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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第299話 燼里

 

 燼里町へと向かう街道。道端に点在する木々の葉はまばらで、ひんやりとした山風が湿り気を帯びて肌を撫でる。

 両脇には“田んぼ”と呼ばれる農地で“コメ”という作物が育てられており、一段高い街道から見ると金色の絨毯が敷かれているような景色となっている。


 俺と禅、孫呂久が先頭を並んで歩き、そのすぐ後ろではキヌの隣を歩くユラが周囲を見回す。時折、嬉しそうにスンスンと鼻を鳴らし、キヌも嬉しそうに「どんな味がする食べ物なんだろうね」とユラへと話しかけていた。


 そんな景色も見慣れているのか、禅や孫呂久は淡々と会話を続けている。


「燼里町までは一緒ですが、私は修羅咲祭の準備のため、そこから天音京へ向かいますね」


「あぁ、俺達は二代目國光の鍛冶工房だ」


 目的は同じ道にあり、ただ行き先は違う。

 そういう旅があってもいい。


 そうして燼里町に近付いてくると、空気が変わった。

 鼻をつく、鉄と炭の匂い。


 ――カン。

 ――カンッ、カン。


 遠くから響く、鈍い音。

 数多く(そび)える煙突からは白い煙を吐き出し、町全体が呼吸しているかに感じる。

 燼里町は、聞いていた通り“火と灰の町”だった。


 通りには鍛冶場が立ち並び、炉の熱が地面を揺らしている。

 肌に触れる空気が、明らかに熱い。


「……すげぇな」


「武京でも、ここほど鍛冶師が集まる町はそうないですよ」


 孫呂久の声には、わずかな誇りが滲んでいた。

 その町外れ。

 他よりも少し小さな工房が見えてくる。


 壁は(すす)に染まり、屋根は年季を感じさせる。

 だが――そこから聞こえてくる音は他とは一線を画していた。

 まるで生き物の鼓動のように一定で、狂いなく、そして力強い。


「……ここです」


 孫呂久が立ち止まり、無遠慮だが静かに扉を開けると、工房の中、炉に向かい一人の男が座っていた。


 座っていても分かる背の高さと、無駄のない体つき。

 和服の袖を無造作にまくり、露わになった腕には、鍛冶師特有の筋が浮かんでいる。

 髪には白いものが混じっているが、全く老いは感じさせず、年齢も幾つなのか想像できない。


 内心でそんなことを思った瞬間。


久しぶり(やっとかめ)やな。……生きとったか、孫呂久」


 國光は槌を止めず、振り向きすらせずに言った。


「なかなか会えんのは、お前が工房から出てこんからやぞ」


 孫呂久は、これまでの口調とは違いぶっきらぼうに答える。


「それにしても、相変わらず妙なトコに巣食っとるな。お前ほどの腕ならもっと良い立地に工房を構えれるやろに」


「放っとけ。お前こそ弟子に工房任せて、お散歩か?」


「ウチは弟子が優秀やからな。……っちゅうか、お前もそろそろ弟子の一人でも育てたらどうや? 技術は継承していくモンやぞ」


「それこそ余計なお世話やわ」


 それ以上、言葉は続かなかった。

 互いに悪態はつきつつも尊敬は滲み出る。

 過去にも今にも、必要以上に踏み込まない。

 それで成立するような関係なのだと感じた。


 やがて國光は槌を置き、ようやくこちらを見た。


「……で? そっちの若造は何や。亜人族なんて珍しいな」


 視線が、鋭く突き刺さってくる。


「……剣士か?」


「どうだろうな。剣士かって聞かれると微妙なとこだ」


 俺が答えると、國光は鼻で笑った。


「はっ、その歳でその面構えか。結構な修羅場を潜ってきたんやろが……、たわけたこと言っとると、そのうち命落とすぞ?」


 悪意はない。

 だが、遠慮もない。

 どこまでも真っ直ぐな気持ちが、そのまま口から出ているようだ。


「安心しろ。簡単に死ぬほど、器用じゃねぇ」


「ほう? ……面白いこと抜かす若造やて」


 一瞬。國光の口元が、ほんのわずかに歪んだ。

 それを見計らった孫呂久が一歩前に出る。


「……國光、刀を診てやってほしい」


 その言葉に、國光の視線は俺の腰へと移ると、目を少し見開いた。


「おい……まさか、白鵺丸か?」


「あぁ。あんたが作ったって聞いて、ここに来た」


 そうして、俺が白鵺丸に触れた瞬間、國光は表情を変えた。


「不用意に触るな」


 低い声だった。


「今雑に扱うと、取り返しが付かんくなるぞ」


 空気が張りつめる。


「それってどういう……。――いや、理由は良い。直せるのか?」


 俺の問いに、國光は軽く目を瞑る。


「直せば、“死ぬ”」


 そして炉の火に向き直り、続けた。


「でもな……。“育て直す”ことはできる」


 その言葉は炉の熱を帯び、俺の胸に重く落ちた。

 覚悟を決めてここに来た以上、俺としては選択肢が一つしかない。


「あんたに、白鵺丸を頼みたい」


 数秒の沈黙が空気を重くするが、國光はゆっくりと口を開いた。


「……条件がある」


「聞こう」


「この刀を核にして、一から打ち直すためには特殊な鉱石が要る。……取って来れるか?」


「やる」


 それ以外の返答をする気はない。


「詳しくも聞かずに即答か。……ただ、白鵺丸(コイツ)は状態を詳しく見るために今すぐ預かる。そうなるとお前は無手やぞ?」


「構わねぇ。こう見えて、素手でぶん殴るのも得意なんだわ」


 國光は、じっと俺を見る。

 そして、ふっと笑った。


「お前、本物のたわけ(・・・)やな」


 その声には、ほんの少しの呆れとともに――楽しげな色が混じっていた。


 


サプラ~イズ投稿♪

一日遅い、俺からみんなへのバレンタインチョコ❤ですっw

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― 新着の感想 ―
300投稿達成おめでとうございます\(^o^)/ 「やっとかめ」に「たわけ」? ここは尾張(名古屋)か? と、尾張(の西地区)の民は思ってしまう(゜o゜;
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