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「これ、“地球侵略戦争”って言われてる戦いなんだけど……この戦争の当時いた人間には、亜人細胞の発症は見られなかったんだって。
亜人細胞があらわれはじめたのは、当時の人類から五世代目以降みたい。人によるけど、大体は私達のひいおじいちゃんくらいがこれにあたるかな」
「五世代目」
ええと、と大介は指折り数える。戦争当時にいた当人が一代目として、子供、孫、曾孫、玄孫――で五代目となる。つまり、当時の人類の玄孫の代以降が、亜人細胞の発症が見受けられ始めた世代ということなのだろう。
「ずいぶん後で出てきたんですね」
大介が言うと、桃も頷いた。
「そうね。あんまり間があったものだから、研究者も他の可能性を考えたみたいなんだけど――“地球侵略戦争”時に撮影された写真に、亜人と似たような姿がたくさん映ってたらしくて。
だから今のところ、その宇宙基地での戦いによって、亜人細胞が地球に現れるようになったって考えられてるの。他に考えられる原因――たとえばウイルスの発生とかもなかったしね」
「それがきっかけになって始まった戦争が、今も続いてるってことですか」
「そう。まあ、まだ次の亜空洞が開いた時に、また襲撃があるかどうかは解らないけど……どちらにせよ、人間の体に亜人細胞が残ってるうちは、戦争は終わってないってことになるわ」
成る程、と大介は頷いて、頭の中で話をまとめる。
――約三百年前、宇宙空間に空洞が空いた。その空洞は亜界――亜人の住む世界と繋がっており、その穴から湧いた亜人により、米国の宇宙基地が襲撃された。
米国は亜人をなんとか退けはしたが、その戦争から人類を五代経て以降、人間の体に亜人細胞が宿り、発症する事態となった――。
ここで大介は、おや、と思った。話が荒唐無稽なのは今更としても、少し気にかかることがあったのだ。
「桃さん、質問です」
「何?」
「約三百年前って、具体的には何年前なんですか」
「えっ」
桃が呆気にとられた声をあげた。ポテトチップスをかじっていた鬼が、大介に目をやる。すでに理解力の限界をこえていたらしい蛙は、腕組みをして目を閉じている。寝ているようだ。
大介がまっすぐ桃を見据えると、桃は困ったようにうんうんと唸っだ。しかし、最終的に「わかんないや」と快活に笑う。
「でも、気にすることなくない? 三百年前って言ったら、そりゃだいたい三百年前なんでしょ、多分」
「今から三一三年前だ」
鬼がきっぱりした口調で口を挟んだ。そうなの? と桃は感心したような声をあげている。
大介は、「ふむ」と呟いて考えた。それならば、大介が気にしている点は解決される。
じゃあいいや、と納得した大介は思考を放棄した。しかし、その時鬼が気になる言葉を付け足した。
「――って、米国は言ってるな」
「え」
「襲われた年代を言ったのも、写真を提出したのも、全て米国側だ。
それを否定する証拠もねえが、米国以外の肯定材料もねえ」
大介は沈黙した。その言い方は、大介の疑念をますます強くするものだった。桃は不思議そうに、鬼と大介を見比べている。
「何? 何の話?」
「それは三原に聞けよ。……三原、気になることがあるんだろ?」
大介は頷いた。色々と考えながら、返事をする。
「今から三百年前っていえば」
「うん」
「確か米国では、“研究改革”がありましたよね」
何それ、と桃が素っ頓狂な声をあげた。鬼が嘆息する。
「……米国のあらゆる研究分野が、軒並み大発展したんだよ。今から三二十年前の話だ。当時では考えられないくらいに各分野が伸びまくっててな。ただでさえ世界的に強者の位置にいた米国は、それを機に世界でトップの先進国になったんだ」
「へえ。そんなことあったんだ」
学校で習ったっけ? と桃は不思議そうにしている。机に頬杖をついた鬼は、「で?」と話の続きを急かした。




