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なんだか物騒な響きのする言葉だが、確かにそれしかなさそうだ。場所が解らないなら、手当たり次第にやらざるをえないだろう。
しかし桃は、そこで表情を暗くした。ただし、と切り出す。
「……これをするとね。宿主の人間は、確実に死んでしまうのよ」
その言葉に、大介はなんだかぎくりとした。だが、冷静に考えればその通りだ。
以前小鳥と喋った時、彼女は「亜人細胞の核を破壊すると、その近辺の正常な細胞も一緒に破壊されてしまい、二度と戻らない」と言っていた。近辺の正常な細胞とはおそらく、乗っ取られている宿主の細胞を指すのだろう。
つまり、亜人の全ての細胞を破壊することでその場を乗り切ろうとすれば、宿主の体も木端微塵になるということである。
「だから、出来ればそういう行動は避けたいの。核だけをピンポイントで潰して、亜人を倒すのが私達の目標よ。
ただ、核が解らないからどうにか探そう、なんてことをしてると、その間に町の方が深刻な被害にあうかもしれない。だから、もし見つからないなら……その時はすぐに行動に踏み切るべきね」
「……解りました」
大介は真剣に答えた。正直なところ、まだ戦いに身を投じたわけではない自分の覚悟なんて、きっと大したものではないのだろうとは思う。けれども、大介は大介なりに、桃の言葉に気を引き締めたのだ。
「うん」と桃は笑った。
「それじゃ、今度はまた少し別の話ね。亜人との戦闘においては、私達にとってすごく重要なことがあるの」
「重要なこと」
「ええ。たとえば……そうね。確か、春日中学の近くって、大きな公園があったわよね? たまに大きなイベントとかもやってて、結構テレビに出てるじゃない」
「ああ。太陽公園ですか」
「そう、それ。たとえば、そこに市民が一人散歩しにきてたとするでしょ。で、その市民が、ふとしたきっかけで感情のたかぶりを感じて、亜人細胞を発症させてしまった。そして、たまたまそこに対亜人兵器のメンバーがいたの」
「散歩中に気分がたかぶるってどういうことだよ。つか、なんで俺らが仲良くピクニックしてんの?」
茶々を入れる鬼に、桃は眉をつりあげて「うるさいわね、そういう設定なの」と言い返した。肩を竦めた鬼を無視し、桃は話を続ける。
「それでまあ、そんな風に亜人が現れたとするでしょ。……でもね、私達はその時点では、亜人に攻撃できないの」
「え。どうしてですか」
大介は不思議に思った。対応が早い方が、周囲への被害が少なくて済むはずである。何か攻撃出来ない事情でもあるのか、と首を傾げると、桃は簡潔に述べた。
「スキャニングよ」
「スキャニング」
「そう。大介がつい一昨日やったばかりの……薬を飲んで亜人細胞をあえて発症させて、亜人を抑え込めるかどうか経過を見守る、ってアレ。
でもさっきの例の場合だと、亜人細胞はもう発症してるから……この場合のスキャニングは、単純に、宿主が亜人を抑え切るかを確認するってことになるわね」
「……つまり、もしその散歩してる人が亜人になっても、その人が亜人細胞を抑え込める可能性もあるから、ちょっとの間攻撃しない、ってことですか」
「そう。それで対亜人兵器が増えれば御の字、ってわけね。勿論、そうはいかない場合もあるわ。
たとえば、東京の真ん中で発生した亜人なんかは、速やかに討伐に移る。周辺に官庁とか、巨大な金融機関とか……被害を受ければ、日本という国そのものに甚大な被害をもたらすような建物が多い指定区域では、スキャニングなんてしてる暇はないもの。
あとは、亜人が強すぎて、こっちが攻撃をかわせない場合もそう。そんな相手と持久戦なんてやってられないから、体力があるうちに潰してしまうことが推奨されてるわ。
でも、それ以外の場合は、とりあえず攻撃をせずに時間をかせぐこと。最低十分間――もしも抑え込めそうな感じがしたら、延長もする。これは、ルールとして設けられてるのよ。
……だから、アンタは運が良かったのよ。アンタのお姉さんが亜人になった時、そばにいたのが鯨でね」
「鯨さん」
言われた大介は、そういえば、とすぐに気付いた。あの時鯨は、大介の姉が亜人を封じ込められるか、なんて気にしていなかった。ただ迅速に、大介から亜人細胞の核の場所を聞き出して、そこを貫いたのだ。




