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少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
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ずばりと指摘されて、大介はぐうと唸った。なんとかごまかしたつもりだったが、手遅れだったようだ。

 しかし、蛇は大介よりもよほど落ち着いた態度で、「別にいいよ」と肩を竦めた。


「子供なのは本当だしね」


 そのあっさりした素振りになんだか敗北感を抱きつつも、大介は尋ねてみた。


「蛇さんは実際いくつなんですか」


「いくつに見える?」


「……厄介な聞き方をされた」


 あはは、と蛇は楽しそうに笑うと、すぐに「内緒だよ」と答えた。


「内緒ですか」


「うん、内緒」


「……じゃあ、ええと。もし不機嫌になったら申し訳ないんですけど、蛇さんって女の子ですか。それとも男の子ですか。自称は俺だけど、見た目はどっちにも見えます」


「君はどっちだと思う?」


「……これも内緒ですか」


「うん」


「じゃあ、蛇さんの本名は」


「何だと思う?」


「鯨さん、俺蛇さんに遊ばれてる」


 何ひとつ答えてくれない蛇を前、大介はついに鯨に訴えた。鯨は広い肩を竦めて、「蛇さんはいつもこうなんだよ」と苦笑する。


「何も教えてくれねえんだ」


「え。じゃあ、鯨さんも知らないの」


「ああ」


「蛇さんの名前も」


「名前もだ。うちで動物のあだ名が流行りだしてからは、ずっと蛇で通してる。流石に小鳥さんは知ってると思うけど、そっちに聞いても教えてもらえない。……蛇さんが口封じしてるからな。……ですよね?」


 蛇は鈴を転がすような柔らかな笑い声をたてて頷いた。そして「ごめんね」と軽い謝罪を口にする。


「別に、君だけに意地悪してるんじゃないんだよ。ただ、本当に誰にも教えてないんだ」


「何でですか」


「そもそも、俺からしたらホイホイ情報を与える方が“なんでですか”って感じだよ。俺達、まだ会って十五分も経ってないのに。なんで教えないといけないの?」


「でも、鯨さん達にも教えてないんですよね」


「まあ、そうだけどねえ……。ううん、じゃあちょっと正直に言おうか。

……あんまり知られたくないんだよ。対亜人兵器の君達にじゃなくて、ここの研究員にね」


「研究員。あの、会うたびにバッタみたいにペコペコしてくる人のこと」


 あんまりな言い方に、鯨が「こら」とたしなめる。何か悪いことを言ったのか、と大介はきょとんとした。蛇は愉快そうに、「そうそう」と頷いた。


「なんていうか、あの人達にとって俺は嫌な存在というか……プライドをバリバリに傷付けるらしくてね」


「プライド」


「そう。二、三十代――もっとすれば五十代くらいの年齢の研究員も、ここには大勢いる。その中で、トップに立ってるのが俺なんだ。


そりゃ、悔しくもなるでしょ? 自分の年齢の半分以下の子供が、偉そうに一番上等な肩書を持ってるんだから。


まあ、俺の機嫌を損ねたら研究自体が滞るから、何かされたりとかはないし、皆媚びは売ってくれるけど。でも、陰口を叩かれたりもするんだよ。

ポジション的には仲間同士なんだけど、気持ちはまったく伴ってないってことだね」


「複雑な大人の関係というやつですか」


「ま、そんな感じかな。

で、そういう状況だから、俺の年齢が周りに知れると、ますます反感を買うかもしれないんだ」


「反感」


「子供の俺を前にして、“でも意外とそれなりに歳をとってるのかも”なんて考えて、無理矢理プライドを保ってる人間もいるんだよ。それが粉々になって、変なことされちゃ困るもん」


「つまり、信用出来ないから教えないってことですか」


「平たく言えばそうだね」


 きっぱりと言い捨てた蛇は、「でも支障はないよ」なんてけろりと笑う。

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