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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第二章 視えない男の煩悶】

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第八話 ヤバいのが憑いてます


依頼者の元に着く。


パッと見でわかる。嫌味が多そうなジジィだ。


「ふん、こんな若造に何ができるって言うんだ。俺は父親を呼んだんだぞ」


クソ、親父め。厄介なジジィを俺に押し付けやがって……。


「申し訳ありません。父は多忙を極めておりまして。今回は私が……」


「まったく。ちゃんと祓えるのか? 俺はな、お前の爺さんの代から贔屓にしてるんだよ。それが、こんなぺーぺーの若造を寄越しやがって。倅だからってな、俺は容赦しないぞ。大体、お前さん、修行もしてないんだろ? グローバルだかグーグルだか知らねぇがな、留学なんかさせて。何を考えてんだ」


『グーッ』


最悪のタイミングで菅原の腹が鳴る。


「失礼しました」


「おいおい、姉ちゃんよ。人が話しているのに腹なんか鳴らして。まったく、最近の若者は我慢もできないのか。マナーがなってない。マナーが」


菅原をチラリと見ると、能面のような顔をしている。


いや、いつも能面みたいな顔をしているが、いつもよりさらに能面だ。嫌な予感がする。


「お言葉ですが、お腹が鳴るのは生理現象なので、マナーは関係ないと思います。我慢できるものでもありません」


「か、菅原! やめろ。も、申し訳ありません。ちょっと変わったマネージャーでして……」


「おい、なんだ。目上の人間に盾突くつもりか? 女の分際で。マネージャー? ふん、だとしたらどうしようもないな。何の能もない人間が偉そうに」


ヤバい、マジでヤバい。親父にチクられたらヤバい。また御影家の恥と言われる。


「申し訳ありません。こいつには、キツく言い聞かせておきます……」


「まぁ、いいだろう。俺もな、御影家のためを思って言ってるんだ。昔のよしみでな」


は!? 絶対、憂さ晴らしだろ。ぜっったいに。


菅原はまだ能面の顔で、爺さんを見ている。


「(おい、菅原。その顔やめろ。もう、ちゃっちゃと祓って帰るぞ)」


「(紫門さん、ヤバいのが憑いてます。コイツ)」


「(おい、コイツとか言うな。聞こえたらどうすんだ。え……ヤバいって、どんなの?)」


「(デカくて、怨念が強い)」


「(で、デカくて強い!? は、祓えんのか?)」


「(やるしかないでしょう)」


「(いや、そうだけど、無理すんなよ)」


目を閉じて息を吐く菅原。腹がグーッと音を立てる。


不安しかねぇ。でも、信じるしかない。俺は何も見えないし、祓えない。


「では、祓います……」


俺は恐る恐る、依頼者に近づく。


「おう、きちんとやれよ。きちんと」


うぜぇ。本気でうぜぇ。そんなんだから、デカくて強いやつに憑かれんだよ。


そんなことを思いながら手印を組む。祈るような気持ちで菅原を見る。


「破ァッ!」


そう叫んだ瞬間、菅原の顔が歪んだ。苦しそうな顔をしてしゃがみ込む。しばらくして顔を上げ、頷く。


「は、祓えました」


「何だ? 何にも変わった気がしない。本当にちゃんと祓ったのか?」


ブチギレそうな自分を抑え、必死に笑みを浮かべる。


「はい、ご安心ください」


菅原をチラリと見ると、まだ床にしゃがみ込んでいる。


そんなにヤバかったのか?


菅原に近づいて腕を掴むと、力なく立ち上がる。


「また、よろしくお願いします」


「ふん、次は父親の方にしてくれ」


菅原の腕を掴み、引き攣った笑顔のまま爺さんの家を出る。


「だ、大丈夫か!?」


「……はい、すみません」


「顔色悪!!! ど、どうすんだ。生霊のせいもあんのか? な、何か食えばいいのか?」


「に、肉……」


「肉? 肉……焼肉? 焼肉か!!! わかった!!! 焼肉、焼肉……」


スマホを取り出し、焼肉屋を調べる。


「し、紫門さん、あそこに……」


菅原が力なく指差す方向を見ると、焼肉屋の看板。


「ある!!! あった!!! 行くぞ! とにかく、あそこに行くぞ!!!」


菅原の腕を掴み、焼肉屋まで歩く。


「菅原!!! 死ぬな!!! 死ぬなぁ!!!」


「静かにしてください。みんなが見ています」


顔を上げると、マジで見られていた。でも、今はそれどころではない。


「イケメンだから許される。大丈夫だ」


「……」


「おい、菅原!!! 死ぬな!!! あと五メートルだ!!!」


「死にません。お願いですから、静かにしてください」


菅原を引きずるようにして焼肉屋に入る。席に着くと、机に覆いかぶさるように倒れ込む菅原を見て、慌てて肉を注文する。


「白米は!? 白米は食うのか!? 焼肉で白米を食う派なのか!?」


「……食べる派です……」


「サラダ……サラダは!? 野菜を先に食ったほうがいいぞ。血糖値が……いや、今は何でもいい。一応頼むか……すいません! とりあえず、これとこれとこれで。急ぎ目でお願いします」


「かしこまりました」


「待ってろ、菅原。今、焼いてやるから。待ってろよ!」


「……すみません」


やけに素直だ。いつもみたいに舌打ちもしてこない。


しばらくして、肉が運ばれてきたので焼き始める。


「菅原! 起きろ! 死ぬぞ! ほら! 食え!」


菅原の皿に、次々と肉を放り込む。


力なく食べ始める菅原。どんどん消えていく肉。追加で何度か注文する。


しばらくすると、菅原の顔色がマシになってきた。


「大丈夫か?」


「はい、ご心配をおかけしました」


二杯目の白米を食べながら、そう答える菅原。


「あの爺さんに憑いてたヤツ、そんなにヤバかったのか?」


「はい。割とヤバめでしたね」


「へぇ……怖ぇけど、そんなにヤバいなら、ちょっと見てみてぇな」


「……ちょっと待ってください」


そう言ってカバンを漁り、メモ帳とペンを取り出す菅原。メモ帳を開き、サラサラと何か描き始める。


「こんな感じです」


そう言って菅原が差し出したものを見て、驚く。めちゃくちゃ絵が上手い。


「菅原、お前、めちゃくちゃ絵上手いな!!!」


そう言って菅原を見ると、ポカンとした顔をしている。


「これが、さっきの爺さんに憑いてたヤツか? めちゃくちゃ怖ぇな! てか、お前、才能ある。才能あるわ。すごい。マジですごい」


まじまじと絵を眺める。マジで才能がある。つーか、こいつはこんなのが見えて、こんなのを祓ってんだ。


「これ欲しい。もらっていいか?」


そう言って顔を上げると、耳まで真っ赤にした菅原がいた。


え……赤……何で? まさか、照れてる? こいつ、照れてんのか? こいつが!?


「……いいですけど……」


マジで照れてるっぽい。何なんだ、こいつ。


財布を出して、その中に絵を入れる。


真っ赤な顔で白米を食べる菅原。


なんか、めちゃくちゃ気まずい……気まずかった。


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