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「こういうの、人間には無理だろ? まあ、もしかしたら対亜人兵器の奴なら出来るかもしれねえけど……でも、普通は無理じゃねえか?」
そういえば、と大介は思い返す。鯨が以前亜人と戦っていた際、彼の体は妙な変化を起こしていた。右腕が、澄んだ水になっていたのだ。
そういった現象のことを思えば、確かに対亜人兵器なら今の蛙のような状態になれるかもしれない。しかし、普通の人間には間違いなく不可能だ。
「うん。普通は無理」
「だろ。これで、信憑性皆無ってわけじゃなくなったはずだ」
「なくなった」
まだ断言は出来ないが、少なくともただの人間ではないことは間違いないだろう。大介は納得する。
「じゃあつまり蛙さんは、俺が蛙さんを見ることが出来るようになったっていうのが解ったから、部屋で待ってたということ」
「そうそう」
「それなら、昨日の時点で言ってくれればよかったのに。俺のこと見てたんじゃないの」
「馬鹿、お前昨日は亜人発症してそんなに経ってなかっただろ。そんな時に、いきなり現れていけるかよ。ますます混乱するだけじゃねえか。俺だって、さすがにそのくらいの空気は読めるんだ」
お前と違ってな! と意地悪く言われたので、大介は蛙の頭を叩こうとしたが、やっぱりすりぬけてしまった。けらけら笑う蛙に、大介は憤慨する。
「蛙さん、何しに来たの。俺を馬鹿にしに来たの」
「怒るなよ。今のは、俺が何者なのか説明しただけだから。いわば前置きだよ、前置き」
「じゃあ早く本題に入って」
「解った解った」
蛙はどこか軽薄な雰囲気で笑うと、「まあ最初に言った通りなんだけどな」と腕組みをする。
「最初って」
「だから、お前の味方だっつっただろ。これからお前が何か困った時に、協力してやろうかと思ってな」
ま、相談役ってやつだ。なんて言って、蛙は誇らしげに笑う。大介は、「へえ」と声をあげて考えた。
蛙は不審だが、しかしもしも本気で言っているとしたら、なかなか有り難い話かもしれない。蛙の力は有用だ。今後大介が亜人と戦うにおいても、見えない味方というのは役に立つだろう。
亜人には対亜人兵器の攻撃しか通用しないから、直接的なダメージは与えられないにしろ――たとえば相手を拘束したりだとか、そういうことはしてくれるかもしれない。
「それはすごく助かる」
「だろ?」
「うん。俺は別に、格闘技とかそういうのもしたことないから。亜人と戦わなきゃいけなくなった時、蛙さんがいれば――」
「あ、そういうのは無理だぜ」
「え」
きっぱり断言された大介は、無表情で目を丸くした。
「俺が触れるのって、お前だけだからな」
「どういう意味」
「さっき言っただろ? 俺のことを見ることが出来るのは、お前だけだって。俺は、俺の存在をちゃんと認識してる奴相手にしか触れねえんだよ。つまり、さっきみたいに握手したりっつうのも、お前相手じゃなきゃ無理ってこと。
亜人にしても一緒だ。俺は亜人にも見えねえから、俺の方から亜人には触れない。
ちなみに、亜人とか人間とかじゃなくて、ただの石ころとかでもそうだ。無機物に命はねえからな。こっちを認識するもしないもねえから、俺は無機物にも触れない」
「……じゃあ、蛙さんは何が出来るの」
「だからさっき言ったじゃねえか」
蛙は腰に手を当て、胸を張った。
「相談役だよ!」
「…………それって」
マスコットと何が違うの。
言った大介に、蛙は「マスコットじゃねえ」と憤る。
しかし、落胆したのは大介の方だ。もっと具体的な協力をしてくれるのかと思ったら、ただ喋れるだけだなんて。まあ、協力を申し出てくれた気持ちはありがたいと思うけれど。
「どうせマスコットなら、可愛くて天使な子犬とか、せめて可愛い女の子が良かった」




