アナタハカミヲシンジマスカ
「あっ、私ももらったよ! 私もいつか対亜人兵器になる可能性があるから、時間がある時に読んどいてって。すごいよね、アレ。ファンタジーみたい」
「うん。あんなの本当に出るのかな」
「ううん、でも出たら怖いよね。……まあでも、宇宙からの侵略者なんだから、何が来てもおかしくはないのかなあ」
「鈴ちゃん、亜空洞のことも知ってるの」
「うん、知ってるよ。私も結構習ったもん。多分、昨日大介が習ったことくらいは、私も教えて貰えてると思うよ。侵略戦争もやったしね」
鈴の言う侵略戦争は、地球侵略戦争なのか、それとも亜界侵略戦争なのか、はたしてどちらなのだろう。不思議に思うが、鬼は、基本的に亜界侵略戦争については他言無用の考え方だと言っていた。下手に口にして、鈴に要らぬ知識をつけても怒られるかもしれない。
せっかく仲良くなれた鈴に、あえて隠し事をするというのはなんだか良い気分ではないが、仕方がないので黙っておくことにした。
鈴は大介に構わず、「怖いよねえ」と言った。
「今が戦争中だなんて。それに、亜人だけならまだしも、人間も相手にしないといけないかもしれないんでしょ?」
「人間」
「あれ、聞いてない?」
鈴が目を見張った。
「終末思想の人がいるって。亜人っていうのは、神様が汚れた人間を滅ぼすために作った存在だから、死をうけいれるべきだっていう考え方の人たちなんだけど」
「あ、そういえば聞いた。こっちはこっちで厄介って言ってた」
「うん、そうみたいだね。日本ではまだ少ないらしいんだけど、東欧のあたりではかなり増えてるみたいで、対亜人管理局に急襲を仕掛けてくることもあるみたい」
「あれ。そういえば、終末思想の人達は、記憶の隠ぺいはされてないの」
「どうだろうね。隠ぺいに失敗したって話は、私は聞いたことないけど……でも、実際知ってるから襲ってくるんだろうし。ちょっとそのあたりは、私もよく解らないなあ」
そりゃそうか、と大介は頷いた。彼女だって、何から何まで知っているはずはないだろう。
「でも、なんにせよ厄介な人達だよね。皆頑張って生きようとしてるのに、和を乱してさ。第一、もしも神様が本当にいたとしても、そんな嫌な方じゃないよ。……大介は、神様って信じてる?」
「ううん」
大介は首をひねった。
「あんまり考えたことない」
「ああ、そっか。普通そうだよね」
「鈴ちゃんは、神様信じてるの」
「うん、私は信じてる。周りの人はあんまり信じてなかったし、信じてたとしても本当に困った時だけって感じだったけど。でも、私は信じてるの」
「どうして」
「ううん……それもよく聞かれたけど。でも、私からしたら、信じるのに理由なんて要らないんだよなあ。私は昔から、神様はいるって教わってきたし……いつでも見守ってくれてるって思ってるから」
ふうん、と大介は曖昧な返事をした。日頃神を意識したことなんてない大介だから、彼女の返事はあまりしっくりこなかった。けれども、それをずっと信じていた鈴からすれば、本人の言う通り、改めて問われる方が違和感があるのだろう。
だから大介も、それ以上深くは問わず、ただ「俺は、神様がいるかどうかは解らないけど」と言う。
「でも、もしいるとしても、今の人間だと助けてくれるかは微妙」
「微妙?」
「うん。だって、人間には終末思想の人がいるから。
神様が、今亜人に苦しめられてる俺達を天から見つけて、”じゃあ助けてあげようかな”って思ったとしても……その一方で、”人類なんか滅べばいい”とか言ってる終末思想の人も神様の目に映るんだったら、きっと神様は馬鹿らしくなってやめてしまう。俺でもそうする。
だから、本当に神様に頼るんだったら、ちゃんと人間全員が勝とうとしなきゃ駄目」




