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少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
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スペースワイドな喧嘩のきっかけ

「でも残念ながら、亜界はそう簡単にいける場所じゃないの」


「そうなんですか」


「うん。亜界っていうのは……なんていうか、こことはまるきり違う世界でね。地球上には存在しない――というより、私達人間が認識出来る範囲内には無いのよ。つまり、どこにあるのか具体的にさっぱり解ってないの」



 大介は無表情で鬼を見た。鬼はポテトチップスを口に運びながら、「冗談じゃねえからな」と念押しした。


大介は唸る。何だか、俄かには信じがたい話だった。


認識出来ない空間に存在する亜界。その亜界に住む亜人の細胞に、寄生されている人間。そんな相手と戦争なんて、妙な話だ。

大体――。

「……そんなわけの解らないところと、どうして戦争になったんですか」


 大介には、それが疑問でならなかった。こちらから干渉の出来ない相手と、何故こんな事態に発展してしまったのだろうか。


 桃は、当然の疑問だという風に頷いた。


「確かに、亜界は基本的に関わることは出来ないわ。ただ、四百年に一度だけ、亜界へ繋がる穴が開く時期があるの」


「穴……」


「そうよ。それも、すっごく大きな穴。地球まるごと入っちゃうくらいのね」


「そんなのどこにあるんですか」


「宇宙」


「う、宇宙」


「地球から……ええとどれくらい行ったあたりだっけ?」


「七天文単位だろ」


「そうそう。七天文単位行った先に出来るんだって」


 ななてんもんたんい……と大介は抑揚のない声で繰り返した。ワールドワイドを通り越して、スペースワイドになってきた。SFのような話に、大介はまた化かされているような気になる。


「地球から七天文単位くらい行った先に開くその穴――ええと、亜空洞っていうんだけどね。それが亜界に繋がってるの。つまり、亜界の場所は解らないけど、亜空洞を使って亜界に行くことは出来るってわけ。


だから、まったく干渉出来ないってことじゃないのよ。まあ、亜空洞が開いてる期間はだいたい三日くらいしかないから、普段はほとんど遮断されてるんだけど」


 大介は無言だった。鬼が「理解出来てるか?」と大介に尋ねる。大介は暫くしてから、ようやく「何とか」と答えた。


 ようは、宇宙に謎の穴があいて、その穴の繋がっている先と、現在人類は戦争中ですよということなのだろう。つい先日まで平穏に暮らしていた大介には、今が戦時中なんて実感もまったく湧かない。


「じゃあ……そうやって干渉出来る時期があったとして。その時、一体何が起こって戦争になったんですか」


「ええと……前に亜空洞が出来たのが、大体三百年前なの。だから、すでにいくつも説が出来ちゃってるんだけど。

……でも、今の日本が公に支持しているのは、“地球侵略説”よ」


「地球侵略説」


 大介の頭に、タコのような宇宙人が「地球ヲ侵略セヨ」と言っているイラストが浮かんだ。桃は、地球侵略説について説明してくれる。


 ――今から三百年前、宇宙上に亜空洞が開いた。そして、その亜空洞から現れた亜人により、米国の宇宙基地が襲撃を受けたのだ。


 襲撃時の宇宙基地の写真も残っていたそうだが、最早宇宙基地としての様相を残していない状態であったという。まるで巨大な爆弾でも撃ち込まれたかのように、木っ端みじんになっていたらしい。壊滅的な被害といってもよかった。


 そもそも、正体不明の存在からの襲撃ということで、米国の反撃は非常に遅れていた。その時点で、人類は亜人の情報を持っていなかった為、ほとんど有効な手段を講じることが出来なかったのである。


 それでも、三日すれば亜空洞は閉じる。どうにか亜人が地球に襲撃を仕掛ける前に危機を退け、米国は事態を収束させた。


 しかし、その戦いがあった時代に存在した人間の五世代目以降に、亜人細胞の発症が見られるようになったという。

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