↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
PR
39/137

「とりあえず頑張ります」


 大介が気の抜けた返事をすると、鯨は小さく笑った。一方、蠍は苛立ったように舌打ちをする。馬鹿にされたと思ったのだろう。乱暴に席を立つと、低く言い放った。


「せいぜい死なねえように努力しろ。……もっとも、テメエごときが何をしたところで、足手まといにしかならねえだろうがな」


 大介が何か答える前に、蠍は足音荒く歩くと、扉を乱暴に開いて部屋を出て行った。無表情で目だけをわずかに丸くした大介は、「俺の歓迎会なのに出て行った」と呟く。


「なんで来たんだろ」


 無自覚に容赦のない大介の言葉に、鬼と桃が思い切り吹き出す。桜は、「多分、大介君がどんな子なのかは一応気にしてたんだよ」と言った。


「本当に、久しぶりの対亜人兵器だから」


「そうなんですか」


「ああ。……でも、アイツってあんな感じだから、次会った時もうるさいかもな」


 鯨が困ったように眉を下げて唸る。すると鬼は喉で笑って、「ま、仕方ないだろ」と答えた。


「局長殿だって、アイツが中学生と仲良く出来るなんて期待してねえさ。アイツ自身が小学生みたいな奴なんだからな。だから、お前は気にしなくていい。よっぽど酷けりゃ対応するから、その時は俺らに言え」


「解りました」


 大介はこくりと頷いた。鬼は「よし」と笑って、「なら食え」とピザを紙皿の上に乗せてくる。


「お前みたいな年齢のガキは、戦うより食うのが仕事だ」


 大介としてはそろそろ腹いっぱいになるのを感じていたが、仕事だと言われれば仕方がない。口を開いて、少し冷めてきたピザをもぐもぐと頬張る。「結構食うなお前」と鬼は嬉しそうに言った。桜は、そんな大介をほほえましげに見つめていたが、やがて小さく呟いた。


「……でも、そうよね」


 桃が不思議そうに桜を見た。


「何が?」


「いや……本当なら、“食べるのが仕事”の年齢なのよね、と思って。でも、そんな子が明日から特訓したりするんだから――」


 そこで彼女は言葉を切った。大介は、口元についたトマトソースを御手拭きで拭いながら桜を見遣る。彼女が黙り込んだ言葉のその先が、何と続く予定だったのかは解らない。――が、それはきっと、彼女のやるせない表情に合ったものなのだろう。

 鯨も桃も眉を八の字にしたが、鬼だけはあっけらかんとして「仕方ねえさ」と言う。


「時代だよ、時代。亜人が大量に出て来てるんだから、人材を選んでる場合じゃない。むしろ、日本はたった五人で成りたってたんだからほとんど奇跡だ。

隣国に眼を向けてみろよ。国民が多い分、亜人予備軍も多い。壊滅的な被害を受けてるって話だぜ?」


「それはそうですけど……でも、桜の言ってることも解りますよ、俺は」


 鯨が口を挟んだ。


「拒否権のひとつもなく、強引じゃないですか。それに……やっぱり、大介はまだ中学生なんだから、せめてもう少し猶予をあげてほしかったです」


「猶予なんか与えて逃げられたらどうすんだ。それに、拒否権なんてとんでもない話だろ。じゃあ聞くが、お前にもし拒否権があったらどうした?」


 鯨は口をつぐむ。鬼は「仕方ねえんだよ」とあっさり言った。


「俺達に出来るのは、ただ、迅速に亜人を片付けることだけだ」


 成る程、と思ったので、大介は「頑張ります」と言った。面食らったように大介を見た鯨に、鬼は「ほら見ろ」と愉快そうに笑った。


「コイツも、このメンタルだ。きっと大丈夫さ。なあ?」


「大丈夫かは知らないですけど、頑張ります」


「お前さっきからそれしか言ってねえぞ。つか、そこは大丈夫って言え」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。