↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
PR
54/137

謎の美少女、蛙子?

 協力を申し出てくれた相手に対して少し悪いと思いながらも、大介はその本音をとめられなかった。


 しかし、怒るかと思われた蛙は、特にそういった様子は見せない。むしろ、「なんだ、そんなことか」とパッと顔を明るくする。


「それなら出来るぜ」


「え」


「俺、自分の見た目とか好きに変えられるんだよ。まあ、どうせ誰にも見えねえし、要らねえ力だなあと思ってたんだけどさ。お前がいるなら話は別だ」


 蛙が不意に、両手を大介の前に出した。パチン、と合わせる。咄嗟に大介がまばたきをしたその次の瞬間、蛙の姿は犬へと変わっていた。


 白くてふさふさした毛並みに、丸っこい小さな体。ソファの上に四つ足で立ち、つぶらな瞳でこちらを見上げるその犬の名前は、ポメラニアンといった。大介が、犬の中でもっとも可愛いと思っている犬種だ。


「すごい! かわいい!」


 満面の笑みを浮かべた大介に、蛙が強気に鼻を鳴らす。


「どうだ! すげえだろ!」


「人語で喋らないで。テンションが下がる」


「我が儘言うな、意思疎通出来ねえだろうが!」


 蛙がぎゃんぎゃんと喚く。せっかく可愛らしい姿なのに台なしだ、と内心不満に思う大介に、蛙は相変わらずの人語で続けた。


「まあ見てろって。こんなものにもなれるから」


 言うやいなや、ポメラニアン――蛙が、大介の胸にピョンと飛び掛かってきた。人語を喋っても見た目はポメラニアンだ。こちらに来てくれたことが嬉しくて、大介は瞳を輝かせながら抱き留める。


 ――と。むにゅ、と柔らかい感触がした。鼻先を甘い香りが掠める。


「うわ」


 現状に気付いた大介は、情けない声をあげた。大介の腕の中には、顔立ちのよく整った少女がいたのである。


 目のぱっちりとした、可愛らしい少女だ。腰までもある、ゆるく波打つ髪の色は、彼が男だった時と同じ緑色だ。しかし、それすらも何故か似合っている。


 大介と同じ管理局の支給服が包む彼女の体は、スタイル抜群だった。長い腕はするりと大介の首に絡み、豊かな胸が大介の薄い胸板に押し当てられる。太ももが、大介の股ぐらへ滑りこんできた。


 綺麗な二重の乗った瞳を猫のように細めた少女は、艶めいた唇を微笑ませる。


「……な? こういうのも出来るんだぜ?」


 可憐な容姿に似合わない口調だが、大介の頭はそれどころではなかった。つま先から一気に熱があがってきて、顔面に集中する。


 女子とほとんど喋った経験のない大介には、幸福を通り越してもはや死にそうだった。心臓が、瓶の中に詰められ激しくシェイクでもされているかのように、ばくばく言っている。


「ど、どいてください」


 息も絶え絶えに訴えると、蛙はにまにまと笑った。


「ンだよ、ちょっとサービスしただけだろ」


「そんなの要らない。死ぬ。やめて。どいて」


「おいおい、そんなんでいざという時大丈夫かよ?」


「うるさい。蛙さんだって元は絶対童貞のくせに」


「し、仕方ねえだろ! 俺は誰にも見えねえんだから!」


「仕方なくない。同じ童貞なんだから、気を遣って」


「だから気を遣ってサービスしてやってんじゃねえか」


 蛙の小さな手が、大介の太股を撫でた。ひい、と大介は棒読みな悲鳴をあげてじたばたともがく。「暴れるなって」と蛙が笑った。


「なあ、せっかくだからもうちょっと色々してやるよ」


「色々って」


「色々は色々だよ。何がいい? どうせ俺には具体的な肉体はねえし……いい夢見させてやるから」


 薄い唇の隙間からあふれた吐息が、大介の首筋を撫でた。初めての感覚に、鳥肌が立つ。


「なあ、何がいいんだよ?」


 蛙が甘く誘った。――大介は、何とか声を搾り出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。