」


 次の瞬間、視界に移る全てが霞み、空間全体が歪に揺れ始めた。

 どこが地面で、どこが天井か……。上下すらも分からなくなる異常な知覚。


「キャハッ! いっぱい楽しんでねぇ! ――【蒼海(イケナイ)遊戯(アソビ)】」


「っ!?」


 爆発的に膨れ上がった膨大なリヴィアの魔力。

 ようやく魔力の流れを感じ取れたと思ったが、リヴィアは直ぐにその対応策を講じてきた。

 それは、あまりにも雑な策。しかし、今の俺達には一番効果的なものでもあった。


 例えるならば、うっすらと聞こえる程度の声に集中して耳を傾けていたら、突然耳元で爆音を鳴らされたようなもの。

 それによってようやく分かり始めてきた状況把握が白紙へと戻される。


「ほらほらぁ、判断が遅いよ?」


 真上から。

 いや、真下か?

 分からない。


 全身に力を入れ衝撃に備えるも、身体がボールのように弾き飛ばされる。


「ぐっ……!」

「ドレイク!」


 遠くからシンクねぇさんの声がする。

 だが、その位置すら曖昧だ。


「ほらほら、どうしたの?」


 あちこちから響く挑発的な声。


「“見えてる”んじゃなかったのー?」


 明らかな煽り。

 だが――


(落ち着け、俺!)


 おそらくこれは、空間支配型の技巧(アーツ)

 今は視覚や聴覚は信用するな。

 魔力の流れを感じ取れ。


 何万回と繰り返した、基礎中の基礎。

 いかなる状況であっても、自分の中に流れる魔力は決して乱さず、外部を流れる魔力の流れを感じ取る。


(――来る)


 背後……。

 違うな、これはブラフ。

 “横”だ。


 タイミングを合わせ、身体を半身だけずらすと、風切り音とともに水の刃が、耳の数ミリ先を通り過ぎる。


「……は? 今の避けるって、マジ?」


 初めて聞く、呆けるようなリヴィアの声。


「ねぇ。今のも見えてたのー?」


「いや、見えてねぇっすよ」


 返事と共に、無意識に止めていた息をゆっくりと吐く。


「感じただけっす」


「……うわぁ、キッモ。筋肉ダルマ(ランドバルク)みたいなこと言ってんじゃん」


 辛辣(しんらつ)な言葉は変わらないが、その声色にはわずかな変化があった。

 ほんの少しだけ、興味の色が混じっている。


「まぁいっか、次で殺すしぃ?」


 ニヤリと浮かべる小悪魔的な微笑とは対照的な、強烈な殺気。


 俺達の攻撃はまだ一発もまともに当たってすらいない。……にもかかわらず、“攻めるなら今だ”という直感が、心の内から湧き上がってきた。


「シンクねぇさん! アレ(・・)で、合わせて欲しいっす!」


「まったく、仕方がないですね。……ただ、わたくしもそろそろ分からせてやる必要があると思っておりました。なのでリヴィアさんのお望み通り――」


 シンクねぇさんが、大斧状態の怒簾虎威(どすこい)を地面に差し込むと、今まで内に秘めていた魔力を一気に爆発させた。


「可愛がってあげましょうか。――【八卦宵(はっけよい)】」

 


体調、完・全・復・活!!

次話は6/19(金)投稿予定です♪

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