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「とりあえず頑張ります」
大介が気の抜けた返事をすると、鯨は小さく笑った。一方、蠍は苛立ったように舌打ちをする。馬鹿にされたと思ったのだろう。乱暴に席を立つと、低く言い放った。
「せいぜい死なねえように努力しろ。……もっとも、テメエごときが何をしたところで、足手まといにしかならねえだろうがな」
大介が何か答える前に、蠍は足音荒く歩くと、扉を乱暴に開いて部屋を出て行った。無表情で目だけをわずかに丸くした大介は、「俺の歓迎会なのに出て行った」と呟く。
「なんで来たんだろ」
無自覚に容赦のない大介の言葉に、鬼と桃が思い切り吹き出す。桜は、「多分、大介君がどんな子なのかは一応気にしてたんだよ」と言った。
「本当に、久しぶりの対亜人兵器だから」
「そうなんですか」
「ああ。……でも、アイツってあんな感じだから、次会った時もうるさいかもな」
鯨が困ったように眉を下げて唸る。すると鬼は喉で笑って、「ま、仕方ないだろ」と答えた。
「局長殿だって、アイツが中学生と仲良く出来るなんて期待してねえさ。アイツ自身が小学生みたいな奴なんだからな。だから、お前は気にしなくていい。よっぽど酷けりゃ対応するから、その時は俺らに言え」
「解りました」
大介はこくりと頷いた。鬼は「よし」と笑って、「なら食え」とピザを紙皿の上に乗せてくる。
「お前みたいな年齢のガキは、戦うより食うのが仕事だ」
大介としてはそろそろ腹いっぱいになるのを感じていたが、仕事だと言われれば仕方がない。口を開いて、少し冷めてきたピザをもぐもぐと頬張る。「結構食うなお前」と鬼は嬉しそうに言った。桜は、そんな大介をほほえましげに見つめていたが、やがて小さく呟いた。
「……でも、そうよね」
桃が不思議そうに桜を見た。
「何が?」
「いや……本当なら、“食べるのが仕事”の年齢なのよね、と思って。でも、そんな子が明日から特訓したりするんだから――」
そこで彼女は言葉を切った。大介は、口元についたトマトソースを御手拭きで拭いながら桜を見遣る。彼女が黙り込んだ言葉のその先が、何と続く予定だったのかは解らない。――が、それはきっと、彼女のやるせない表情に合ったものなのだろう。
鯨も桃も眉を八の字にしたが、鬼だけはあっけらかんとして「仕方ねえさ」と言う。
「時代だよ、時代。亜人が大量に出て来てるんだから、人材を選んでる場合じゃない。むしろ、日本はたった五人で成りたってたんだからほとんど奇跡だ。
隣国に眼を向けてみろよ。国民が多い分、亜人予備軍も多い。壊滅的な被害を受けてるって話だぜ?」
「それはそうですけど……でも、桜の言ってることも解りますよ、俺は」
鯨が口を挟んだ。
「拒否権のひとつもなく、強引じゃないですか。それに……やっぱり、大介はまだ中学生なんだから、せめてもう少し猶予をあげてほしかったです」
「猶予なんか与えて逃げられたらどうすんだ。それに、拒否権なんてとんでもない話だろ。じゃあ聞くが、お前にもし拒否権があったらどうした?」
鯨は口をつぐむ。鬼は「仕方ねえんだよ」とあっさり言った。
「俺達に出来るのは、ただ、迅速に亜人を片付けることだけだ」
成る程、と思ったので、大介は「頑張ります」と言った。面食らったように大介を見た鯨に、鬼は「ほら見ろ」と愉快そうに笑った。
「コイツも、このメンタルだ。きっと大丈夫さ。なあ?」
「大丈夫かは知らないですけど、頑張ります」
「お前さっきからそれしか言ってねえぞ。つか、そこは大丈夫って言え」




