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少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
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大介の真の実力

「ちょっと早くない?」


「早い方がいいだろ。コイツが疲れてるっつうならやめるけど、けろっとしてるじゃねえか」


 確かに、大介は特に疲れていない。今朝は突然対亜人戦に身を投じることになったが、彼はほとんど棒立ちだったし、小鳥の時だって座りながら話を聞いていただけだ。今も、亜人細胞を発症させたのは彼らだけで、大介はサーカスでも見るような心地でメンバーを眺めていただけである。


「俺、やります」


 大介は自らそう言った。鬼が「よし」と頷く。桃もすぐに笑みを浮かべ、「アンタがそう言うならいいけどね」と答える。


「でも、難しいわよ?」


「頑張ります。どうしたら亜人細胞を発症させられますか」


 今の自分の当面の目標は、とにかく亜人細胞を自力で発症させることだ。全員とても気軽に能力を扱っているようだが、大介にはどうすればいいのかさっぱり解らない。精神的な部分が大きくかかわってくるのは、なんとなく解るのだが。

 鯨が答える。


「まあ、言葉で言うのは単純さ。重要なのはイメージだ」


「イメージ」


「大介、お前の亜人細胞は多分頭にある」


 鯨の親指の腹が、大介のこめかみを擦った。


「そこに、力を注ぎ込むようなイメージをするんだ」


「力を注ぎ込む……」


「なんていうんだろうなあ……体の中に水が流れてて、それと一気に頭に集中させる感じっていうか」


「そんなもんか? 溶かす感じじゃね?」


 鬼が首をひねる。


「俺は、煙に変えたいところを空気に溶かすみたいなイメージしてるけどなあ」


「鯨が水だから、”注ぎ込む”ってイメージになるんじゃないの? 私はとにかく足に力こめてるだけだもん。昔は苦労したけど、今は逆にそれ以外の説明がまったく出来ないくらい」


「私は、あえてその部分の力を抜いてるけどなあ」


 桜や桃も加わって、ああだこうだと話し合いを始める。こういう時真っ先に面白がって首を突っ込みそうな蛙は、部屋の隅で大人しくしていた。さすがに疲れたのかもしれない。


 冷めた目で鬼達を見ていた蠍は、「とにかくやれ」と大介に端的な命令をした。大介も、これは個人差が激しくて皆の意見はあまり参考になりそうにないなと思ったので、素直に頷いた。とりあえず、頭に力をこめるイメージだ。


「ううーん……」


 大介は両手でこめかみをぐっと押さえて、唸った。大介が頑張り始めたことに気付いた鯨達は、騒ぐのをやめて見守る体勢だ。皆の視線を感じて、大介はますます気合を入れた。


「うううううん……」


 大介はぎゅっと瞳を閉じて、とにかく頭に力をいれようとする。しかし、頑張れば頑張るほど、眉間だの腹だのに力がそれている気がした。なんだか実感が湧かない。


「……ううううううううう……」


 大介はこれでもかと力んだ。輪郭の丸い幼い顔は既に赤くなっている。拳をぎゅっと握り、若干前傾姿勢になりつつも、大介は頭に住んでいる亜人細胞に対して念じた。発症しろ、もうこの際乳歯でもいい、とりあえず何らかの変化は起きろ、変われ、変われとひたすら思いつづけた。


 ――そのまま、十分ほど経った。力を籠めすぎて疲れた大介は、ついに考えるのをやめた。


「無理」


 一言言って、全身を脱力させる。ここが自分の部屋なら、その場にべちゃりと横たわっていたところだ。鯨が苦笑いする。


「まあ、最初は無理だろ。俺も三日くらいかかったしな」


「三日ってすごい早いでしょ。私なんか二週間よ」

 

 桃が溜息交じりに言う。続けて、鬼は一週間で、桜は五日だと声があがった。蠍は黙っていたが、桃が「アンタは一か月よね」とばらす。


「まあ、アンタの場合は能力が解りにくかったってのもあるけど。……大介も、そういうパターンが考えられないわけじゃないから。あんまり気落ちすることないよ」


「……はい」


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