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少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
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蛙の不信感

「ああ、解った。では、君はそれまでの間に自室に戻り、書類や携帯電話の確認を済ませておくといい。メンバーのところへ行くのは、その後でも構わないだろう。ある程度時間がかかることは、メンバーも解っているだろう」


「解りました。……でも、蠍さんは怒りそうですけど」


「彼は基本的にいつも怒っている。怖い顔をした男だ」



 すげない小鳥の言い方に、大介は少しだけ表情を緩めて笑った。蛙が、聞こえないのをいいことに「お前もたいがい怖い女だぞ」と小鳥に言っている。


 大介はあらためて、小鳥に頭を下げた。



「じゃあ、俺はこれで帰ります。ありがとうございました」


「ああ、こちらこそありがとう。……君に期待しているよ」



 大介はしっかりと頷いて、局長室を後にした。



 小鳥に言われた通り、大介は新しい自室に向かった。新居の部屋の扉は、今日まであてがわれていたものよりも分厚く立派な作りだった。



「ええと、虹彩認証は……」



 大介は独り言を呟きながら、そのカギを色々といじってみる。どうやら、まずは自分のカードキーを通すことで、虹彩認証の機能が呼び起される仕組みになっているらしい。



「面倒くせえなあ」



 大介のかたわらを飛ぶ蛙が言う。廊下に誰もいなかったので、大介は「初期設定だけみたいだし、そもそも蛙さんには壁なんか関係ないはず」と返事をしながら、ポケットから自分のカードキーを引っ張り出した。


読み取り口にカードを通すと、カメラの横のランプが赤く点った。目に力を込めて、カメラを見つめる。鍵の開く音がした。



「おお。ハイテク」



 感心しながら、部屋に入る。先程まで自分の後ろにいた蛙が、すでに室内をうろうろしている。相変わらず移動が早いことだ。


 蛙は楽しそうに、「へえ」と声をあげた。



「すげえな。前の仮住まいも結構広かったけど、今回はそれより広いぜ」



 大介も驚いた。立地の問題があるのか、窓こそ存在しないが、それでもその空間は広々としていた。家具や調度品も取りそろえられている。まるでモデルルームのようだ。


 大型のテレビ、テーブル、ノートパソコン――管理局にはきちんと食堂もあるのに、キッチンまで併設されているらしい。確認してみると、コンロは火を使うタイプではなく、電気コンロだった。全てにおいて最新型だ。


 バス、トイレに続いていると思われる小さな扉も部屋の隅にあった。室内の南側に位置している天蓋つきの寝台には、高級そうな布団が用意されている。触らずとも、そのふかふかの感触は想像がついた。



「こういうのをラグジュアリーっていうのかな」



 呆気にとられながら呟いて、大介は靴を脱いで部屋にあがりこむ。机の上の書類と白い箱を手に取って――箱の外には携帯会社の社章がプリントされていた――巨大なソファに腰をおろす。先程局長室で腰かけたそれよりも、座り心地がよかった。



「中学生にはもったいねえ部屋だな」



 蛙が言いながら、大介の隣にやってくる。



「つか、とりあえず書類確認しようぜ。もしかしたらあの女、なんか変なルール盛り込んでるかもしれねえぞ」


「蛙さん、全然小鳥さんのこと信用してない」


「そりゃ、あの女信用出来ねえし。お前はちょっと前、”信用してみる”とか言ってたけど、俺はまだあんまり納得してねえからな。


救える奴を救わずに放っとくとか、おかしいだろ。つか、人間って普通そういうの嫌いなんじゃねえの? なんでお前が受けいれてんのか、よく解んねえよ」



 蛙は唇を尖らせた。大介は「現実は色々ある」と適当に返事をしてから、「とにかく書類を見る」と話を進めた。蛙が小鳥に対して不信感を抱いていても、それは大介にどう出来ることでもないのだ。


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