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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第297話 白鵺丸の状態

 

「……単刀直入に申し上げる。この刀、このまま使い続けるのは――危のうございます」


 孫呂久の一言が持つ重みは、部屋の空気を一変させるには十分だった。


 俺は白鵺丸へと視線を落とす。

 パッと見には異常がない。

 刃こぼれもなく、刀身の輝きも健在だった。

 それでも、武京に向けて出発してから感じていた、あの言葉にしづらい違和感が脳裏をよぎる。


「折れかけてる、とかじゃないよな? 俺が使い手として未熟……なのか?」


 そう問いかけると、孫呂久は首を横に振った。


「いいえ、むしろ逆です。私が見る限り、この太刀はまだまだ健在。阿吽殿との相性も良いのでしょう。……しかし、“器”としての限界が近いように感じるのです」


「器?」


「ええ。使い手の力が、刀の想定を超え始めている。言葉を選ばず申し上げると……阿吽殿、貴方はこの太刀にとって、既に“重すぎる”存在になりつつあるのです」


 禅が、僅かに目を見開いた。


「……使い手の力が、刀の性能を追い越していると?」


「その通りです。この刀は弱っているのではない。むしろ、自らの性能の上限ギリギリまで力を発揮しようとしている。……本当に、良い刀ですよ」


 その言葉は、不思議と腑に落ちた。

 白鵺丸を握った時の、微妙な重さ。

 抜き放つ瞬間の、軋むような感覚。

 ――あれは拒絶ではなく、追いつこうとする懸命な叫びだったのか。


「しかし、このまま使い続ければ……いずれは――」


 続く言葉は、言われなくても理解はできた。


「……じゃあ、どうすればいい?」


 俺の問いに、孫呂久は一瞬だけ言葉を探すように視線を伏せ――やがて、静かに口を開いた。


「この太刀を打った鍛冶師に、診てもらう他ありません」


「……二代目、國光か」


 紡がれた名に、禅が僅かに反応した。

 空気が、ピンッと張り詰める。


「あの刀匠(とうしょう)、國光ですか……」


 禅の声には、納得と同時に、どこか慎重さが滲んでいた。


「刀匠??」


 思わず出た質問に、孫呂久が答える。


「刀匠とは、我ら鍛冶師の中でも(かたな)のみを制作する者のことです。特に“魔刀”は制作工程が特殊なため、特殊な観察眼や隔絶した技術が必要となるのでございます」


「一口に鍛冶って言っても奥が深いんだな……。ってか、孫呂久は刀匠じゃないのか?」


「私の場合、専門は剣です。もちろん刀の知識はありますし、一般的な刀であれば制作や修繕も可能なのですが……、白鵺丸のような魔刀ともなると、やはり製作者でなければ触れないですね」


「そういうことなんだな。んで、その刀匠は今どこにいるんだ?」


「彼は、燼里じんり町に居るはずです」


「燼里?」


 その地名に首を傾げると、孫呂久は頷いた。


「簡単に申しますと“鍛冶師が集う街”です。武京国において、武具を極めようとする者が最後に辿り着く場所であり、『火と灰の町』とも呼ばれております」


 その説明だけで、普通の場所ではないと分かる。


「ただ、彼は大変に気難しい男でしてな。今では、滅多に依頼を受けません」


「引退、してるのか?」


「いいえ。……ただ、選ぶのです」


 孫呂久の目に、僅かな畏敬の色が宿る。


「槌を振るうに足る相手か、刀を預ける価値があるか……。それを、徹底的に見極めるのですよ」


 つまり、白鵺丸を頼めるかどうかは分からない。

 しかも一度見切りを付けられれば、顔すら見られなくなる可能性もあるわけか。


 禅が、静かに俺を見た。


「阿吽……、簡単な道ではなさそうですね」


「分かってる」


 それでも、迷いはなかった。


「このまま使い潰すつもりはない。白鵺丸は……俺にとって、ただの武器じゃねぇからな」


 その言葉に、孫呂久は深く頷いた。


「……でしょうな。この太刀は、不思議と人を選んでいるように見受けられる。遠き日に國光殿が打った太刀が、巡り巡ってあなたの手に渡ったのも……とても偶然とは思えない」


 そして、白鵺丸を一瞥(いちべつ)してから、静かに続けた。


「これは鍛冶師の勘ですが……、この太刀を見て國光殿が何も感じぬとは思えません。それに、私も彼とは知らぬ仲ではないですからな。口添えくらいはできるかもしれません」


 その一言は、俺の背中を強く押すものだった。


「燼里町、か……。すぐにでも向かいたいな」


 俺がそう呟いたその瞬間、かすかに、白鵺丸が震えた気がした。


 ――まるで、自身が生まれた故郷を知っているかのように。



次話は2/13(金)投稿予定です♪

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