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それぞれの反応に差異はあれど、結局彼らは面白がっているのである。なんとなく馬鹿にされた気がして、大介は「俺の味方は鯨さんしかいない」と鯨を見上げた。しかし、見れば鯨も若干笑っていた。大介と目が合うと、すぐにごまかすように咳ばらいをしたが、大介は無表情でガンとショックを受ける。
「皆に馬鹿にされた」
大介が思わず言うと、鯨と桜は慌てて「そんなことはない」と答えた。
「ただ、ちょっと珍しかったのよ。私達も何度か発症した人見たけど、大体もっとグロテスクっていうか……」
「だよなあ、見てて怖ェことの方がほとんどだし。だから、大介みたいな……なんていうか、マジでそんな乳歯みたいなの見ると、むしろほっとしたっていうか。勿論大介が抑え切ってくれるのを期待してはいたけど、戦う覚悟もしてたから」
一生懸命フォローをしてくれているが、人の頭を指差して「乳歯、乳歯」と笑う鬼がいる限り説得力はない。無表情で憤慨した大介は、「俺はもうふて腐れた」と宣言した。
「お姉ちゃんと一緒に家に帰る」
鯨達はますます慌てて、ちょっと待てと引き止めて来る。いまだにけらけらと笑う鬼も、しっかり大介の首根っこを掴んだ。
俺はハンガーじゃないとじたばたする大介のそばで、桃は「いいじゃん、乳歯」なんて言いながら、グロスで艶めいた唇を悪戯っぽく微笑ませる。蠍にいたっては、ついに喫煙を始めていた。先程まで緊張していた場の空気は、悪い意味でやわらかくなっていた。
「全員落ち着け」
小鳥が溜息混じりにストップをかける。
「とにかく、大介君は今から精密検査をする」
「うげえ。また検査」
ついにあからさまに嫌がった大介だが、小鳥は「体の一部が変わっているかもしれないからな」と言った。
「すぐに用意をさせるから、男子は全員大介君の検査に同行してくれ。突然亜人になる可能性も否定しきれない」
了解、と鯨と鬼が答える。蠍も、面倒そうに小鳥のいる別室に目をやったが、拒否するそぶりは見せなかった。
「連れてきてくれ」という小鳥の言葉に頷いた鯨が、「おいで」と大介を呼ぶ。大介は、「乳歯じゃない」とまだぶつくさ言いながら、それでもなんとなく小鳥には逆らいづらくて、致し方なくついていくのだった。
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またも検査室ツアーに繰り出すはめになった大介が、やっと姉の元に戻った頃には、すでに夜になっていた。昨日からずっと、この施設にいることになる。姉の職場には、国から「超自然現象に巻き込まれたため」という名目で休暇を出すようにという連絡がいっているはずだけれど、それにしたって、何日も仕事を休むのはよろしくないだろう。特に姉は、どうやら話を聞く限り、職場で頼りにされているようなのだ。
検査中、「お姉ちゃんの仕事大丈夫かな」と言うと、鬼には「だからお前、自分の状態を気にしろって」と呆れられたことを、大介は姉の隣に座りながら思い出していた。
「大介、大丈夫?」
今日の昼頃に初めて小鳥と会った部屋に通されてからは、ずっと大介の検査終了を一人で待っていたらしい姉は、しきりに大介を心配していた。
「大丈夫。どうせ乳歯だから」
大介は、散々からかわれていたことを自分でネタにした。悔しい気持ちが消えたわけではないが、自分からそう言うことで姉の心配が軽くなるなら、その方がよほど良かった。姉は大介の頭を覗き込んで、「……本当ね」とおかしそうに――それでいて少し困ったように笑った。
「本当に、何か埋まってるみたい」
姉の細い指が、大介の新たな耳をつつく。大介も、自分の手でそれを撫でてみた。ほんのかすか、指先で触れられる程度に、人とは違う毛の感触がある。




