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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第300話 刃を殺さず、刀を殺す

 

 白鵺丸は國光の手で鞘から抜かれ、中央の机へと置かれた。

 炉の火を受け、刃は白く淡く光っているが――その輝きは、どこか張り詰めて見えた。 


 國光はそれ以降、刀に触れようとはしていない。

 まずは目と気配で、診ているといった感じだ。


「……やはり、な」


 しばらく観察した後、國光は低く独り言のように呟いた。


「直せば、白鵺丸(コイツ)は死ぬ」


 その一言で、張り詰めていた工房の空気がさらに重くなる。

 ただ、詳しく聞かなければ“刀が死ぬ”と言う國光の真意が理解できない。


「どういう意味だ?」


 國光は腕を組み、白鵺丸から一歩距離を取る。


「この刀はな、もう“完成品”とはならん」


 ここに居る皆が黙って聞いている。

 一呼吸置いて、國光は再び口を開いた。


「成長途中のまま、限界まで使われとる。

 人で言ったら――骨も筋肉も出来きらんうちに、戦場に放り出されたガキやな」


 その通り、なのかもしれない……。

 今思えば、俺は自分の事ばかり考えて、白鵺丸に頼り続けてきた。

 そう考えたら、何も言えなくなった。


「普通の刀なら、歪みを直して、刃を整えて終いやわ。

 やけど……こいつは違う」


 説明する言葉を選ぶように、國光はそこで一呼吸挟んだ。

 炉の中で弾ける火の音が、やけに大きく感じる。


「コイツは“生きとる”。

 単純に直すってのはな、これ以上“育たん刀”にしてまうってことや」


 白鵺丸へと向いていた國光の視線が、再び俺を射抜く。


「直したところで完成した瞬間、こいつの時間は止まる。

 そしたら遅かれ早かれ、今と同じ問題にぶち当たるやろ。

 それは――死ぬのと同義やて」


 無意識に、喉が鳴った。


「それで……、“育て直す”ってのは?」


「コイツを核にして、一から打ち直す」


 あっさりと、國光は言う。


「未完成に戻すんや。

 この刀が“次に進める”状態にな」


 その言葉を聞いた時、これまで沈黙を貫いていた孫呂久が、低く呟いた。


「……相変わらず、無茶な事を言い出すな」


「無茶なのは自分でも分かっとるわ。やから、先に“条件がある”って言ったやろ」


 そう言って、國光は炉の横に置いてある鉱石を指さした。


「刀を打つのに必要な“玉鋼”って鉱石にも、純度に応じて格がある」


「……武鋼(ぶこう)、か」


 國光が、わずかに口角を上げる。


「玉鋼の中でも最良質。

 刀に“武”を宿す鋼――それが“武鋼”や」


 その言葉に、孫呂久は待ったをかける。


「採れる場所は限られとるやろ。それに……武鋼が採れる鉱脈は、魔物生息域の中でも『危険地帯』と呼ばれとる区域やぞ」


「……危険地帯か」


 そう聞くと、俺の頭にギガンテックセンティピードが蔓延るナクヴァ山脈や、バジリスクが巣食うレイヴン渓谷が自然と思い浮かぶ。


「そうや。しかも、武京の指定する危険地帯は、ただ強い魔物がおるから危険なんやない。

 そもそも“生き残れる前提で人を迎えとらん土地”って意味や」


 國光は、揺ら揺らと(うごめ)く炉の光を背に淡々と言った。


「……若造。お前はそんな場所に、武器無しで乗り込む。その覚悟があるんか?」


「上等だ。楽しみで逆にゾクゾクする」


「即答か。やっぱり、たわけやな」


 そう言いながらも、(こえ)には楽しげな色が混じる。


「なら、その覚悟、買ったる」


 言い終えると、國光は白鵺丸の前に静かに腰を下ろした。

 それでも刃には触れない。

 ただ、すぐ(かたわ)らに手を置き――低く、呟く。


「……お前、よう頑張ったな」


 声音(こわね)が、ほんの僅かに和らいだ。


「そんなに、このたわけが気に入ったんか」


 炉の火は、國光の言葉の合間を縫ってパチりと鳴り続ける。


「今まで無茶ばっかさせられたんやろ。それでも折れず、逃げもせず……」


 白鵺丸は、静かに炉から溢れる光を反射していた。


「……立派や」


 短い沈黙の後、國光は立ち上がる。


「やからな。

 このまま終わらせるわけには、いかんよなぁ?」


 そう言うと、ニヤリと笑みを浮かべこちらに目配せをした。


「だな。最良質の武鋼、採ってくる。

 だから、最高の刀に仕上げてくれよ?」


「ハッ! 誰に向かってナマ言ってるんや!

 わしは二代目國光やぞ!」


 俺たちは、どちらからともなく右手を出し、ガシッと組んだ。

 刀を打つ者と、使う者。

 立場は違えど、気持ちは同じだ。

 この男に任せれば、白鵺丸は大丈夫――そう思えた。


「じゃあ、さっそく武鋼ってのを採りに行ってくる」


 そうして工房を出ていこうとしたその時。


「ん、阿吽」


 キヌに袖を掴まれ、止められる。


「今度は場所しっかり聞いてから行こ。

 また迷子になっちゃう」


「キューン!!」


「あっ、それもそうか!」


「ほんとお前は、たわけやな」


 呆れたように國光が言う。


「だがまあ、この嬢ちゃんが付いてるなら心配なさそうか……。

 さっき孫呂久も言ってたがな、武鋼が採れる場所は、ただ一つ」


 一呼吸置き、國光は言葉を続けた。


「危険地帯『天狗谷(てんぐだに)』。

 推定SSランクオーバーの魔物――“大天狗”が率いる天狗族の縄張りや」


 


次話は2/27(金)投稿予定です♪

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