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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第三章 視える女の重責】

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第三十一話 俺の命、預けました


結局、一睡もできなかった。


車に乗り、ハンドルを握る。


菅原が助手席に乗り込み、ナビに場所を打ち込む。


「すみません、よろしくお願いします」


「あ? あぁ。座席倒しておけよ。そして、寝ろ。せっかく俺が運転するんだから」


恩着せがましい言い方。嫌味なヤツだ。俺は。


菅原が座席を倒す。しばらくすると、寝息が聞こえてくる。


「やっぱり、疲れてんじゃねぇか」


コンビニの駐車場に入り、車を停める。


コンビニで、栄養剤とか、飲み物とか色々買う。車に戻り、ひざ掛けを菅原にかける。


エンジンをかけ、アクセルを踏む。


その日からしばらく、菅原とは必要最低限の会話しかしなかった。


まぁ、俺が運転中は菅原は寝てるし、仕方がない。


でも、菅原が寝ていると、なぜかホッとした。


あんなに働いて、身体でも壊されたら、たまったもんじゃない。


あいつがいないと、俺はただのポンコツだ。あいつがいないと、仕事にならない。ただ、それだけだ。そう、自分に言い聞かせた。


♢ ♢ ♢


次の休み。


菅原のバイト先のコンビニに向かう。


店長に借りたTシャツを返しにいこうと思った。


菅原には言わなかった。言ったら、“私が返します”って言うだろうし。


それに、店長に聞きたいことがあった。


コンビニに着くと、店長は店先をホウキで掃いていた。


「あの……」


「ん? あ! 君、こないだの、陰陽師の! 何だったかな、名前。えーっと、し、し、紫門くん!」


「はい。Tシャツを返しにきました」


「あぁ! ありがとう! それね、限定のやつ。もう手に入らないやつでね、気に入ってたんだ。返してくれてありがとう」


「あ、いえ。はい。あの……」


「なんだい?」


「ちょっと、色々聞きたいことがあって……」


「聞きたいこと? あー! そう、僕もね、君に聞きたいことがあるんだ。どうだい? この近くにね、珈琲が美味しい喫茶店があるんだ。そこで一杯、どうかな。まぁ、僕はサンドイッチも食べちゃうけど」


「コンビニはいいんすか?」


「大丈夫大丈夫! みんな、シゴデキだから。僕が何で掃き掃除してるかわかるかい? ほら、あそこ、レジにいるパートさん。あの人に邪魔だから外に出てろって言われちゃったんだ。ふふ、ふふふ」


「なるほど……」


喫茶店に移動する。


店長は珈琲とサンドイッチ、俺はアイスコーヒーを頼んだ。


「あ、僕はね、こういう者です」


そう言って、名刺を差し出す店長。


「あ、俺今名刺持ってなくて」


「大丈夫、大丈夫! ひかりくんから聞いてるから、君のことは知ってるよ」


ひかりくん。まぁ、ひかりちゃんよりはマシか。


店長がくれた名刺を見る。


「オーナー?」


「そう、オーナー兼店長。ここ以外にも何店舗かやってるんだ」


「なるほど……」


お前もシゴデキじゃねえか。


「それで、あの、失礼な質問だったら申し訳ないんだけどね、紫門くん。君はひかりくんの“彼氏”なのかね?」


「違います。仕事上のパートナー? みたいな。そんな感じです」


「そうかぁ。そうだよねぇ」


「あの、菅原はいつからここで?」


「四月から働いているよ。就職してすぐだったかな」


「そうなんだ……あ、もしかして、菅原の誕生日にスタバのカードあげたのって」


「あー、僕、僕。誕生日にね、渡したんだ。『若い女の子、プレゼント』で検索したら出てきたんだ。あんまり変なのあげて、使わないのもアレだからね」


あー、これまでの色々が繋がった。


「ひかりくんが面接に来た日のこと、今でも覚えているよ。本当は断ろうと思ったんだ。ひかりくん、彼女、あんまり接客が得意じゃなさそうに見えて」


「そうっすね。向いてない」


「そしたらさ、僕の腰に霊が憑いているって言うんだ。僕ね、肝試しとか大好きで、しょっちゅうそういうとこに行っているんだ。だから、もうびっくりして。そしたら、ひかりくんが祓ってくれてね。またまたびっくり。慢性的な腰の痛みがなくなっちゃったんだよ。いやぁ、もうびっくりしちゃって。しかも、陰陽師のマネージャーをやってるなんて聞いちゃったら、オカルト好きの血が騒いじゃってね」


「なるほど……」


「ひかりくんから、何も聞いてないのかい?」


「はい。何も。何も聞いてません」


「そうかぁ。僕が言っていい話か、わからないけど。いや、うーん、怒られちゃうかなぁ」


店長が菅原の色々を知ってるんだとしたら、なんかめちゃくちゃ腹が立つ。なんで、こいつに言えて、俺には言えないんだよ。


「うーん、あのね、僕はひかりくんにアドバイスを少ししているんだ」


「アドバイス?」


「そう、例えば、まぁ、なんだろう。税金のこととか。土地と建物の取得とか。そういうこと」


「へ、へぇ……」


意味がわからない。だからなんだよ。


店長が俺をジッと見る。


あぁ、どうせ俺はポンコツだよ。そういう目で見んなよ。


「紫門くん、君は何か得意なこととかあるかい?」


「得意なこと? あー、えー、うーん。まぁ、英語? 留学してたんで。高校から大学まで」


日常会話程度しか話せないことは言わなかった。俺にもプライドがある。


「英語! それはいい! その力はね、ひかりくんの助けになると思うよ!」


「俺の英語が、あいつを救う?」


「いや、救うとは言ってないよ。助けになるって言ったんだ」


「すみません、マジで言ってる意味がさっぱりわからなくて。もう少し、ヒントとか、もらえません?」


「ヒント? そもそも君、なんでそんなにひかりくんのことを知りたがってる?」


「は? あ、いや、ほら、仕事のパートナーなんで。あいつがいないと、困るし」


「なるほどねぇ。紫門くん、君、ひかりくんのことを救いたいのかい?」


「え? あー、いや、その、えーっと」


サンドイッチが運ばれてくる。


店長がそれを豪快に齧る。


「美味い! あ、一個食べる?」


「あ、大丈夫っす……」


「紫門くん、ひかりくんを救いたいなら、ひかりくんに聞くか、調べるしかない。僕が話したら、彼女を裏切ることになる。僕はね、誰のことも裏切りたくないんだ」


「じゃあ、俺の秘密を話したら……もう少しヒントをくれませんか?」


「君、僕の話を聞いていたかい? でも、いいね。そういうの。ヤバい話かな」


「とんでもなく。もし、誰かに言ったら、俺は終わる」


「おいおい、そんなのは重すぎるよ。でも、気になっちゃうなぁ」


もう言うしかない。俺と菅原の秘密を。こいつなら信用できる。だって、菅原が信用している人間だ。


「……俺には、何の力もない。見えないし、祓えない。祓ってるのは、菅原で」


「し、紫門くん、き、君はとんでもないことを、僕に教えてしまった」


「はい。俺の命、預けました」


「重い、重すぎる! That sounds pretty heavy.」


「Weight has nothing to do with it.」


「おー! わかってるね、キミ!」


「バック・トゥ・ザ・フューチャーっすよね? 好きなんで」


店長は嬉しそうに「フォッフォッフォッ」と腹を揺らして笑った。


サンタクロースかよ。


誰にも言ったことがない秘密を打ち明けた。それなのに、なぜか心は晴れやかだった。


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